
無人店舗の設備を補助金で揃えたい人へ 制度別の対象可否と開業前後の判断軸
無人販売所や小型の無人店舗を開業する場合、防犯カメラ、キャッシュレス決済、入退店管理と、最初にそろえる設備の費用がかさみます。「このあたりは補助金で賄えるのか」と調べても、レジや券売機の補助金は見つかる一方で、無人店舗の設備一式をどの制度に乗せればよいかを整理した記事はほとんどありません。
この記事では、無人店舗の設備を制度ごとに仕分け、開業前と開業直後で何が使えて何が使えないかをまとめます。先に結論を書くと、防犯カメラやタブレットのような汎用品を単体で買う計画は通りにくく、申請時点で未開業の人が使えない制度もあります。
先に結論 設備の種類で入口になる制度が分かれます
無人店舗の設備は、何を買うかによって検討する制度が変わります。使える補助金名は次の4つに絞って考えると整理しやすくなります。
- 防犯カメラ、入退店管理、自動精算機などを複数組み合わせて省力化する場合は、中小企業省力化投資補助金(一般型)が検討対象です。
- 登録された既製の省力化製品を選んで導入する場合は、中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)です。販売事業者と共同で申請します。
- キャッシュレス決済や在庫管理など、ソフトやクラウドが中心の場合は、デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)が入口です。
- 開業後に売り方を広げるための店舗備品や広報は、小規模事業者持続化補助金です。
中小企業省力化投資補助金は一般型とカタログ注文型で、買う物も申請の進め方も違います。
汎用品を単体で買う計画は、対象外になりえます
読者が最も誤りやすいのは、防犯カメラやタブレットのような汎用品を、そのまま補助金で買えると考えてしまう点です。
中小企業省力化投資補助金(一般型)で対象になるのは、オーダーメイド性のある設備です。汎用設備でも、複数を組み合わせて高い省力化効果を生む場合や、導入環境によって周辺機器の数や機能が変わる場合は対象になります。一方、汎用設備を単体で導入する事業は対象外です。単価50万円(税抜)以上の機械装置等を最低1つ入れる要件を満たしていても、それだけでは足りません。
デジタル化・AI導入補助金も同じ傾向です。PCやタブレットなどのハードを単体で購入する場合は対象外で、対象ソフトとセットになる類型で一部が対象になります。レジや券売機は、類型により上限が設けられています。
設備費の目安として、キヤノンMJの解説記事では、防犯・監視カメラ1台が10〜20万円程度、入退室管理システムが数十万〜数百万円とされています。カメラ1台だけでは単価50万円(税抜)に届かないため、カメラだけを買う計画は一般型の枠に乗りにくくなります。カメラ、決済、入退店管理をひとつの無人運営の仕組みとして組み、どの作業を減らすのかを計画に書く考え方が必要です。

💬 執筆者の三浦から一言
補助金には最低ラインがあり、小さな投資は枠に乗らないことがあります。防犯カメラ1台を補助金で買えるかと考えるより、何を組み合わせた計画にするかを先に決めるほうが、合う制度が見えてきます。補助金は買った後に合わせるものではなく、設備を決める段階で入口を選ぶものだと考えると、順番を間違えにくくなります。
3つの入口の違い 何を買い、誰と申請するか
中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)は、カタログに登録された省力化製品を導入することが前提です。中小企業等が販売事業者と共同で申請し、単独申請は原則できません。労働生産性を年平均3.0%以上向上させる計画が必要で、未達の場合は減額の対象になります。上限は大幅な賃上げ計画を盛り込む場合で1,500万円、基本は21人以上で1,000万円です。無人店舗向けの製品が登録されているかどうかは、販売事業者に直接たずねるのが確実です。
中小企業省力化投資補助金(一般型)は、自社の環境に合わせた設備やシステムを組む制度です。3〜5年の事業計画で労働生産性を年平均4.0%以上伸ばす計画が必要で、賃上げ目標が未達の場合は返還が発生しうる点に留意します。上限は従業員規模別の最大値で、第8回(2026年10月6日時点)では5人以下が750万円(特例で1,000万円)、6〜20人が1,500万円(同2,000万円)です。
デジタル化・AI導入補助金は、事務局に登録されたIT導入支援事業者の支援を受け、登録されたITツールを導入するのが前提です。通常枠の補助率は、申請額5万円以上150万円未満、150万円以上450万円以下のいずれも1/2以内です。3,000万円という上限は複数者連携枠のものなので、個人事業主の単独申請の目安にはなりません。
迷ったときは、次の3つの問いで分けます。
- 買いたい物は、登録された既製品で足りるか。足りるならカタログ注文型です。
- 設備を複数組み合わせて、自店の運営に合わせた構成にするか。そうなら一般型です。
- 中心になるのは、決済や管理のソフト・クラウドか。そうならデジタル化・AI導入補助金です。
開業前・開業直後でも申請できるか 時期別の整理
