
整骨院開業融資の借入額はどう決まる?7,200万円の上限との違いを解説
整骨院の開業融資はいくら借りられる?限度額と実際の目安を解説
整骨院を開業したい柔道整復師の方から多く寄せられる質問のひとつが「創業融資でいくら借りられるのか」です。制度上の融資限度額と、実際に整骨院の開業で借りられる金額の目安は別物であり、両者を混同すると資金計画がずれてしまいます。本記事では、日本政策金融公庫の創業融資の制度上の限度額、実際の借入額を左右する要素、そして「借りられる額」と「無理なく返せる額」の考え方を整理して解説します。なお、本記事の制度・数字は執筆時点(2026年7月)の情報です。申請前には必ず日本政策金融公庫の最新情報をご確認ください。
整骨院の開業に必要な資金はいくらか
整骨院の開業資金は、店舗の立地や規模、居抜きか新装かによって幅がありますが、主な内訳は次のとおりです。
- 物件取得費:保証金・敷金・礼金・仲介手数料など
- 内装・設備工事費:施術スペースの内装、受付・待合スペースの造作など
- 機器・備品費:施術ベッド、電気治療器、ウォーターベッドなどの設備
- 運転資金:開業直後で患者が定着するまでの家賃・人件費・広告費
これらを合計すると、数百万円から1,000万円を超える規模になることも珍しくありません。特に運転資金は見落とされがちですが、開業直後から黒字化するとは限らないため、数か月分の固定費を別枠で確保しておく必要があります。
創業融資の融資限度額はいくらか(制度上の上限)
整骨院の開業資金を融資でまかなう場合、まず検討したいのが日本政策金融公庫の創業融資です。現在の主力制度は「新規開業・スタートアップ支援資金」で、2024年4月に旧「新規開業資金」から改称・拡充されたものです(これとは別に、無担保・無保証の特例だった「新創業融資制度」は2024年3月に廃止されています)。この制度の融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)です。
ここで注意したいのは、7,200万円という数字は制度上の上限であって、整骨院の開業でこの金額を借りられるという意味ではない点です。実際の融資額は、事業計画の規模・自己資金・返済能力にもとづいて個別に審査され、決まります。
実際に借りられる金額はどう決まるか
創業融資の審査では、創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金をもとに審査が行われます。実際の借入額に影響する主な要素は次のとおりです。
自己資金
制度上、自己資金の額や割合の要件は決まっていませんが、自己資金の額は審査の重要な判断材料になります。自己資金は面談時点で口座に確認できる形にしておくことが基本です。創業前に自費で取得した施術機器や研修費用などは「みなし自己資金」として一定範囲で評価されることがあるため、領収書は保管しておきましょう。
事業計画の説得力
整骨院の場合、「どのエリアの、どんな悩みを持つ患者を対象にするのか」「近隣の競合とどう差別化するのか」「施術単価と来院数から算出した現実的な売上見込み」を、根拠を持って示せるかが評価されます。地域の人口や通院ニーズを踏まえない楽観的な売上予測は、審査で説得力を持ちません。
実務経験
柔道整復師としての実務経験、勤務先での施術内容や患者対応の実績は、開業後も事業を継続できる根拠として評価されます。資格取得直後の開業よりも、一定の臨床経験を積んでいるほうが計画の説得力は高まります。
これらを総合して、融資額は「自己資金+事業計画の実現可能性に見合う金額」として決まります。制度上の上限に届くケースは多くなく、開業に必要な資金の不足分を、返済可能な範囲で借りるのが実務上の基本的な考え方です。
金利・返済期間から見た「無理なく借りられる額」
借りられる額を考えるときは、金利や返済期間もあわせて確認しておくと、資金計画の精度が上がります。2026年6月1日現在の基準利率は、創業期(税務申告を2期終えていない場合)で年3.45〜5.15%です。創業期の方が利用する場合は、原則として0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性があります(実際の適用可否は制度・審査・条件により異なります)。
返済期間は、新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合、設備資金が20年以内、運転資金が原則10年以内で、いずれも据置期間を5年以内で設定できます。据置期間中は利息のみの支払いとなるため、患者が定着するまでの開業初期のキャッシュフローに余裕を持たせることができます。「借りられる上限」だけでなく、「毎月の売上見込みから無理なく返済できる金額か」を必ずセットで検討しましょう。
整骨院の開業融資でよくある誤解
整骨院の開業融資を検討する際、次のような誤解には注意が必要です。
- 「新創業融資制度」を現行制度として案内している情報がある:同制度は2024年3月に廃止されており、現在の主力制度は「新規開業・スタートアップ支援資金」です
- 自己資金の割合を固定的な「必須要件」として案内している情報がある:制度上、自己資金の額や割合の要件は決まっていません(ただし審査上重要な判断材料であることに変わりはありません)
- 敷金・礼金・仲介手数料を資金使途に含めてよいと誤解しているケース:これらは資金使途に含めないため、事業計画書の作成時に注意が必要です
よくある質問
Q. 自己資金がほとんどなくても融資は受けられますか?
A. 自己資金が少ないと審査のハードルは上がりますが、必ずしも不可能ではありません。事業計画の精度や実務経験、みなし自己資金の有無なども含めて総合的に判断されるため、まずは現状で何が評価されるかを専門家に相談することをおすすめします。
Q. 開業資金の全額を融資でまかなうことはできますか?
A. 制度上、自己資金がゼロでも申請自体は可能ですが、自己資金の額は審査の重要な判断材料であるため、全額を融資でまかなう計画は審査上不利になりやすい傾向があります。可能な範囲で自己資金を準備しておくことが望ましいでしょう。
Q. 申込みから融資実行までどのくらいかかりますか?
A. 書類提出後、おおむね3週間〜1か月程度が目安です。創業計画書や見積書などの準備期間を含めると、合計で2か月程度を見込んでおくと安全です。物件契約や内装工事のスケジュールと逆算して、早めに準備を始めましょう。
まとめ
整骨院の開業融資でいくら借りられるかは、制度上の融資限度額(7,200万円)ではなく、自己資金・事業計画の説得力・実務経験にもとづいて個別に決まります。あわせて金利や返済期間から「無理なく返済できる金額」を考えることが、開業後の資金繰りを安定させる鍵になります。制度名や自己資金の要件について古い情報も出回っているため、最新の公式情報とあわせて確認することが大切です。借入額の見積もりや事業計画書の作り込みに不安がある場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

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中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























