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コラム

製造業の事業計画書で製造原価・販売単価をどう書く?創業融資に通る根拠の作り方4ステップ

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製造業の創業融資で製造原価と販売単価をどう書くか|創業計画書の記入例と根拠の作り方

金属加工や機械加工の現場で腕を磨いてきた方が独立するとき、最初の壁になるのが日本政策金融公庫へ提出する創業計画書です。とくに製造業の場合、「事業の見通し」の欄をどう埋めればよいのか分からない、という声をよくいただきます。

インターネット上にある創業計画書の書き方の記事は、そのほとんどが全業種向けの一般論で、売上を「単価×客数」で説明して終わっています。ところが製造業の売上は、材料を仕入れて、機械を動かして、人が加工して、はじめて成り立つものです。製造原価をどう分解し、販売単価にどう根拠を持たせるかを書き切れないと、数字が絵に描いた餅に見えてしまいます。

この記事では、製造業で独立を準備されている方に向けて、創業計画書に製造原価と販売単価をどう書くかを、記入の考え方と数字の根拠の作り方に絞って整理します。なお本文の制度・数字は2026年7月時点の情報にもとづくもので、実際の申請時には日本政策金融公庫の公式情報をご確認ください。

製造業の創業計画書がつまずくのは「売上原価」の欄です

日本政策金融公庫の創業計画書には「事業の見通し」という欄があり、売上高・売上原価(仕入高)・経費・利益をおおまかに書く構成になっています。飲食店や小売店であれば、仕入れた食材や商品がそのまま売上原価になるため、書く内容が直感的に分かります。

一方で製造業の原価は、材料を買ってくるだけでは完結しません。材料費に加えて、加工にかかる人の手間と、機械の稼働にかかる費用が積み重なってはじめて製品になります。この構造を意識せずに、材料の仕入額だけを売上原価として書いてしまうと、粗利が実態よりはるかに大きく見え、面談で「この利益率の根拠は何ですか」と問われることになります。

逆に言えば、原価の構造を自分の言葉で説明できる状態にしておくことは、それ自体が事業への理解度を示す材料になります。

ステップ1:製造原価を材料費・労務費・製造経費に分解する

まずは、製品1個(または1ロット、1時間)あたりの原価を3つに分けて書き出してみてください。

  • 材料費:鋼材・アルミ材などの素材、切削油やチップなどの消耗工具、外注する表面処理・熱処理の費用
  • 労務費:加工にあたる人の人件費。自分ひとりで始める場合も、時間あたりいくらの手間がかかっているかを金額に置き換えます
  • 製造経費:工場の家賃、電気代、機械のリース料や減価償却、工具の再研磨費、産業廃棄物の処理費など

製造業の場合、この分解ができていると、あとで数字が動いたときに「どこが効いているのか」を説明できます。たとえば材料相場が上がったときに単価をいくら見直せばよいのか、受注が増えたときに人をいつ雇えばよいのかが、原価表から逆算できるようになります。

記入の考え方(例)

仮に、主力製品1個あたりの数字を次のように積み上げたとします。材料費400円、労務費(加工時間20分×時間単価2,400円=800円)、製造経費(機械時間20分×時間単価900円=300円)。この場合、製造原価は合計1,500円です。この1,500円に、目標とする利益と販管費を乗せた金額が販売単価の出発点になります。

創業計画書の「事業の見通し」の欄そのものには、ここまで細かい内訳を書ききれません。欄には合計の数字を書き、内訳は別紙の原価計算表として添付するのが実務的です。面談で聞かれたときに、その別紙を見ながら答えられる状態にしておくことが重要です。

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ステップ2:販売単価は「積み上げ」で根拠を作る

販売単価の書き方は、取引の形態によって考え方が変わります。ここを分けずに書いている計画書は、根拠が弱くなりがちです。

下請け・受託加工が中心の場合

単価は取引先との見積交渉で決まりますので、「自社の原価に必要な利益を乗せた見積単価」を出発点にします。前職での加工実績や、独立後に見込んでいる取引先からの引き合い内容があるなら、それを数字の裏づけとして添えてください。時間単価(チャージ)で受注する業態であれば、機械ごとの時間単価と月間の想定稼働時間で売上を組み立てる形になります。

自社製品を直接販売する場合

この場合は市場の相場が単価の上限を作りますので、原価から積み上げた単価が相場に収まっているかを確認する順序になります。相場より高い単価を置くのであれば、なぜその価格で売れるのか(精度、納期、小ロット対応など)を説明できるようにしておきます。

ステップ3:稼働率と歩留まりを前提に置く

売上高は「販売単価×数量」で決まりますが、この数量の置き方でつまずく計画書が多く見られます。機械のカタログ上の能力をそのまま並べて、月間の生産可能数を上限いっぱいで書いてしまうケースです。

実際の現場では、段取り替えの時間、刃物交換、検査、そして不良の発生があります。そのため数量は、次のような前提を明示して積み上げるほうが説得力が出ます。

  • 稼働日数(例:月20日)
  • 1日あたりの実稼働時間(例:8時間のうち段取りを除いた6.5時間)
  • 稼働率(創業直後は受注が埋まりきらない前提で置く)
  • 歩留まり(不良率を見込んだ良品の割合)

