
シード期の調達額はどう決める?次のマイルストーンから逆算する方法
アプリ開発に取り組む30代の起業家の方から、資金調達についてこんなご相談をいただくことがあります。
「初めて投資家から資金を集めようとしています。シード期ではいくら集めるのが普通なのか、多すぎても少なすぎてもよくない気がして決められません。調達額はどう決めればいいのでしょうか?」
回答者
三浦高
創業支援一筋で日本政策金融公庫について誰よりも詳しい中小企業診断士
三浦と申します。資金調達の額を決めるご相談をいただくとき、「シード期はだいたいいくら集めるものですか」という聞き方をされることがよくあります。ただ、この聞き方のままでは答えを決めることができません。相場から逆算するのではなく、ご自身の事業がこれから迎える次の節目、つまりマイルストーンまでにどれだけの期間と費用がかかるかを先に見積もり、そこから必要な調達額を導く方が、投資家にも根拠を持って説明できる金額になります。
まず考えていただきたいのは、次に目指す節目が何かという点です。アプリであれば、機能や使い勝手の検証が一通り終わる時点かもしれませんし、ある程度の利用者数に届く時点かもしれません。節目の内容は事業によって異なりますが、ここをあいまいにしたまま額だけを決めようとすると、根拠のない数字になってしまいます。節目を一つ定めたら、そこに到達するまでに必要な期間を月単位で見積もります。
次に、その期間にかかる費用を洗い出します。ご自身とメンバーの人件費、開発や外部への発注にかかる費用、事務所や通信などの日々の諸経費を、月ごとの額として並べていきます。これらを合計し、節目までの期間を掛け合わせると、節目に到達するまでに必要な資金のおおよその額が見えてきます。さらに、見積もりが想定より膨らんだ場合や、節目への到達が予定より遅れた場合に備えて、一定の余裕を加えておくと安心です。この合計額が、調達額を考えるうえでの土台になります。
ここで、両方向のリスクを見ておく必要があります。多めに集めれば当面の運営は安定しますが、集めた額に応じて会社の株式を渡す比率が決まるため、調達額が大きくなるほど、経営者であるご自身や既存の株主が持つ株式の割合は薄まりやすくなります。将来さらに調達を重ねる場面を考えると、早い段階で株式を手放す比率が大きくなりすぎることは、長い目で見て望ましくない場合があります。一方で、節目までの費用を小さく見積もりすぎて調達額を抑えると、次の調達の交渉を始める前に資金が尽きてしまう恐れがあります。資金が尽きる直前になって次の調達先を探す状況は、交渉の立場としても望ましいものではありません。
なお、節目までにかかる期間や費用は、見積もりの時点では幅を持たせて考えておくことをお勧めしています。順調に進んだ場合の期間と、想定より時間がかかった場合の期間を両方置いてみると、必要な資金の下限と上限がつかめます。調達額をこの範囲のどこに置くかは、ご自身の事業の進み方や、チームの体制がどこまで整っているかによって変わってきますので、一度決めた額を節目の手前で見直す機会を持っておくと、途中の判断がしやすくなります。
つまり、調達額は「少なすぎても困る、多すぎても困る」という両方の制約の間で、節目までの期間と費用から導いた額に、無理のない余裕を加えて決めていくものだと考えています。この見積もりの作業を一人で行うのは難しく感じられるかもしれませんが、資金計画や資本政策の組み立てをご一緒に整理することもできますので、数字の根拠づくりに迷われたときはお声がけください。
調達額は相場で決めるものではなく、次のマイルストーンまでの期間と費用、そして持株比率への影響を踏まえて逆算することで、根拠を持って説明できる金額になります。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


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中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
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- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
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