
創業計画書 記入例 飲食店の書き方|公庫書式テンプレート&ポイント解説
飲食店を開業する際、多くの方が最初に直面するのが「資金調達」と「創業計画書の作成」です。特に日本政策金融公庫の創業融資を活用する場合、創業計画書の出来が融資審査の合否を左右します。
しかし、飲食店ならではの売上構造(席数×回転数×客単価)、原価率、立地依存性などを、限られた書式の中で説得力をもって表現するのは決して簡単ではありません。
この記事では、日本政策金融公庫が用意する創業計画書フォーマットに沿って、飲食店の場合の具体的な記入例とポイントを項目別に解説します。これから飲食店を開業して融資を申し込む方、また再申請を検討している方の参考になれば幸いです。
なお、制度内容や書式は変更される可能性があるため、必ず日本政策金融公庫の最新公式情報も併せて確認してください。
飲食店の創業計画書が重要な理由
飲食店は他業種と比較して、次のような特徴があります。
- 初期投資が大きい(内装・厨房機器など)
- 固定費(家賃・人件費)の負担が重い
- 売上が立地・席数・回転数に大きく左右される
- 原価率(食材費)の管理が利益に直結する
- 競合が多く、差別化が必要
これらの特性を踏まえた事業計画になっているかが、融資審査での評価ポイントになります。「なんとなくやりたいから」「料理が好きだから」だけでは通りません。数字の裏付けと、現場感のある計画書が求められます。
日本政策金融公庫の創業計画書|9つの記入項目
公庫の創業計画書は、概ね以下の項目で構成されています。本記事執筆時点の標準フォーマットを前提に解説しますが、最新の書式は公庫公式サイトでご確認ください。
- 創業の動機
- 経営者の略歴等
- 取扱商品・サービス
- 取引先・取引関係等
- 従業員
- お借入の状況
- 必要な資金と調達方法
- 事業の見通し(収支計画)
- 自由記述欄(参考事項)
順番に、飲食店を想定した記入例とポイントを見ていきます。
項目1:創業の動機|飲食店の記入例
記入例(イタリアン業態の場合)
「ホテル系イタリアンレストランで10年間調理を担当し、うち3年間は副料理長として人材育成と原価管理を経験してきました。前職での経験を通じ、地元○○エリアには本格的なパスタを手頃な価格で提供する店がほとんど存在しないことに気づきました。家族連れや女性のひとりランチ需要が高い駅前立地で、価格設定1,000〜1,500円のランチ営業を中心にした店舗を出店することで、月商450万円規模の事業を構築できると判断し、独立を決意しました。」
記入のポイント
- 「なぜ飲食店か」「なぜこの業態か」「なぜこの立地か」の3つを論理的につなげる
- 勢いや夢ではなく、経験・市場ニーズ・収益見込みを根拠にする
- 抽象的な「人を笑顔にしたい」だけでは弱い。具体的な行動と数字に落とし込む
項目2:経営者の略歴等|飲食店の記入例
記入のポイント
飲食店の場合、調理経験・店舗運営経験・売上規模・部下マネジメントの実績は必ず書きます。「○年勤務」だけでなく、担当業務・売上・人員規模を数字で添えると、審査担当者の評価が大きく変わります。
例:「20XX年〜20XX年 株式会社○○(イタリアンレストラン△△ 銀座店) 調理スタッフ。月商1,800万円、客単価3,500円、ピーク時従業員12名の店舗にて、調理全般・仕込み・原価管理を担当。20XX年4月より副料理長に就任し、メニュー開発・原価率改善(38%→32%)・新人指導を担当。」
項目3:取扱商品・サービス|飲食店の記入例
記入のポイント
メニューごとの単価・原価率・売上構成比を意識して書きます。すべてのメニューを羅列するのではなく、「主力メニュー3〜5品」と「価格帯」「セールスポイント」を提示するのが効果的です。
記入例:
- ランチセット(パスタ+サラダ+ドリンク):1,200円 原価率30% 売上構成比45%
- ディナーコース:3,800円 原価率33% 売上構成比30%
- アラカルト・ドリンク:客単価600円 原価率25% 売上構成比25%
セールスポイント:「自家製生パスタを毎朝仕込み、市場直送の鮮魚を使った週替わりメニューを提供。SNS映えする盛り付けでInstagram経由の新規来店を狙う」
項目4:取引先・取引関係等|飲食店の記入例
記入のポイント
仕入先(食材卸・酒類卸・市場など)と販売先(一般顧客の比率・想定回転数)を分けて記入します。仕入先は複数候補を挙げ、リスク分散の意識があることを伝えると印象が良くなります。
例:「食材仕入先:○○青果(青果80%)/△△魚市場(鮮魚70%)/□□酒店(酒類100%)/業務スーパー(汎用品20%)」
販売先:「個人顧客100%。ランチ時間帯(11:30〜14:30)、ディナー時間帯(17:30〜22:30)。想定回転数ランチ2.5回転、ディナー1.5回転」
【無料相談のご案内】
起業の手続きって何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!
