
加盟前に確認したいロイヤリティの計画書への落とし込み方と見落としやすい継続費用
フランチャイズに加盟して開業する方から、「ロイヤリティは創業計画書のどこに書けばよいのか」というご相談をよくいただきます。加盟金や保証金のように開業時に一度だけ出ていくお金と違い、ロイヤリティは開店した翌月からずっと発生し続けるお金です。この性質の違いを取り違えたまま計画書を作ると、数字のつじつまが合わなくなり、面談で説明に詰まってしまいます。
この記事では、フランチャイズ加盟での開業を控え、ご自身で創業計画書を作っている方に向けて、ロイヤリティをどの欄にどう反映するのか、そして見落としやすい継続費用と誤解されやすい必要書類について整理します。金利などの数字は執筆時点のものですので、申請前に必ず最新の公式情報をご確認ください。
ロイヤリティは「開業資金」ではなく「毎月かかる経費」です
日本政策金融公庫の創業計画書には、大きく分けて「必要な資金と調達方法」を書く欄と、「事業の見通し」として創業当初と軌道に乗った後の売上・経費・利益を書く欄があります。加盟時に一度だけ支払う加盟金や保証金、研修費は前者、つまり開業に必要な資金の側で扱われます。一方、毎月発生するロイヤリティは後者の「事業の見通し」の経費に入ります。
ここを混同して、ロイヤリティを開業資金の一項目として書いてしまうと、月々の経費が実態より軽く見える計画書になります。そうすると利益が過大に見え、その利益をもとに返済計画を組んでいることになるため、面談で「この経費で本当に回りますか」と問われたときに答えられなくなります。まずは、一度だけの支出か、毎月続く支出かという軸で本部への支払いを仕分けするところから始めてください。
算定方式によって、書くべき数字の作り方が変わります
ロイヤリティの算定方式は本部によって異なり、主に次の3タイプに分かれます。どの方式かによって、事業の見通し欄の作り方が変わります。
- 売上歩合方式:月商に一定率を掛ける方式。売上が伸びるほど支払額も増えるため、経費を固定額ではなく売上に連動する形で置く必要があります
- 粗利分配方式:売上から売上原価を引いた粗利に一定率を掛ける方式。原価率の設定がそのままロイヤリティ額に跳ね返るため、原価の根拠を説明できるようにしておきます
- 定額方式:売上にかかわらず毎月一定額。売上が落ちた月ほど負担感が重くなるので、保守的な売上見込みでも赤字にならないかを確認しておきます
創業当初の売上見込みは、本部から示されるモデル収支より控えめに置くのが基本です。そのうえで、控えめな売上でもロイヤリティと固定費を払って返済が残るかどうかを確かめておくと、面談での説明に一貫性が出ます。
ロイヤリティ以外の「本部に払い続けるお金」を漏らさない
計画書の経費が実態とずれる原因として多いのが、ロイヤリティだけを書いて、それ以外の継続的な支払いを落としてしまうケースです。加盟契約書を読み返すと、ロイヤリティとは別建てで次のような費用が定められていることがあります。
- 広告分担金・販売促進費の負担金
- 本部システム・POSレジ・受発注システムの利用料
- 指定資材や食材を本部経由で仕入れる場合の物流費・手数料
- 店舗の看板・什器のメンテナンス分担金
これらは1件あたりは小さくても、合算すると月次の利益を押し下げます。契約書の費用条項を一覧に書き出し、ロイヤリティと合わせた「毎月本部に払う総額」を把握したうえで経費欄に反映してください。ここが押さえられていると、加盟条件をきちんと理解している開業者だという印象にもつながります。
よくある誤解:法定開示書面は融資の必要書類ではありません
フランチャイズの創業融資について調べていると、必要書類として「法定開示書面(重要事項説明書)」を挙げている情報を見かけることがあります。しかし法定開示書面は、フランチャイズ本部が加盟希望者に対して交付する書類であって、融資の申込みに必要な書類ではありません。融資側で中心になるのは、創業計画書、自己資金を確認できる資料、設備の見積書、本人確認書類などです。
とはいえ、法定開示書面や加盟契約書を読み込む作業そのものは無駄ではありません。ロイヤリティの算定根拠、契約期間、中途解約時の扱いといった条件は、計画書の数字の前提になります。融資の提出書類としてではなく、自分の計画の裏づけを取るための資料として活用してください。
ロイヤリティを織り込んでも返済が回るかを確認します
経費が固まったら、返済計画と突き合わせます。個人事業主や中小企業の創業時の代表的な選択肢は、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)で、資金使途ごとの返済期間は、設備資金が20年以内、運転資金が原則10年以内という設定が例として示されています。
2026年6月1日現在の基準利率は、創業期(税務申告を2期終えていない時期)に利用する場合で年3.45〜5.15%です。創業期の方が利用する場合は、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性がありますが、適用可否は利用する制度や審査・条件により異なるため、必ず下がると考えず申請先で確認してください。元金返済の据置期間は5年以内で設定でき、据置中は利息のみの支払いとなります。
据置期間を使えば開業直後のキャッシュフローには余裕が生まれますが、ロイヤリティは据置期間中も変わらず発生します。据置が明けて元金返済が始まった月の収支まで並べて、そこでも回るかどうかを確認しておくことをおすすめします。
よくある質問
Q. 本部が用意したモデル収支をそのまま計画書に写してもよいですか。
モデル収支は立地も経験も異なる標準例です。そのまま転記すると、なぜその売上になるのかを自分の言葉で説明できず、面談で答えに詰まりやすくなります。商圏や席数、営業時間といった自店の条件に置き換えたうえで、根拠を説明できる数字にしておきましょう。
Q. 加盟金や保証金は融資の対象になりますか。
開業に必要な一時金として「必要な資金」の側で扱うのが一般的ですが、どこまでが資金使途として認められるかは制度や案件により異なります。見積書や契約書で金額の根拠を示せるように準備したうえで、申請先や専門家にご確認ください。
Q. フランチャイズは本部の実績があるので、審査で有利になりますか。
審査で見られるのは、ブランドの実績ではなく申込者自身の状況です。事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されますので、本部の実績に頼らず、ご自身の経験や資金準備、計画の内容を整えておくことが大切です。
まとめ
ロイヤリティは開業資金ではなく毎月続く経費であり、創業計画書では「事業の見通し」の経費として扱うのが出発点です。そのうえで算定方式に合わせて数字を組み立て、広告分担金やシステム利用料といった本部への継続的な支払いも合算して、控えめな売上見込みでも返済が回るかを確かめてください。
V-Spiritsグループでは、これまでに712件(2026年6月時点)の創業融資を支援しており、そのうちフランチャイズ支援は85件(11.9%)を占めています。加盟契約の条件をどう計画書に落とし込むかは、業種や本部によって考え方が変わる部分です。数字の置き方や返済計画の組み立てで迷われた際は、お気軽にご相談ください。なお本記事の数字は執筆時点のものですので、申請時は必ず最新の公式情報をご確認ください。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























