
創業初年度、資金調達は補助金と融資どちらを先に動くべきか
「補助金がもらえるなら、まず補助金から挑戦したい」——創業初年度の資金調達を考えるとき、こう考える起業家は少なくありません。しかし結論から言えば、創業初年度に最初に動かすべきは補助金ではなく創業融資です。本記事では、なぜ補助金だけでは初年度の資金繰りが成立しにくいのかを数字で整理したうえで、融資と補助金を組み合わせる実践的な進め方を解説します。
結論:創業初年度はまず創業融資を動かす
補助金は「もらえるお金」、融資は「返すお金」という違いがあるため、補助金の方が有利に感じられやすいものです。しかし創業初年度に限っては、この直感が資金繰りを詰まらせる原因になりやすくなります。理由は次の2点です。
- 補助金は原則として後払いです。設備投資や販路開拓の費用を先に自己資金または借入で立て替え、実績報告を経てから補助額が入金される仕組みのため、手元資金が無ければ「採択されても使えない」状態になります
- 補助金は審査に数ヶ月かかり、採択されるとは限りません。公募のタイミングも年に数回に限られるため、開業直後の運転資金・設備資金として当てにするには不確実性が高いといえます
一方、日本政策金融公庫の創業融資(新規開業・スタートアップ支援資金)は、書類提出後おおむね3週間〜1か月程度で実行されます(準備を含めると合計で約2か月を見ておくと安全です)。まず融資で資金の土台を作り、その上に補助金を重ねるのが現実的な順番になります。
創業融資の基本を数字で確認する
創業初年度に使える代表的な制度は、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)で、原則として無担保・無保証人で利用できます。基準利率は2026年6月1日現在、無担保・創業期(税務申告2期未了)で年3.45〜5.15%であり、創業期の方には原則0.65%(雇用拡大を図る場合0.9%)の引下げが適用される可能性があります(適用可否は制度・審査・条件により異なるため、必ず申請先で確認してください)。元金返済の据置期間は5年以内で設定でき、開業初期のキャッシュフローに余裕を持たせられます。
審査では創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。自己資金の額や割合について制度上の要件は定められていませんが、実務上は自己資金が多いほど審査で有利になりやすいといえます。
補助金と融資を組み合わせる実践パターン
創業初年度の資金計画では、次のような組み合わせ方が現実的です。
- まず創業融資で運転資金・設備資金の土台を作る:開業に必要な資金を融資で確保し、事業を開始できる状態を整えます
- 並行して補助金の公募スケジュールを確認する:該当しそうな補助金があれば、開業準備の段階から公募時期・必要書類を調べておきます
- 補助金の交付が決まったら、立て替え分を融資でつなぐ選択肢もあります:補助金は実績報告後の後払いのため、採択後に必要な経費を一時的に自己資金や融資で立て替え、入金後に精算する流れになります。資金繰りに余裕がない場合は、この立て替え期間をどう乗り切るかをあらかじめ金融機関に相談しておくと安心です
例えば小規模な販路開拓・広報費用であれば小規模事業者持続化補助金(上限250万円)のように、創業初年度の事業規模でも対象になりやすい補助金があります。ただし対象になる補助金は事業内容によって異なるため、自社の投資内容に合う制度を個別に確認する必要があります。
組み合わせるときに注意したい3つの落とし穴
- 生活費を運転資金に含めない:創業者自身の生活費(家賃・食費など事業と無関係な支出)は融資の資金使途に含まれません。資金使途はあくまで「事業に必要な支出」であることが前提になります
- 補助金の後払いを見込んで資金計画を作る:補助金の入金前提で先に発注・支払いを進めると、入金までのタイムラグで資金繰りが苦しくなることがあります。融資枠に余裕を持たせておくと安心です
- 「必ず両方使える」と決めつけない:融資・補助金とも審査があり、必ず希望どおりに通るとは限りません。特に補助金は採択されない可能性も踏まえて、融資だけでも事業が回る計画を軸に据えておきましょう
よくある質問(FAQ)
創業融資と補助金は同時に申請してもよいですか?
同時並行で準備を進めること自体は可能です。ただし補助金は後払いが原則のため、融資で資金の土台を作りながら補助金の公募スケジュールを追いかける進め方が現実的です。
自己資金が少ない場合、補助金を先に狙うべきですか?
自己資金が少ないほど、後払いである補助金だけに頼るのはリスクが高くなります。自己資金の額や割合に制度上の要件はありませんが、審査では重要な判断材料になるため、まずは融資で資金基盤を整えることをおすすめします。
補助金が不採択だった場合、融資の返済計画に影響はありますか?
補助金の採否にかかわらず返済できる計画を融資の段階で組んでおくことが重要です。補助金を前提にした返済計画にしてしまうと、不採択になった際に資金繰りが崩れるリスクがあります。
まとめ
創業初年度は、後払いで審査に数ヶ月かかる補助金よりも、比較的短期間で資金が届く創業融資を先に動かすのが現実的な順番です。日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金で資金の土台を作りながら、該当する補助金の公募スケジュールを並行して確認し、採択後の立て替え期間をどう乗り切るかも視野に入れて資金計画を組むことが、初年度の資金繰りを安定させる近道になります。数字は本記事執筆時点(2026年6月1日〜7月時点)の情報のため、実際の申請にあたっては必ず最新の公式情報を確認してください。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

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中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























