
保育所開業の創業融資はいくら借りられる?平均融資額と資金計画の立て方
「保育所を開業したいが、施設整備費・運転資金を合わせるといくら借りられるのか見当がつかない」——保育所の開業を目指す個人・小規模法人の方から、こうした相談をよく受けます。日本政策金融公庫の創業融資は制度上の融資限度額こそ大きいものの、実際にいくら借りられるかは自己資金や事業計画の内容によって大きく変わります。
この記事では、保育所開業の創業融資について、制度上の上限額と実際の融資額の相場の違い、自己資金との関係、保育所特有の資金計画の考え方までを整理して解説します。なお本記事の金利・制度に関する数字は執筆時点(2026年7月時点)の情報です。制度・金利は変わりやすいため、申請時は必ず最新の公式情報をご確認ください。
保育所開業の創業融資、制度上の上限額と実際の相場は違う
日本政策金融公庫の創業融資(新規開業・スタートアップ支援資金)の融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)です。ただし、これはあくまで制度上の上限であり、実際に多くの開業者が借りられる金額とは水準が異なります。事業計画の内容や自己資金額によって、実際の融資額は大きく変動する点をまず押さえておきましょう。
「上限額まで借りられる」と考えて資金計画を立てると、実際の審査結果とのギャップに戸惑うことになりかねません。保育所は施設整備費が高額になりやすい業種のため、自己資金・融資額・自治体の補助制度を組み合わせた現実的な計画を早めに描くことが重要です。
創業融資額はどう決まるか:自己資金との関係
創業融資の額は、大まかには「創業に必要な資金の総額から自己資金を差し引いた金額」を目安に検討されます。制度上、自己資金の額や割合に関する固定の要件はありませんが、自己資金は審査の重要な判断材料であり、自己資金が多いほど審査で有利になりやすい傾向があります。
創業前に自費で取得した保育士資格の取得費用や、開業準備のために購入した備品・教材費なども、一定範囲で「みなし自己資金」として評価されることがあります。該当しそうな支出の領収書は必ず保管しておきましょう。自己資金は、面談時点で口座に確認できる形にしておくことが基本です。
保育所開業に必要な資金の内訳
保育所開業でまとまった金額が必要になりやすいのは、主に次の項目です。
- 施設整備費:内装工事、避難設備・安全対策設備、保育室のレイアウト変更など。テナントを借りて改装する場合と、新築・既存建物の大規模改修では必要額が大きく異なります
- 設備・備品費:保育教材、什器、給食設備(自園調理の場合)など
- 運転資金:人件費(保育士・スタッフの給与)、家賃、光熱費、保育材料費など、開業後しばらくの運営を支える資金
運転資金として認められるのは、事業に必要な支出に限られます。人件費は運転資金の対象になりますが、開業者自身の生活費(家賃・食費など事業と直接関係のない個人的支出)は運転資金の対象になりません。事業計画書には、事業に必要な支出であることが分かる内訳を明記しましょう。
創業融資の基本条件(金利・据置期間・審査期間)
日本政策金融公庫の創業融資の主制度は「新規開業・スタートアップ支援資金」です(2024年3月に廃止された「新創業融資制度」の後継として、2024年4月に改称・拡充されました)。2026年6月1日現在、無担保・創業期(税務申告2期未了)の基準利率は年3.45〜5.15%です。創業期の方が利用する場合、原則0.65%(雇用拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性がありますが、実際の適用可否は制度・審査・条件により異なるため断定はできません。
元金返済の据置期間は5年以内で設定でき、据置期間中は利息のみの支払いとなるため、開業初期の資金繰りに余裕を持たせやすくなります。審査から融資実行までは、書類提出後おおむね3週間〜1か月が目安です。書類準備の期間も含めると、申請準備から融資実行まで合計2か月程度を見ておくと安全です。
保育所開業ならではの資金計画の注意点
保育所の開業では、認可保育園と認可外保育施設で必要な資金・スケジュールの考え方が異なります。認可を受ける場合は、自治体の認可基準(設備・人員配置など)を満たす必要があり、施設整備の内容が資金計画に直結します。認可外の場合でも、都道府県への届出や指導監督基準を踏まえた設備投資が必要になるケースがあります。
また、保育事業には自治体独自の補助制度が用意されている場合がありますが、内容・時期は自治体ごとに異なり、創業融資とは別枠の話になります。補助金と融資のどちらを先に検討すべきかは、認可区分や自治体の制度によって変わるため、早い段階で専門家や自治体窓口に相談しておくと、資金計画の手戻りを減らせます。
よくある質問(FAQ)
Q. 自己資金がほとんどない状態でも創業融資は申請できますか?
制度上、自己資金の額や割合の要件は決まっていません。ただし自己資金は審査の重要な判断材料であるため、自己資金が少ない場合は、事業計画の説得力やみなし自己資金として評価される支出の有無で補う必要があります。
Q. 施設整備費が高額になる場合、融資だけで賄うべきですか?
施設整備費が高額になりやすい保育所では、創業融資に加えて自治体の補助制度や自己資金を組み合わせて資金計画を立てるケースが少なくありません。融資と補助金のどちらを先に動くべきかは事業の状況により異なるため、専門家に相談しながら計画を立てることをおすすめします。
Q. 保育士としての実務経験があれば融資審査で有利になりますか?
創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金をもとに審査される点は保育所の開業でも変わりません。保育士としての実務経験は事業計画の説得力を補う材料にはなりますが、それだけで審査結果が決まるわけではなく、収支計画や資金使途の妥当性が総合的に評価されます。
まとめ
保育所開業の創業融資は、制度上の上限額(7,200万円)と実際に借りられる金額の水準は異なり、自己資金や事業計画の内容によって融資額は変わります。施設整備費・運転資金の内訳を具体的に整理し、自己資金とのバランスを取りながら、認可区分に応じた資金計画を早めに描くことが、開業をスムーズに進める鍵になります。
資金計画の立て方や自己資金の評価、自治体の補助制度との組み合わせ方など、判断が難しい部分は専門家に相談することで、無理のない開業準備を進めやすくなります。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

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中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























