
人手不足倒産はなぜ過去最多に?中小企業が今すぐ始める採用・定着の打ち手
「募集をかけても応募が来ない」「採用してもすぐ辞めてしまう」——そんな状態が続くと、受注はあるのに現場が回らず、最悪の場合は事業の継続そのものが危うくなります。実際、人手が確保できずに倒産する「人手不足倒産」は年々増え、2025年には過去最多を更新しました。この記事では、人手不足倒産の意味と最新データを整理したうえで、中小企業・個人事業主が倒産を回避するために今すぐ始められる採用・定着の打ち手を、現場目線でわかりやすく解説します。
※本記事は執筆時点(2026年6月)の公的データ・制度をもとにしています。助成金などの制度内容は変更されることがあるため、活用の際は必ず最新の公式情報を確認してください。
人手不足倒産とは
人手不足倒産とは、従業員や経営幹部などの人材を十分に確保できないことが直接・間接の原因となって倒産に至るケースを指します。具体的には、次のような状況が引き金になります。
- 人手が足りず受注をこなせない、または受注自体を断らざるを得ない
- 人材確保のための賃上げや採用コストが膨らみ、利益を圧迫する
- 中核社員や経営幹部の退職で事業が回らなくなる
「赤字だから倒産する」のではなく、「仕事はあるのに人がいなくて倒産する」のが人手不足倒産の特徴です。だからこそ、業績が悪くない会社でも他人事ではありません。
2025年は427件で過去最多——データで見る現状
帝国データバンクの調査によると、2025年の人手不足倒産は427件にのぼり、3年連続で過去最多を更新。年間で初めて400件を超えました。件数の増加だけでなく、どの業種・規模で起きているかにも特徴があります。
建設業・物流業で特に深刻
業種別では建設業が113件で初めて100件を突破し、物流業も52件と、いずれも過去最多を記録しました。2024年4月から時間外労働の上限規制が本格適用された両業種(いわゆる2024年問題)では、限られた人員で業務を回す難しさが倒産という形で表面化しています。
小規模企業ほどリスクが高い
規模別では、全体427件の77.0%にあたる329件が「従業員10人未満」の小規模企業でした。人員に余裕がない小さな会社ほど、一人の退職が事業全体に直結します。「うちは小さいから関係ない」のではなく、むしろ小規模事業者こそ備えが必要だといえます。
「従業員退職型」の倒産が急増
従業員や経営幹部の退職が引き金になった「従業員退職型」の倒産は124件と、前年から大きく増えて初めて年間100件を超え、過去最多となりました。採用ができないことに加え、「今いる人が辞めてしまう」ことが倒産の引き金になっている点は見逃せません。今後は、賃上げの原資を確保できずに人材をつなぎ留められない「賃上げ難型」の増加も懸念されています。
なぜ人手不足倒産は増えているのか
背景には、生産年齢人口の減少という構造的な要因があります。働き手が減り続ける中で、賃上げの流れや2024年問題による労働時間の制約が重なり、中小企業は「採用」と「定着」の両面でこれまで以上に苦戦しています。大企業が賃金や待遇で人材を引き寄せる一方、原資の限られる中小企業は同じ土俵で競うのが難しく、採用難・離職増が倒産リスクに直結しやすくなっているのです。
ただし、人手不足倒産は「人口が減ったから仕方ない」とあきらめるしかないものではありません。採用と定着の仕組みを整えることで、限られた人員でも事業を回せる体制はつくれます。次の章で具体的な打ち手を見ていきましょう。
人手不足倒産を回避するために今やるべきこと
1. 「採れない・辞める」原因を見える化する
まずは、自社で何が起きているのかを数字で把握します。求人を出してから応募が来るまでの数、応募から面接・採用への歩留まり、入社後1年以内の離職率など。どこで人が「来ない/辞める」のかが分かれば、限られた時間とお金をどこに使うべきかが見えてきます。感覚ではなく事実から始めることが、打ち手を間違えない第一歩です。
2. 採用の入口(求人・初動対応)を整える
応募が来ない原因の多くは、求人票の内容と初動対応にあります。給与・条件が同業他社と比べて見劣りしていないか、求人原稿が求める人物像に届く表現になっているか。そして、応募が来たら24時間以内に連絡を返しているか。採用がうまくいく会社ほど、応募後の初動が速く丁寧です。お金をかけずに改善できる部分から着手しましょう。
3. 定着の仕組みをつくる
せっかく採用しても辞めてしまっては意味がありません。入社後のオンボーディング(受け入れ・教育の流れ)、評価や処遇の納得感、相談しやすい人間関係など、「辞めない理由」を意図的につくることが重要です。特に中核社員の離職は事業に直結するため、待遇だけでなく、役割や将来像を示す工夫も求められます。
4. 助成金を活用して採用・処遇改善の負担を抑える
採用や賃上げ、職場環境の整備には、厚生労働省系の雇用関連助成金を活用できる場合があります。たとえば、人材確保のための雇用管理改善やキャリアアップ(正社員化)に対する助成など、条件を満たせば取り組みの一部を国が後押ししてくれます。なお、労働法や助成金の制度は変更されやすいため、活用にあたっては必ず執筆時点の最新要件を確認してください。
5. 専門家に現状分析を依頼する
「何から手をつければいいか分からない」という場合は、採用・定着の専門家に現状分析を依頼するのが近道です。自社だけでは気づきにくい課題を、外部の目で構造的に整理してもらうことで、優先順位を間違えずに動けます。
業績は悪くないのに採用できない・定着しないという段階で、どこから着手すべきか整理したい方には、専門家による現状分析から始める支援が向いています。
採用課題の整理から定着の仕組みづくりまで、専門家がご支援します
「業績は好調なのに採用ができない・定着しない」という悩みは、採用市場の構造的な変化が背景にあるため、現状分析と施策の優先順位付けから始めるのが近道です。V-Spiritsの採用定着支援士は、一般社団法人採用定着支援協会と連携した全国500以上の専門家ネットワーク、累計2,000社超の支援実績をもとに、労務・財務まで含めた総合的な視点で伴走します。
よくある質問(FAQ)
