
清掃業で創業融資を断られたら、最初にやるのは「理由の特定」です|再申込までの手順と公庫以外のルート
ハウスクリーニングや店舗清掃で独立しようと日本政策金融公庫に創業融資を申し込み、見送りの連絡を受けた。この状況で検索すると「原因を分析して再申請しましょう」という説明にたどり着きます。ただ、公庫は否決の理由を項目立てて教えてくれるわけではありません。分析しようにも、出発点になる材料が手元にない状態です。
とはいえ、清掃業という業態で説明が薄くなりやすい箇所は、ある程度決まっています。この記事では、断られた直後に確認する順番と、公庫以外に並べておける選択肢を整理します。数字は2026年8月時点の社内資料に基づくもので、制度や金利は変わりやすいため、申し込みの前に申請先で最新の内容を確認してください。
まず切り分ける2つのこと
「減額」だったのか「見送り」だったのか
申込額に届かなかったのか、融資そのものが見送りになったのかで、次の打ち手は変わります。減額なら資金使途の説明を組み直す話に寄りますが、見送りなら計画全体の説得力を作り直すことになります。連絡を受けた段階で、どちらだったのかを自分の中ではっきりさせておいてください。
信用情報が原因かどうか
過去の延滞や債務整理に心当たりがあるなら、計画書を直す前にこちらを確認します。CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センターの3機関で自己開示をして、現状を見てください。延滞が残っていれば完済し、登録が抹消される時期を確認します。自己破産歴の登録期間は最長でも7年程度です。
ここが原因だった場合、事業計画をどれだけ作り込んでも状況は動きません。順番として先に確認しておくほうが、回り道になりません。
すぐに出し直しても結果は変わりません
原因を潰さずに再申請しても、結果は変わりません。自己資金不足、事業計画の説得力不足、業界未経験への対策不足など、否決の理由を具体的に特定し、そこを改善したうえで再申請することが必要です。
記録の扱いも確認しておきます。公庫内には審査に落ちた記録が残ります。そのため次の審査では、落ちたことを考慮に入れた形になるため、慎重に扱われる可能性があります。
清掃業で説明が薄くなりやすい3か所
清掃業は、開業にあたって業種特有の許認可を必要としない形態が多く、設備も比較的軽い業態です。その分、計画の説得力が売上の根拠に集中します。順に見ていきます。
1. 売上の根拠が単価と件数の掛け算で止まっている
清掃業の売上は、単価と件数を掛けるだけでは説明しきれません。作業者1人が1日に回れる件数は、移動時間と1件あたりの作業時間で上限が決まります。ここを置かないまま件数を伸ばした計画は、根拠のない右肩上がりに見えます。
あわせて、法人向けの定期清掃と個人宅のスポット依頼では、受注の入り方も継続の仕方も違います。どちらを主軸に置くのかで、必要な営業活動も入金の周期も変わるため、2つを合算した1本の数字ではなく、分けて置いたほうが説明できる形になります。
2. 自己資金が金額だけで語られている
「自己資金が足りなかったのでは」と考えて、貯めてから出し直そうとする方がいます。ただし、公庫の創業融資では、制度上、自己資金の額や割合の要件は決まっていません。総額の10分の1という数字は、2024年3月に廃止された旧制度にあった要件が残っているものです。額が多いほど審査で有利になりやすいという傾向はありますが、要件ではありません。
見直す余地があるのは、額そのものよりも見せ方の側です。自己資金は面談時点で口座に確認できる形にしておきます。また、創業前に自費で取得した資格や、購入した高圧洗浄機・清掃機材などの支出は、みなし自己資金として一定範囲で評価されることがあります。領収書を保管しておいてください。
3. 未経験を補う体制が弱い
清掃の実務経験がないまま独立する場合、その不足をどう補うかが論点になります。ここで「同業のメンターから定期的に助言を受けている」「経理や専門技術を業務委託でプロに任せている」といった対策を書いても、経営そのものへの関与としては弱く、有効なカバー策とは言えません。事業経験者を役員として迎えるなど、事業運営に直接関わる体制を整えるほうが説得力が出ます。
資金使途の組み直しで動く部分
申込内容のうち、比較的手を入れやすいのが資金使途の区分です。清掃業なら、車両や高圧洗浄機・清掃機材は設備資金、洗剤などの材料費や外注費、人件費は運転資金という分け方になります。人件費や役員報酬は、事業活動に必要な経費として運転資金の対象になります。
この区分は体裁の問題ではありません。新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合の例では、返済期間は設備資金が20年以内、運転資金が原則10年以内で、据置期間はいずれも5年以内です。同じ借入額でも、どちらに寄せるかで毎月の返済額が変わります。資金使途はあくまで事業に必要な支出であることが前提のため、個別の支出が認められるかどうか判断に迷う場合は、申請先や専門家に確認しながら整えてください。
💬 監修者の元日本政策金融公庫の支店長の多胡から一言
減額のほうで見ていたのは、大きく分けて資金使途の妥当性と、資金調達の代替性の2つでした。業種に対して過剰なスペックの設備が入っていないか、中古やリースに置き換えられないか、といった見方です。見積の1行ずつに必要な理由を言える状態にしておくと、削られやすい部分が減ります。
公庫以外のルートも並べておく
公庫だけが選択肢ではありません。自治体の制度融資は、自治体・金融機関・信用保証協会の三者が連携する仕組みです。融資の実行主体は民間金融機関で、信用保証協会は保証を付ける役割を担い、自治体は利子補給などで関与します。「信用保証協会からの融資」と説明されることがありますが、協会が直接貸すわけではありません。
また、商工会議所や商工会の経営指導を受けている小規模事業者であれば、マル経融資(小規模事業者経営改善資金)という選択肢もあります。適用利率は特別利率Fで、2026年6月1日現在は一律2.60%の固定です。利用には経営指導を受けていることなどの要件があるため、詳細は地域の商工会議所・商工会にご確認ください。
出し直しまでの時間の見方
準備をやり直すとして、時間の見当も付けておきます。書類提出後の審査・実行はおおむね3週間から1か月が目安で、創業計画書・自己資金の裏づけ・見積書などを整える期間を含めると、合計で約2か月を見ておくと安全です。
数字も確認しておきます。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)ですが、これは上限であって必要額の目安ではありません。2026年6月1日現在の基準利率は、創業期(税務申告を2期終えていない時期)に利用する場合で年3.45〜5.15%です。創業期の方が利用する場合は、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性がありますが、適用可否は利用する制度や審査・条件により異なるため、必ず下がると考えず申請先で確認してください。
もう1点、創業融資は事業として創業した実績がなくても申し込めますが、決算書をまったく見ないわけではありません。新しく設立した会社であっても、一期でも決算が締まっていれば、その決算書が確認されます。代表者が別に会社を経営している場合は、その会社の決算書も確認の対象になります。
まとめ
清掃業で創業融資が通らなかったときは、減額か見送りかを切り分け、信用情報が原因でないかを先に確認したうえで、計画のどこが薄かったのかを特定する順番になります。清掃業で薄くなりやすいのは、作業者1人あたりの稼働から積み上げた売上の根拠、自己資金の見せ方、未経験を補う体制の3つです。
審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。判断材料は一つではないため、どこを直せば結果が変わるのかは個別の事情によって異なります。自分だけで理由を絞り込みにくいときは、申請先や創業融資に詳しい専門家に、断られた経緯を含めて相談してみてください。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























