
フランチャイズの開店前家賃(空家賃)を月数別に試算する方法
物件の契約をしてから店が開くまでの間も、家賃は毎月出ていきます。この期間の家賃を、この記事では空家賃と呼びます。売上がまだ立たない時期の支出なので、開業資金の計画に入れ忘れると、開店直前に手元資金が足りなくなります。
この記事は、会社員から独立してフランチャイズ店舗を出す予定で、物件の契約前後にいる方に向けて書いています。家賃を月数ごとに計算する方法、工期がずれたときの予備費の置き方、融資の実行時期との順番をまとめました。表の金額は家賃月額を仮に置いた計算例で、相場や統計ではありません。制度の数字は2026年10月時点の情報です。
空家賃とは:家賃が始まってから開店するまでの家賃
空家賃は、家賃の発生日から開店日までの間に支払う家賃のことです。この期間は内装工事や開店準備に使うため、店は営業しておらず売上もありません。それでも家賃は毎月かかります。
家賃がいつから発生するかは物件ごとに異なります。契約を結ぶ前に、発生日がいつなのかを書面で確かめてください。契約条項の細かい読み方は、この記事では扱いません。
空家賃の計算式:家賃月額 ×(予定の月数 + ずれの月数)
空家賃は、次の式で見積もれます。
空家賃 = 家賃月額 ×(家賃発生から開店予定までの月数 + 工期のずれの月数)
材料は3つです。
- 家賃月額:物件の募集条件や契約書で確認できる数字です。
- 予定の月数:家賃の発生日から開店予定日までの月数です。内装工事、本部が決める準備の工程、開店前の手続きの待ち時間などが入ります。
- ずれの月数:工事や準備が遅れて、開店が予定より後ろにずれた月数です。
予定の月数は、本部と施工会社に工程表と開店予定日を聞くと見積もれます。一方、ずれの月数は事前には分かりません。そこで、ずれを0〜3か月に振って並べて見ます。
計算例:家賃月額を仮置きして、ずれ0〜3か月の空家賃を見る
次の表は、予定の月数を3か月と仮置きし、家賃月額を30万円、50万円、80万円と仮置きして計算した例です。実際の家賃や相場ではありません。自分の物件の家賃月額と予定の月数に置き換えて使ってください。
| 開店のずれ | 家賃を払う月数 | 家賃月額30万円(仮置き) | 家賃月額50万円(仮置き) | 家賃月額80万円(仮置き) |
|---|---|---|---|---|
| 予定どおり(ずれ0か月) | 3か月 | 90万円 | 150万円 | 240万円 |
| 1か月ずれた場合 | 4か月 | 120万円 | 200万円 | 320万円 |
| 2か月ずれた場合 | 5か月 | 150万円 | 250万円 | 400万円 |
| 3か月ずれた場合 | 6か月 | 180万円 | 300万円 | 480万円 |
表の読み方は単純で、開店が1か月ずれるごとに、家賃月額1月分がそのまま増えます。家賃月額50万円なら、予定どおりなら150万円、3か月ずれれば300万円です。ずれの大きさによって、開店前に必要な手元資金が倍になることもあります。
家賃月額が高いほど、同じ1か月のずれでも増える額は大きくなります。表で家賃月額30万円の列と80万円の列を見比べると、3か月ずれたときの増え方は90万円と240万円で、2倍以上の差が出ます。開店予定日を後ろにずらす余裕がどれだけあるかは、家賃月額によって大きく変わります。
空家賃は、開店後の運転に回せるはずの資金を先に使ってしまう支出でもあります。開店前にいくら出ていくのかを数字で押さえておくと、開店後の資金繰りも見通しやすくなります。
工期がずれたときの追加負担と、予備費の置き方
工期のずれで増えるのは、表のとおり家賃月額×ずれの月数です。この記事で取り上げているのは家賃だけです。工事の追加費用など、ほかの支出は物件や工事の内容で変わるため、個別に見積もりを取って確かめてください。
予備費は、次の順番で置きます。
- 本部と施工会社に、工程表と開店予定日を聞きます。ずれやすい工程があるかどうかも、あわせて聞きます。
- 自分の計画で、ずれを何か月まで見られるかを決めます。何か月が適切かを示す統計は、この記事にはありません。自分の手元資金で、開店が遅れたときに何か月まで耐えられるかを基準にします。
- 家賃月額×その月数を、予備費として資金計画に入れます。
たとえば、家賃月額50万円(仮置き)で2か月のずれまで見込めるなら、予備費は100万円です。予備費は、使わなければ手元に残ります。足りなくなると、開店前に追加の資金を探すことになります。
融資の実行時期と、家賃が始まる日の順番
空家賃の計画で見落としやすいのが、家賃が始まる日と融資が実行される日の前後関係です。実行より先に家賃が始まると、その間の家賃は手元の資金から払うことになります。
日本政策金融公庫の創業融資の主力は「新規開業・スタートアップ支援資金」です。2026年10月時点で、融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)です。申込から実行までは、書類提出後おおむね3週間〜1か月が目安で、創業計画書、自己資金を確認できる資料、見積書などの準備を含めると、合計で約2か月を見ておくと安全です。利率や据置期間は、審査のうえ金融機関が決定するもので、申込者が選べるものではありません。
この日数を空家賃の計算に当てはめると、動く順番が決まります。物件の候補を絞ったら、物件を押さえる前に申込先へ相談します。そこで、家賃が始まる日と実行の見込みの日がどれだけ離れるかを見積もります。離れる期間があるなら、その分の家賃は自己資金などの手元資金でまかなう前提で、資金計画を組みます。
💬 執筆者の小峰から一言
金融機関の側から見ると、書類を整える1か月と、審査から実行までの1か月は別々の時間です。物件の契約日を決める前に、この2つを続けてカレンダーに並べてみると、家賃が始まる日と実行の見込みの日がどれだけ離れているかが目に見えます。離れているなら、その間の家賃を手元資金から出す計画にするかどうかを、先に決めておく順番になります。
創業計画書に空家賃と予備費を織り込むときの確認
審査では、同じ業種での勤務経験、自己資金、事業計画の具体性、資金使途と調達額の整合、信用情報などをもとに判断されます。このうち資金使途と調達額の整合は、必要な資金の内訳を説明できるかに関わります。空家賃を家賃月額と月数の計算で示し、予備費の月数も添えておくと、金額の出どころを説明しやすくなります。
資金使途は、事業に必要な支出であることが前提です。家賃や予備費を計画書のどの項目に入れるかは、申込先に確認しながら整えてください。
自分の計画で試算する手順
- 物件の資料で、家賃月額と家賃の発生日を確認します。
- 本部と施工会社に、開店予定日と工程表を聞き、予定の月数を出します。
- 上の式に入れて、ずれ0〜3か月の表を自分で作ります。
- ずれを何か月まで見込むかを決め、予備費の額を出します。
- 物件を押さえる前に申込先へ相談し、実行の見込みと家賃の発生日を並べます。
融資の金額や利率、期間は変わることがあります。申込の前に、日本政策金融公庫の公式案内で最新の内容を確認してください。この記事の制度の数字は、2026年10月時点の情報です。
【無料相談のご案内】
融資を受けるには何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























