
フランチャイズの開業費用は本部の見積もりだけで足りる?追加費用の洗い出し手順
本部から開業費用の見積もりを受け取ると、その合計額を開業までの総額だと考えてしまいがちです。ところが、見積もりに書かれているのは本部が用意する範囲の費用であることが多く、開業までに自分で手配する費用は別に発生します。
この記事では、フランチャイズ(FC)への加盟を検討している会社員・開業予定者の方に向けて、見積もりに載らない費用の洗い出し方と、創業融資の申込前に確認しておく順番を整理します。制度の数字は執筆時点(2026年10月)の情報です。申込の前に日本政策金融公庫の公式情報もあわせて確認してください。
本部の見積もりに載るものと載らないものの境目
最初にやるのは、見積もりの項目を「誰に支払う費用か」で仕分けることです。加盟金や保証金、研修費のように本部に支払う費用は、見積もりに載っているのが一般的です。一方で、施工業者への支払いや、自分で手配する採用・販促・仕入などの費用は、見積もりの外に置かれることがあります。
「加盟金0円」をうたう本部でも、ロイヤリティが高めに設定されていたり、サポートが有料になっていたりして、総額が小さくなるとは限りません。見積もりの総額だけでなく、何が含まれていて何が含まれていないのかを読み取ることが先決です。
見積外になりやすい費目のチェック表
次の表は、見積もりに入っているかを確認したい費目と、融資の資金使途として考えるときの区分の目安です。業種や本部によって入る範囲は変わるため、実際に入っているかは本部の見積書で一つずつ確認してください。金額は載せていません。
| 費目 | 確認する先 | 資金使途の区分の目安 |
|---|---|---|
| 開業前の人件費・採用費 | 本部の見積書/自社で見積もり | 運転資金 |
| 研修中の交通費・宿泊費 | 本部に研修の場所と日数を確認 | 運転資金 |
| 開店告知・チラシ・Webなどの販促費 | 本部の販促支援の範囲を確認 | 運転資金 |
| 初期の仕入・在庫・消耗品・ユニフォーム | 本部指定の有無を確認 | 運転資金 |
| 契約から開店までの間に発生する家賃・光熱費 | 開店までの期間から自社で試算 | 運転資金 |
| 居抜き物件の追加改修、水道・電気などのインフラ工事 | 施工業者の見積もり | 設備資金 |
| 看板・外構・設計施工の管理費 | 施工業者の見積もり | 設備資金 |
| POS・予約などのシステム導入費と月額利用料 | 本部に初期費用と月額を確認 | 導入費は設備資金、月額は運転資金 |
| ロイヤリティ・システム利用料(開業後に毎月発生) | 本部の契約条件 | 運転資金 |
| 売上が安定するまでの運転資金 | 自社の収支計画 | 運転資金 |
| 保険料、会計などの外部費用 | 自社で手配先に見積もり | 運転資金 |
人件費・採用費、ロイヤリティ、開業後の無収入期間は、ここでは「見積もりの外に出やすい費目」として確認する程度にとどめてください。
業種によっては、開業にあたって許認可や届出が必要になり、それに伴う費用が別にかかる場合があります。要件や手続きの中身はこの記事では扱いません。必要になりそうな業種の場合は、管轄の窓口や専門家に早めに確認してください。
洗い出しの手順
手順1:本部見積もりの項目を仕分ける
見積もりの各項目を「本部に支払う費用」と「自分で手配する費用」に分け、一覧にします。分類できない項目は、そのまま本部への質問リストに入れます。
手順2:見積もりの前提条件を本部に確認する
金額よりも、その金額に何が含まれているかを確認します。追加費用が発生する条件、有料になるサポート、研修の場所や日数などを、できれば書面で受け取ってください。
手順3:チェック表の費目ごとに自社で見積もりを取る
見積もりの外にある費目は、業者の見積もりや相見積もりで金額の根拠を揃えます。概算の数字しか出せない費目は、その旨を自分のメモに残しておきます。
手順4:本部の見積もりと自社の見積もりを1枚にまとめて突き合わせる
両方の項目を1枚の表に並べ、抜けている費目と二重に入っている費目を消します。この表が、そのまま創業計画書の資金使途の元になります。
手順5:設備資金と運転資金に振り分ける
内外装や設備のように形が残る支出は設備資金、人件費や仕入のように事業を回すための支出は運転資金です。人件費は事業に必要な経費として運転資金の対象になります。資金使途は事業に必要な支出であることが前提で、個別の支出が当てはまるか迷う場合は、申込先や専門家に確認してください。
資金計画への織り込み方:上乗せ幅はどう決めるか
見積もりに載らない費用が心配になると、融資額を何割か多めにしておきたくなります。しかし、割合を先に決める方法では根拠を示せません。ここでは数字ではなく、費目の確度で決める手順を紹介します。
- 業者の見積もりがある費目は、その金額をそのまま計画に載せます。
