
創業計画書の経歴欄で、部長・課長の肩書きを伝わる形に整える方法
創業計画書を前にして、「部長だった」「課長を務めた」と書けば十分なのか、手が止まる方は少なくありません。長く同じ会社で働いてきた40〜50代ほど、肩書きが自分の経歴そのものに見えてしまいます。
この記事では、会社員時代の経歴や役職を事実で整理し、事業計画につなげる順番を、伝わりにくい書き方とその直し方の形で説明します。制度の内容は執筆時点の情報です。申込の前に、日本政策金融公庫など申込先の最新情報もあわせてご確認ください。
経歴欄で見られるのは、肩書きの大きさではなく同じ業種での勤務経験
日本政策金融公庫の創業計画書で、経験欄として問われるのは、同じ業種での勤務経験、勤務年数、役職です。「経営した経験」や「創業した実績」を書く欄ではありません。
審査では、同じ業種での勤務経験、自己資金、事業計画の具体性、資金使途と調達額の整合、信用情報などをもとに判断されます。創業前は決算などの実績で裏づけられないため、計画の具体性や自己資金とあわせて、同じ業種での勤務経験が見られる比重が上がります。役職はその経験の中身を示す材料のひとつです。肩書きだけで評価が決まるわけではないので、何をしていた人なのかが読み手に伝わるように書くことが目的になります。
書く前に、職歴を事実の表に棚卸しする
いきなり経歴欄を埋めるより、先に自分用の表を作るほうが、迷いが減ります。次の項目を、時系列で1行ずつ並べてください。
- 会社名と在籍期間
- 部署と、役職の変遷(いつ就任したか)
- 担当していた業務の中身
- 扱っていた商品やサービス、顧客の種類、取引先
- 独立予定の事業と同じ業種かどうか
記憶だけで作ると、異動や昇進の時期がずれやすくなります。辞令や社内の人事通知、職務経歴書などを手元に置いて確認してください。表ができたら、同じ業種で働いた期間に印を付けます。経歴欄に書く勤務年数は、この印を付けた期間の合計が土台になります。
伝わりにくい書き方と、直し方
以下の例はいずれも、書き方を説明するための架空の記入イメージです。実在する案件ではありません。
役職名だけを並べている
「営業部長、営業課長を歴任」とだけ書くと、会社の規模も業務の中身も読み手には分かりません。直し方は、役職に担当範囲と期間を添えることです。「法人向けの設備販売を担当する営業部門で、課長から部長へ昇進。新規開拓と既存顧客の管理を担当」のように、何を売り、誰に向けた仕事だったかまで書きます。
同じ業種で働いた期間が見えない
部署異動や出向が重なると、年数がばらばらに見えます。「在籍は長い」とだけ書くのではなく、独立予定の事業と同じ業種で働いた期間を通算して明記してください。先ほどの表で印を付けた期間が、そのまま使えます。別の業種を経験した期間は、同じ業種の期間とは分けて、短く記載する程度で足ります。
部下の管理や社内調整の話が中心になっている
管理職の方は、人を束ねた経験を前面に出しがちです。それ自体は事実として書いてかまいませんが、独立後に自分で手を動かす仕事は、売る、作る、仕入れる、見積もるといった実務です。経歴欄では、そうした実務をどの程度担ってきたかを主語にして書くと、事業の中身と結びつきます。
社内用語や社内の等級を前提にしている
「部長代理」「主幹」など、社内でしか通じない呼び名は、社外の読み手には位置づけが分かりません。直し方は、役割を平易な言葉に置き換えることです。「部門全体の売上目標の管理と、担当者の指導を担当」のように、していた仕事を言葉にします。
経歴欄と事業計画が別々の話になっている
経歴は立派でも、事業計画の数字の根拠に使われていなければ、読み手は結びつきを自分で探すことになります。次の章で、経歴と数字をつなげる順番を説明します。
経歴を、売上・原価・人件費の根拠につなげる
事業計画の具体性として見られるのは、売上・原価・人件費の根拠と返済原資です。ここに前職での経験を使います。前職でどんな顧客層を相手にしていたのか、どのくらいの価格帯を扱っていたのか、仕入先とはどんな関係だったのか。こうした事実を、売上の見積もりや原価の置き方の出どころとして示します。
取引先の欄を書くときも、経歴の表を見直してください。前職で関係のあった販売先や仕入先が、独立後にも見込まれる相手であれば、経歴と取引先の記載があります。また、必要な資金とその使い道、調達額の整合も、職歴の中で見てきた設備や人員の規模感と食い違わないかを確認しておくと安心です。
同じ業種の期間が短い、または別の業種が混ざっている場合
40〜50代では、転職を経て、いまの業種での勤務が思ったより短いという方もいます。これは全員に共通する前提ではなく、個別の事情です。
同じ業種での勤務経験が短い場合は、事業計画の具体性と自己資金の形成過程で、説明を厚くすることになります。売上・原価・人件費をどの根拠で見積もったのか、返済の原資をどこから確保するのかを、数字の出どころまで書き切ってください。自己資金は、どう貯めてきたかを説明できる状態にしておき、面談時点で口座に確認できる形にしておきます。
外部の力を借りること自体は問題ありません。ただし「専門家に相談しながら進めます」とだけ書いても、計画の裏づけにはなりません。誰にどの範囲の業務を任せ、その費用がいくらかかるのかまで書いて、はじめて計画の一部として説明できる形になります。
面談でも、書いた内容のまま同じ順番で説明できるようにする
経歴欄に書いた肩書き、年数、担当範囲は、面談で口頭でも確認される材料です。書類と話が食い違うと、準備不足の印象を与えかねません。計画書を見ずに、表の順番どおりに説明できるか、声に出して試してみてください。「なぜ今独立するのか」という動機の話は別の記事で扱っていますので、ここでは書いた内容との一致の確認にとどめます。
申込の前に手を動かす順番
- 職歴を事実の表に棚卸しし、同じ業種の期間に印を付ける
- 役職名に担当範囲と期間を添えて、経歴欄を書き直す
- 経歴と事業計画の数字(売上・原価・人件費、取引先)を突き合わせる
- 書いた内容を、口頭で同じ順番で説明できるか確かめる
書類がそろったところで、すぐに窓口へ持ち込むのは避けたいところです。先に第三者に目を通してもらうと、書き足りない点に気づけます。

💬 監修者の元日本政策金融公庫の支店長の多胡から一言
申込書類がそろったからといって、すぐに窓口へ持ち込むのは避けてください。先に第三者に内容を見てもらうようお勧めしています。相談先としては、自治体の創業窓口、商工会議所、公庫のことをよく理解している税理士や診断士などがあります。相談が漠然としていると、「具体的になってから来てください」と返されやすい点にも注意してください。
よくある質問
Q. 否決された直後にすぐ再申込してもよいですか?
原因を潰さずに再申込しても、結果は変わりません。自己資金不足、事業計画の説得力不足、同じ業種での勤務経験の説明不足など、否決の理由を具体的に特定し、そこを改善したうえで再申込することが必要です。
経歴欄の整理は、書類を書く作業というより、自分の職歴を事実で読み返す作業です。まずは職歴の表を1枚作るところから始めてください。
【無料相談のご案内】
融資を受けるには何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