項目5:従業員|飲食店の記入例
記入のポイント
開業時の人員構成と、想定するシフト計画を簡潔に書きます。家族従業員がいる場合は明記します。
例:「正社員2名(うち代表者1名、調理スタッフ1名)、アルバイト4名(ホール2名、調理補助2名)。ピーク時間帯はホール2名・キッチン2名体制、アイドルタイム時間帯はホール1名・キッチン1名体制で運営。」
項目6:お借入の状況|飲食店の記入例
個人の住宅ローン・自動車ローン・カードローン・教育ローンなど、すべて正確に申告します。記入漏れや虚偽申告は、信用情報照会で必ず発覚するため絶対にしてはいけません。借入があっても、返済を遅延なく続けていれば致命的にはなりません。
項目7:必要な資金と調達方法|飲食店の記入例
飲食店の開業資金は、設備資金と運転資金に分けて書きます。
設備資金の記入例
- 内装工事費(坪単価40万円×15坪):600万円
- 厨房機器(コンロ・冷蔵庫・製氷機など):300万円
- 什器備品(テーブル・椅子・食器類):100万円
- 保証金・敷金(家賃の10か月分):200万円
- 礼金・仲介手数料:60万円
- 合計:1,260万円
運転資金の記入例
- 食材仕入れ(3か月分):180万円
- 家賃(3か月分):60万円
- 人件費(3か月分):150万円
- その他経費(広告宣伝・光熱費等3か月分):90万円
- 合計:480万円
調達方法
- 自己資金:400万円
- 日本政策金融公庫からの借入:1,340万円
- 合計:1,740万円
設備資金と運転資金は分けて記入すること、見積書を添付できる項目は必ず添付することがポイントです。
項目8:事業の見通し(収支計画)|飲食店の記入例
記入のポイント
「席数×回転数×客単価×営業日数」の計算式で、月商を積み上げる根拠を必ず示します。曖昧な数字ではなく、ランチ・ディナー別、平日・土日別の想定回転数で組み立てると説得力が大きく増します。
記入例(月商の根拠):
- 席数:20席
- ランチ:客単価1,200円×回転2.5回×営業日数25日=150万円
- ディナー:客単価3,500円×回転1.5回×営業日数25日=262.5万円
- 客数合計:月間約2,000人
- 月商目安:約412.5万円
経費面では、家賃20万円、人件費80万円、原価33%(136万円)、水道光熱費15万円、その他経費30万円、減価償却・支払利息含めると、月の営業利益は60〜80万円程度の見込み。
軌道に乗るまでの3か月は売上6〜7割からスタートする想定で、運転資金がショートしない計画かを確認します。
項目9:自由記述欄(参考事項)|飲食店の記入例
ここで他の項目で書ききれなかった事業の強み・差別化要素・リスク対策を補足します。
記入例:
「立地優位性:駅徒歩2分・オフィス街に近接し、ランチ客の安定確保が見込める。半径500m以内に同価格帯のイタリアンは2店舗のみで、価格・メニュー両面で差別化可能。SNS集客戦略:Instagram運用を開業3か月前から開始し、開業時点でフォロワー1,500人獲得済み。テイクアウト需要対応:パスタ・サラダのテイクアウト体制を整備し、ランチ売上の20%を見込む。」
飲食店の創業計画書|書く際の注意点
数字に根拠を持たせる
「月商450万円を目指します」だけでは通りません。席数・回転数・客単価・営業日数・原価率の積み上げ式で、月商を必ず数式で表現します。
立地調査の結果を盛り込む
通行量、近隣競合店、ターゲット層の人口、最寄り駅の乗降客数など、立地に関するファクトを盛り込むと事業計画の信頼性が高まります。
調理経験・店舗運営経験を具体的に書く
職務経歴は「○年勤務」では不十分です。「月商△△万円の店舗で原価管理担当」のように、自分が貢献してきた数字を書いてください。
自己資金を「見せ金」にしない
直前に親族から借りて自己資金として見せかける行為は、通帳履歴から判明します。自己資金は最低6か月以上前から計画的に貯めてきた経緯が見える状態にしておくのが理想です。
まとめ|飲食店の創業計画書は数字の根拠が命
飲食店の創業計画書は、料理の腕や情熱ではなく、「席数×回転数×客単価」の構造を理解した数値計画になっているかが審査の分かれ目です。
書類のフォーマット自体は決まっているため、各項目に何を書くかさえ押さえられれば、難易度はそれほど高くありません。重要なのは、調理経験・立地優位性・収支計画の3つに納得感を持たせることです。
「自分の事業計画書で公庫の創業融資が通るか不安」「より説得力のある書き方を教えてほしい」といった疑問があれば、専門家への相談が近道です。融資・補助金・経営の領域に精通した専門家チームが、最適な計画書ブラッシュアップをご提案します。
【無料相談のご案内】
起業の手続きって何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