起業直後の人にとって分かれ目になるのは、制度の中身よりも「いつ申請するか」です。
- 開業準備中:小規模事業者持続化補助金は、申請時点で未開業の創業予定者が対象外と整理されています。開業届を出す前の段階では、この制度は使えません。
- 開業直後:小規模事業者持続化補助金は、商工会・商工会議所の支援を受けて進める制度で、事業支援計画書(様式4)の発行を受ける必要があります。第20回公募では、様式4の発行依頼の受付締切が2026年12月4日、申請受付締切が2026年12月15日17:00です。GビズIDプライムのアカウントも事前に取っておきます。
- 運営が回り出した後:中小企業省力化投資補助金の2制度は、既存事業の省力化や生産性向上が主題です。新しく事業を始める投資が主役の計画は、制度の趣旨とずれやすくなります。一般型では従業員0名が対象外になりやすい例に挙がっており、本人だけで運営する場合は当たる可能性があります。
もう一つの落とし穴が、先行発注です。小規模事業者持続化補助金では、交付決定日より前に行った発注・契約・支払は対象外です。開業準備のために機器を先に買ってしまうと、後からその費用を補助対象にはできません。ほかの制度でも先行発注の扱いは変わりうるため、発注前に各事務局の公募要領で確認します。
設備費の目安と、補助が出ても残る自己負担の資金計画
補助金は、対象経費の全額が戻る制度ではありません。小規模事業者持続化補助金(第20回)の補助率は2/3で、上限は基本50万円、インボイス特例と賃金引上げ特例を併せて最大250万円です。一般型の補助率は1/2(小規模事業者・再生事業者は2/3)です。いずれも、残りは自己負担になります。
資金計画は、補助金が出ない場合でも開業できる最小構成を先に決めて組みます。たとえば料金箱と防犯カメラから始め、売上が立った段階で決済機器や入退店管理を足していく段階導入です。そのうえで、自己負担分を何か月の売上で回収するかを、自分で目標として置きます。

💬 執筆者の三浦から一言
制度の上限額は従業員規模別の最大値で、もらえる額そのものではありません。補助額は対象経費に補助率を掛けて決まるので、資金計画は上限から組まず、手元にある見積書から逆算するほうが開業資金の不足が見つかります。
申請前に確認する順番
準備の順番は次のとおりです。
- 販売する商品と、どこまで無人にするかを決めます。
- 必要な設備を一覧にし、制度の入口ごとに仕分けます。
- 発注の前に、その制度の交付決定を受けられる時期かどうかを確認します。
- 相談先を決めます。小規模事業者持続化補助金は商工会・商工会議所、カタログ注文型は販売事業者、デジタル化・AI導入補助金はIT導入支援事業者です。
商品によっては、販売を始める前に許可や届出が必要になることがあります。これは開業日や設備の発注時期に響くため、設備を決める前の段階で管轄の窓口(保健所など)に問い合わせます。詳しくは専門家(行政書士など)や管轄の窓口に確認を。
よくある質問
防犯カメラだけを補助金で買えますか
カメラを単体で買う計画は、一般型では汎用設備の単体導入として対象外になりうる形です。デジタル化・AI導入補助金でも、ハード単体の購入は対象外です。決済や管理のソフトとセットにするか、複数設備を組み合わせた計画にします。
個人事業主が1人で運営していても中小企業省力化投資補助金は使えますか
一般型では従業員0名が対象外になりやすい例に挙がっています。カタログ注文型は販売事業者と共同で申請する形です。いずれも、自分の運営体制が要件に当たるかを、公募要領と事務局で確認します。
開業前に買った設備は、後から補助対象にできますか
小規模事業者持続化補助金では、交付決定日前の発注・契約・支払は対象外です。開業前に買った設備の費用は、後から補助対象にできないと考えて資金計画を組みます。
まとめ
無人店舗の設備は、設備ごとに入口を仕分けて考えます。汎用品は単体では対象外になりうるため、組み合わせた計画にします。開業準備中は小規模事業者持続化補助金が使えず、先行発注も後から補助対象にできません。補助金なしで開業できる最小構成から資金計画を組み、設備を増やす順番を決めておきます。
制度は改定されることがあるため、申請前に最新の公募要領や事務局(J-Grants・各事務局サイト)で必ず確認してください。本記事の出典は、中小企業省力化投資補助金(一般型)第8回(2026年10月6日時点)、中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)(2026年時点)、デジタル化・AI導入補助金2026(通常枠・2026年10月6日時点)、小規模事業者持続化補助金(第20回・公募要領第8版、2026年7月21日改版)です。設備費の目安は、キヤノンMJグループのビジネストレンド記事「無人店舗とは?」によります。
【無料相談のご案内】
弊社は、V-Spiritsグループ代表の中野裕哲を中心に、元補助金審査員の三浦をはじめとした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。



