とくに創業1年目は、営業活動と並行して設備を立ち上げる時期にあたります。初月から満稼働で計画を組むのではなく、数か月かけて稼働率が上がっていく形にするほうが、実態に近く、面談でも説明しやすくなります。

ステップ4:原価と単価の数字を返済計画につなげる

創業計画書は、単体で完結する書類ではありません。積み上げた数字が、返済できる根拠になっているかが見られます。

日本政策金融公庫の主力制度である「新規開業・スタートアップ支援資金」の融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)です。返済期間は、この制度を利用する場合の例として、設備資金が20年以内、運転資金が原則10年以内とされており、いずれも据置期間は5年以内で設定できます。据置期間中は利息のみの支払いになりますので、機械を導入してから量産が軌道に乗るまでの立ち上がり期間を、返済負担を抑えながら進めることができます。

金利については、2026年6月1日現在の基準利率が、無担保で創業期(税務申告を2期終えていない場合)に利用するとき年3.45〜5.15%です。創業期の方が無担保で利用する場合は、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性があります。ただし引下げの適用可否は利用する制度・審査・条件によって異なりますので、詳細は申請先でご確認ください。

製造業は設備投資の金額が大きくなりやすい業種です。設備資金と運転資金は返済期間の考え方が異なりますので、見積書をもとに設備資金の金額を固め、そのうえで立ち上がり期間を支える運転資金を分けて計上する順序で組み立てると整理しやすくなります。

数字の裏取りに使える資料をそろえる

計画書の数字は、口頭の説明より書類で裏づけできるほうが強くなります。製造業の創業融資では、次のような資料が根拠として役立ちます。

  • 導入予定の機械の見積書(複数社から取ると価格の妥当性を説明しやすくなります)
  • 材料の仕入価格が分かる見積書や単価表
  • 工場物件の図面やレイアウト案、想定する加工工程のフロー
  • 独立後に取引が見込まれる先からの引き合いの記録
  • 自分の加工経験を示せるもの(担当してきた製品・精度・取り扱ってきた機械など)

あわせて、創業前に自費で購入した工具や設備、資格取得の費用などは、いわゆる「みなし自己資金」として一定範囲で評価されることがあります。領収書は必ず保管しておいてください。

よくある質問

Q. 自己資金はいくら必要ですか?

制度上、自己資金の額や割合の要件は決まっていません。ただし自己資金の額は審査の重要な判断材料になり、多いほど有利になりやすいのは事実です。面談の時点で口座に確認できる形にしておいてください。

Q. 加工の腕はありますが、経営は未経験です。不利になりますか?

審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。そのうえで経験面を補強したい場合は、事業経験者を役員として迎えるなど、事業運営に直接関わる体制を整えることが有効です。反対に、同業の知人から定期的に助言を受けている、経理や専門業務を外部に委託している、といった対策は、経営そのものへの関与としては弱く、カバー策としては十分とは言えません。

Q. どれくらいの期間を見ておけばよいですか?

書類提出後、融資実行までおおむね3週間から1か月が目安です。創業計画書・原価計算表・見積書などの準備期間を含めると、合計で2か月程度を見込んでおくと安全です。機械の納期がある業種ですので、設備の発注時期と融資実行の時期がずれないよう、逆算して動いてください。

Q. 一度審査に落ちると、次回の審査に影響しますか?

日本政策金融公庫は個人信用情報機関に加盟していますが、審査に落ちたこと自体が信用情報に記録されることはありません。一方で、公庫内には審査に落ちた記録が残ります。そのため次の審査では、落ちたことを考慮に入れた形になるため、慎重に扱われる可能性があります。否決された場合は、原因を特定して改善したうえで再申請することが必要です。

まとめ

製造業の創業計画書で製造原価と販売単価を書くときは、次の順番で組み立てると迷いにくくなります。

  • 製造原価を材料費・労務費・製造経費の3つに分解し、製品1個または1時間あたりで積み上げる
  • 下請け中心か自社製品の直販かで、販売単価の作り方を分ける
  • 稼働日数・実稼働時間・稼働率・歩留まりの前提を明示して生産数量を置く
  • 設備資金と運転資金を分けて計上し、据置期間を含めた返済計画につなげる
  • 見積書・単価表・工程フローなど、数字を裏づける資料をそろえる

制度の内容や金利は変わりやすいため、本文の数字は2026年7月時点のものとしてお読みください。原価計算の考え方や税務上の取り扱いで判断に迷う点は、税理士などの専門家にご確認いただくことをおすすめします。創業計画書の数字の組み立てや、設備資金と運転資金の分け方でお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。

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小峰

この記事を書いた人

小峰精公/Kiyotaka Komine

元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人

多胡藤夫/Fujio Tago

元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

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この記事を監修した人


中野裕哲

中野裕哲/Nakano Hiroaki

税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授

税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。

経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。

【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。

中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。

【主な実績】

  • 起業支援・経営支援の豊富な実績
  • 起業相談件数3,000件以上
  • 資金調達支援1000件以上
  • 大企業Webサイト多数監修
  • 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)

V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。

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