Q. 人手不足倒産はどんな業種で多いですか?
A. 2025年は建設業(113件)と物流業(52件)が特に多く、いずれも過去最多でした。2024年4月からの時間外労働の上限規制の影響を受けた業種で深刻化しています。ただし業種を問わず増加傾向にあり、どの業界でも備えが必要です。
Q. 小さな会社でも人手不足倒産のリスクはありますか?
A. むしろ小規模企業ほど注意が必要です。2025年の人手不足倒産の77.0%は従業員10人未満の企業でした。人員に余裕がないぶん、一人の退職が事業全体に響きやすいためです。
Q. 何から始めればいいか分かりません。
A. まずは「採れない・辞める」原因を数字で見える化することから始めましょう。そのうえで、求人・初動対応の改善、定着の仕組みづくりへと進めます。自社だけで整理が難しい場合は、採用定着の専門家に現状分析を依頼するのがおすすめです。
まとめ
人手不足倒産は2025年に427件と過去最多を更新し、建設業・物流業や小規模企業を中心に広がっています。仕事があっても人がいなければ事業は続きません。一方で、採用と定着の仕組みを整えれば、限られた人員でも乗り切る道はあります。まずは自社の課題を数字で把握し、求人の入口と定着の仕組みを一つずつ整えていきましょう。「どこから手をつけるべきか」で迷ったら、採用定着の専門家に早めに相談することが、倒産リスクを遠ざける確実な一歩になります。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP技能士。大正大学招聘教授(起業論、ゼミ等)
V-Spiritsグループ創業者。税理士法人V-Spiritsグループ代表。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「ベストセラー起業本」の著者。著書20冊、累計25万部超。経済産業省後援「DREAMGATE」で12年連続相談件数日本一。
【まるごと起業支援(R)・経営支援】
起業コンサル(事業計画+融資+補助金+会社設立支援)+起業後の総合サポート(経理 税務 事業計画書 融資 補助金 助成金 人事 給与計算 社会保険 法務 許認可 公庫連携 認定支援機関)など
【略歴】
経営者である父の元に生まれ、幼き頃より経営者になることを目標として過ごす。バブル崩壊の影響を受け経営が悪化。一家離散に近い貧婚状況を経験し、「経営者の支援」をライフワークとしたいと決意。それに役立ちそうな各種資格を学生時代を中心に取得。
同じく経営者であるメンターの伯父より、単に書類や手続を追求する専門家としてではなく、視野を広げ「ビジネス」の現場での経験を元に経営者の「経営そのもの」を支援できるような専門家を目指すようアドバイスを受け、社会人生活をスタート。
大手、中小、ベンチャー企業、会計事務所等で営業、経理、財務、人事、総務、管理職、経営陣等、ビジネスの「現場」での充実した修行の日々を送ったあと、2007年に独立。
ほかにはない支援スタイルが起業家・経営者に受け入れられ、数々の実績を残しています。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。
- 経済産業省「DREAM GATE」にて、面談相談12年連続日本一
- 補助金・助成金支援実績600件超
- ベストセラー含む起業・経営本20冊を出版(累計25万部超)
- 無料相談件数は全国から累計3,000件超
この記事を書いた人
坂井 優介(Yusuke Sakai)
起業コンサルタント® / 採用定着士 / 行政書士法人V-Spirits 補助者
1988年東京都生まれ。転勤族の父の影響で幼少期を愛知・長野・岩手・埼玉で過ごす。転入するたびに方言や文化の違いをからかわれつつも、1週間もあれば現地に溶け込む適応力を身につける。
大学在学中に公認会計士試験にチャレンジするも挫折し、アルバイト先だった埼玉の大手学習塾に就職。塾業界特有の過酷な労働環境の中でも10年間勤務を続けるが、成果を上げても給与が変わらない状況に限界を感じ、在職中に会計士試験に再挑戦。再び挫折するも、学んだ会計知識を活かせる職場を求めて転職活動を開始。2021年にV-Spiritsグループに参画し、2022年よりV-Spirits総合研究所の常務取締役に就任。
現在は、中小企業の経営者向けに補助金・助成金の支援から採用定着の仕組みづくりまで幅広く担当。「制度を使いこなす中小企業を増やす」をテーマに、現場に寄り添ったサポートを行っている。
役職:V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役 / 税理士法人V-Spirits 業務部長 / 社会保険労務士法人V-Spirits 業務部長
担当業務:経済産業省系補助金支援・厚生労働省系助成金支援・マーケティング・人事労務・採用定着支援




























