
IT系の創業融資で担保なしで融資を受けられるか
「サーバーやソフトウェアが中心のIT事業では、不動産のような担保がない。それでも創業融資は受けられるのだろうか」——システム開発、Web制作、SaaS、ITコンサルなどで起業を考える方からよく聞かれる不安です。結論から言えば、IT系でも担保なし・保証人なしで創業融資を受けることは十分に可能です。この記事では、起業直後の個人事業主・中小企業の方に向けて、無担保で使える主な融資制度、IT系特有の審査の見られ方、そして無担保・無保証で審査を通すためのポイントを、2026年時点の最新情報をもとにわかりやすく整理します。
結論:IT系でも担保なしで創業融資は受けられる
そもそも創業融資の世界では、「担保がある人だけが借りられる」わけではありません。むしろ創業期は不動産などの担保を持たない人が大半です。代表的な公的融資である日本政策金融公庫の創業融資は、新たに事業を始める方や事業開始後に税務申告を2期終えていない方であれば、原則として無担保・無保証人で利用できるのが基本的な考え方です。
これはIT系に限った話ではありませんが、もともと大きな設備を持たず、資産が「人の技術」や「ソースコード」といった目に見えにくいものに偏りがちなIT事業にとっては、担保を前提としない制度設計は相性が良いと言えます。担保がないこと自体は、IT系の創業融資でマイナスにはなりません。
なぜIT系は「担保なし」が前提になりやすいのか
IT系の事業は、製造業や飲食業と違って、高額な機械や店舗物件を必要としないケースが多いのが特徴です。主な支出はエンジニアの人件費、外注費、クラウドサーバーやSaaSの利用料、PC・開発機材などで、いずれも担保として差し入れられる資産にはなりにくいものです。
そのため金融機関側も、IT系の創業案件では担保価値ではなく「事業計画の実現性」と「経営者の経験・スキル」を中心に審査します。つまり、担保がないことを心配するより、計画と実績で返済能力をどう示すかに力を注ぐべき、ということになります。
担保なしで使える主な創業融資制度
日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」
かつて創業融資の代表格だった「新創業融資制度」は2024年3月31日で取扱いが終了し、現在は新規開業・スタートアップ支援資金に一本化されています。新たに事業を始める方などは、原則として無担保・無保証人で申し込めます。
- 融資限度額:7,200万円(うち運転資金4,800万円)
- 返済期間:設備資金は原則20年以内、運転資金は原則10年以内(いずれも据置期間あり)
- 担保・保証人:原則として無担保・無保証人で利用可能
IT系の創業では運転資金(人件費・外注費・サーバー費用など)の比重が大きくなりがちですが、運転資金の枠もしっかり用意されています。金額はあくまで限度額であり、実際の融資額は自己資金や計画内容に応じて決まる点に注意してください。
自治体の制度融資(信用保証協会つき)
もう一つの選択肢が、各都道府県・市区町村が用意する制度融資です。これは自治体・金融機関・信用保証協会が連携し、創業者が無担保で借りやすいように設計されたものです。信用保証協会が保証人の役割を担うため、第三者の連帯保証人を立てなくても申し込めるケースが一般的です。
自治体によっては利子や信用保証料の一部を補助する制度もあり、公庫と並行して検討する価値があります。条件は自治体ごとに異なるため、開業予定地の自治体の創業支援窓口で確認しましょう。
担保なし・無保証で審査を通すための5つのポイント
担保がない分、審査では計画と経営者本人の信頼性が重視されます。IT系の創業で押さえておきたいポイントを5つにまとめました。
1. 自己資金を計画的に準備する
無担保融資では、自己資金が「事業への本気度」と「計画性」を示す重要な材料になります。創業費用の1〜3割程度を目安にコツコツ貯めてきた履歴(通帳での積立)があると、評価されやすくなります。タンス預金や直前の一時的な入金は自己資金とみなされにくいため注意しましょう。
2. 売上の根拠を事業計画書で具体的に示す
IT系は受注前・売上ゼロの段階で申し込むことも多く、その分「これからどう売上を立てるか」の説得力が問われます。見込み顧客リスト、業務委託の内示、過去の常駐先との関係、ポートフォリオなど、売上の裏付けになる情報を計画書に盛り込みましょう。単価×案件数×稼働の積み上げで根拠を示すと効果的です。
3. これまでの実務経験・スキルをアピールする
担保がない代わりに、経営者自身の経験が「無形の担保」として効きます。前職での開発実績、担当した案件規模、保有資格、受賞歴などは具体的に記載しましょう。事業内容と本人の経歴に一貫性があるほど、返済の確実性が高いと判断されやすくなります。
4. 資金使途を運転資金中心で明確にする
IT系は設備が小さい分、人件費・外注費・広告費などの運転資金が中心になります。「何に・いくら・なぜ必要か」を明確にし、PCなどの汎用品は最小限の金額に抑えると、計画の妥当性が伝わりやすくなります。
5. 信用情報を整えておく
無担保・無保証だからこそ、個人の信用情報は丁寧に見られます。クレジットカードやローンの延滞、税金・公共料金の滞納がないかを事前に確認し、心当たりがあれば解消してから申し込むのが安全です。
IT系の創業融資でよくある注意点
- 「担保なし=必ず借りられる」ではない:無担保で申し込めることと、審査に通ることは別です。計画と自己資金の準備は欠かせません。
- 無形の資産は評価されにくい:開発中のサービスやアイデアそのものは担保にも売上根拠にもなりにくいため、契約・受注の裏付けで補いましょう。
- 法人化のタイミング:個人から法人成りする場合、創業融資の扱いや必要書類が変わることがあります。設立前後で相談しておくとスムーズです。
- 金利・限度額などは最新の公式情報を確認する:制度内容は改定されることがあるため、申込前に日本政策金融公庫や自治体の公式情報で必ず確認してください。
よくある質問(FAQ)
Q. 売上がまだゼロでも担保なしで申し込めますか?
申し込み自体は可能です。創業融資はこれから事業を始める方も対象で、無担保・無保証で利用できます。ただし売上ゼロの分、事業計画書での売上根拠と自己資金の準備がより重要になります。
Q. 自己資金がほとんどなくても担保なしで借りられますか?
自己資金が少なくても申し込めますが、無担保融資では自己資金が計画性を示す材料になるため、一定額を準備しておくほど審査では有利です。「必ず借りられる」とは言えないため、可能な範囲で自己資金を整えてから臨むのが現実的です。
Q. 連帯保証人は本当に不要ですか?
日本政策金融公庫の創業融資は原則として無保証人で利用できます。自治体の制度融資も信用保証協会が保証を担うため、第三者の連帯保証人を立てずに申し込めるケースが一般的です。法人の場合は代表者の扱いなど条件が異なることがあるので、個別に確認しましょう。
まとめ
IT系の事業は担保となる資産を持ちにくい一方で、創業融資はもともと無担保・無保証を前提とした制度が整っているため、担保がないこと自体は不利になりません。日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金や自治体の制度融資を活用し、自己資金の準備、売上根拠を示す事業計画書、経験・スキルのアピールをそろえれば、担保なしでも十分に融資を引き出せます。「自社のケースで何から準備すべきか」で迷ったら、創業融資に詳しい専門家に早めに相談することをおすすめします。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