- 本部の概算しかない費目は、見積もりを取り直して確度を上げます。
- 確認が取れていない費目は、先に確認する対象として別枠で管理します。
確認を尽くしても残る不確かさは、融資額を膨らませて載せるのではなく、自己資金側で別に確保する考え方もあります。公庫の創業融資には、自己資金の額や割合の要件は決まっていません。ただし自己資金の額は審査の重要な判断材料で、面談の時点で口座に確認できる形にしておく必要があります。
💬 監修者の元日本政策金融公庫の支店長の多胡から一言
「念のため多めに借りておけば安心」という考え方は、融資では勧められません。減額を避けるには、吹っかけずに必要なものだけを緻密に見積もることが基本です。減額の理由は、資金使途の妥当性と、ほかの調達手段で代えられないかという点の大きく2つです。
融資の申込前に整えておくこと
見積書と資金使途をそろえる
審査では、同じ業種での勤務経験、自己資金、事業計画の具体性、資金使途と調達額の整合、信用情報などをもとに判断されます。このうち見積もりの洗い出しが直接かかわるのは、資金使途と調達額の整合です。創業計画書に書く資金使途の金額と、手元の見積書の金額が一致しているか、洗い出した費目が計画書の数字に反映されているかを確認してください。
制度の枠を知っておく
主力制度は日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」で、融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)です。返済期間は設備資金で20年以内、運転資金で10年以内、据置期間はどちらも5年以内が上限の枠です。ただし、実際に適用される利率・返済期間・据置期間は、審査のうえ金融機関が決定するもので、申込者が選べるものではありません。希望は申込時に伝えられますが、決めるのは金融機関です。
基準利率は、2026年9月1日現在、創業期(税務申告を2期終えていない時期)に利用する場合で年3.75〜5.35%です。創業期の方が利用する場合は、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性がありますが、適用可否は制度や審査・条件により異なるため、必ず下がるとは考えず申込先で確認してください。
物件の取得を前提にする場合
土地や建物の取得は設備資金にあたる支出ですので、創業融資の対象になります。取得を前提に検討する場合は、物件を押さえる前に申込先へ相談してください。
スケジュールの目安
申込から融資実行までは、書類提出後おおむね3週間〜1か月が目安です。創業計画書、自己資金を確認できる資料、見積書などの準備に1か月、審査・実行に1か月で、合計2か月程度を見込んでおくと安全です。見積もりの洗い出しは、この準備期間の前半に終えておくと、計画書の数字を直す手戻りを減らせます。
💬 監修者の元日本政策金融公庫の支店長の多胡から一言
設備を計画に載せるときは、それが本当に必要なのかを見られます。業種に対して高級すぎる什器や過剰なスペックの設備は引っかかりやすく、中古品に置き換えられるものは、そちらでよいと判断されることがあります。見積外の工事や設備も、必要な理由を言える形にしてください。
よくある質問
Q. 見積もりに載らない費用は、融資の申込額に含めてよいですか。
事業に必要な支出であり、資金使途として説明できる費目であれば、含めて計画を組みます。そのためには、費目ごとに根拠となる見積もりや試算が必要です。根拠のない上乗せは、資金使途と調達額の整合が取れなくなります。
Q. 加盟金0円なら、見積外の費用は少なくなりますか。
加盟金が0円でも、ロイヤリティやサポート費用が別にかかる場合があります。加盟金だけで比べず、開業までと開業後の費用を同じ表に並べて比較してください。
Q. 見積外の費用が見つかるのは、申込の前と後のどちらがよいですか。
申込の前です。申込後に金額が大きく変わると、創業計画書の数字と見積書の数字がずれてしまいます。洗い出しは申込準備の最初の段階で終えてください。
まとめ:今日からできる4つの作業
- 本部の見積もりを「本部に支払う費用」と「自分で手配する費用」に仕分ける。
- チェック表の費目ごとに、本部への質問と自社の見積もり依頼を出す。
- 両方を1枚の表にまとめ、設備資金と運転資金に振り分ける。
- 創業計画書の資金使途と見積書の金額が一致しているか確認してから、申込先に相談する。
制度の数字や条件は変わることがあります。申込の前に、日本政策金融公庫の公式情報で最新の内容を確認してください。
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融資を受けるには何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























