
経営者なら知っておきたい!いまさら聞けない「プライスラダー戦略」ってなに?
起業家、経営者として日々、価格設定に頭を悩ませていませんか?
「安くすれば売れるけど利益が減る…」「高くすると売れないのでは…」そんなジレンマは、業種を問わず共通の悩みです。
実は、この価格の悩みに一つの解決策を与えてくれるのがプライスラダー戦略です。
1. プライスラダー戦略とは?
ズバリ言います。
プライスラダー戦略とは、価格を段階的に設定し、複数の選択肢をお客様に提示することで、購買単価や利益を最大化する戦略です。
ラダーは「はしご」という意味。つまり、価格の“はしご”を用意し、お客様が自分に合った段階を選べるようにするわけです。
例えば、
-
ベーシックプラン:月額5,000円
-
スタンダードプラン:月額10,000円
-
プレミアムプラン:月額20,000円
こうした複数段階の価格設定は、サブスク、コンサル、スクール、飲食店のコース料理など幅広く使われています。
2. なぜ経営者に必要なのか?
単一価格で勝負すると、お客様の選択肢は「買う」か「買わない」かの二択です。これでは、せっかく興味を持った見込み客を取りこぼすリスクが高まります。
一方、プライスラダーを用意すれば、選択肢が「どのプランを選ぶか」に変わり、購入率が上がります。さらに、上位プランを選ぶ顧客が一定数出るため、平均単価も上昇します。
これは心理学のアンカリング効果(高い価格を提示すると、それより安い価格が割安に感じられる)や選択肢効果(複数の選択肢があると購入に至りやすい)を利用した、極めて合理的な戦略です。
3. 基本の設計ステップ
私が実務で経営者に提案するときは、以下の流れで設計します。
① ベース価格の設定
最低限の価値提供ができ、利益が確保できる価格を決めます。これがベーシックプランになります。
② 上位プランを作る
ベースに付加価値を加えたプランを作ります。機能追加、サービス拡張、サポート強化などで価格を1.5〜3倍に設定するのが目安です。
③ 最上位プランを設定
「この価格なら誰も選ばないかも」という少し高めのプランを作ります。実際に選ばれなくても、下位プランを割安に見せる役割を果たします。
④ 各プランの差別化ポイントを明確に
「この金額の差は何なのか?」を一目で分かるように、比較表や図を活用しましょう。
4. よくある失敗パターン
プライスラダー戦略は強力ですが、やり方を間違えると逆効果です。
-
価格差が曖昧
プランの違いが分からず、安い方ばかり選ばれる。 -
最安プランが魅力的すぎる
お得すぎて上位プランが売れなくなる。 -
高額プランが現実離れ
提供できる価値以上の価格設定は信頼を損ないます。 - 段差がありすぎる
上位プランに至るまでの価格差がありすぎて、別々の商品のようになってしまう。→意味が無い
5. 中小企業での活用例
ある地方の飲食店では、ランチを「1,000円/1,500円/2,500円」の3段階で提供。導入前は平均単価が1,000円台前半でしたが、導入後は2,500円コースの注文が全体の15%を占め、平均単価が約20%アップしました。
また、研修サービスを提供する会社では、「オンラインのみ」「オンライン+対面1回」「年間サポート付き」の3段階に設定。結果、真ん中のプランが全体の6割を占め、利益率が大きく改善しました。
6. 経営者が導入する際のチェックポイント
-
自社の商品・サービスの価値を数値化
時間、成果、追加特典などで差を明確に。 -
顧客層を想定して段階を作る
低価格帯・中価格帯・高価格帯の3段階が基本。 -
比較表で視覚的に分かりやすく
表やアイコンを使い、プランの違いを一目で理解させる。 -
実際の購買データを分析して改善
販売割合が偏ったら、価格や内容を微調整する。
7. まとめ
プライスラダー戦略は、価格を単なる「金額」ではなく「選択肢」に変える経営ツールです。
正しく設計すれば、売上・利益・顧客満足度を同時に高められます。
経営者として覚えておきたいのは、「お客様は必ずしも最安を求めているわけではない」という事実です。多くの人は、自分にとって“ちょうどいい価値”を求めています。
その“ちょうどいい”を、段階的な価格設定で用意してあげること。それこそが、プライスラダー戦略の真髄です。
【無料相談のご案内】
起業の手続きって何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!
この記事を書いた人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP技能士。大正大学招聘教授(起業論、ゼミ等)
V-Spiritsグループ創業者。税理士法人V-Spiritsグループ代表。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「ベストセラー起業本」の著者。著書20冊、累計25万部超。経済産業省後援「DREAMGATE」で12年連続相談件数日本一。
【まるごと起業支援(R)・経営支援】
起業コンサル(事業計画+融資+補助金+会社設立支援)+起業後の総合サポート(経理 税務 事業計画書 融資 補助金 助成金 人事 給与計算 社会保険 法務 許認可 公庫連携 認定支援機関)など
【略歴】
経営者である父の元に生まれ、幼き頃より経営者になることを目標として過ごす。バブル崩壊の影響を受け経営が悪化。一家離散に近い貧困状況を経験し、「経営者の支援」をライフワークとしたいと決意。それに役立ちそうな各種資格を学生時代を中心に取得。同じく経営者であるメンターの伯父より、単に書類や手続を追求する専門家としてではなく、視野を広げ「ビジネス」の現場での経験を元に経営者の「経営そのもの」を支援できるような専門家を目指すようアドバイスを受け、社会人生活をスタート。大手、中小、ベンチャー企業、会計事務所等で営業、経理、財務、人事、総務、管理職、経営陣等、ビジネスの「現場」での充実した修行の日々を送ったあと、2007年に独立。ほかにはない支援スタイルが起業家・経営者に受け入れられ、経済産業省「DREAM GATE」にて、面談相談12年連続日本一。補助金・助成金支援実績600件超。ベストセラー含む起業・経営本20冊を出版。累計25万部超。無料相談件数は全国から累計3000件を超す。
この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。