
子ども向けスクールの開業融資は何から始める?申請までの5ステップと資金の整え方
ダンススクール、子ども英語教室、体操教室。指導者として現場を経験してきた方が独立するとき、最初に立ちはだかるのが開業資金です。ところが「スクール 開業 融資」で調べると、出てくるのは学習塾を前提にした記事ばかりで、床材や鏡、音響設備、マットといった実技系スクール特有の投資をどう資金計画に落とすのかが見えてきません。
この記事では、子ども向けスクールを開業する方が日本政策金融公庫の創業融資に申し込むまでを、5つのステップに分けて整理します。数字は2026年6月1日現在の公表情報にもとづく執筆時点のものです。制度や利率は変わりますので、実際の申込みにあたっては日本政策金融公庫の最新情報をご確認ください。
STEP1.必要な資金を「設備資金」と「運転資金」に分ける
最初にやることは、金額を出すことではなく、必要な資金を2種類に仕分けることです。ここを混ぜたまま総額だけを出してしまうと、あとの手順がすべてぼやけます。
子ども向けスクールでは、教室の形態によって設備資金の中身が大きく変わります。ダンススクールなら床材・鏡・音響機器・防音、体操教室ならマットや器具、跳び箱などの用具、英語教室なら什器・教材・ICT機器といった具合です。加えて、いずれの形態でも物件の取得にかかる費用や内装工事費が乗ってきます。
一方の運転資金は、生徒が集まりきる前の期間を支える資金です。人件費や役員報酬は、事業活動に必要な経費として運転資金の対象になります。家賃、水道光熱費、広告費、教材の仕入れなども、事業に必要な支出であることが前提のうえで資金使途に含めて考えます。
この仕分けが効いてくるのは、返済期間が資金の種類で変わるからです。日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合の例では、設備資金の返済期間は20年以内、運転資金は原則10年以内で、据置期間はいずれも5年以内とされています。設備投資が重いスクールほど、この違いが月々の返済負担の設計に直結します。
STEP2.使う制度を決める
子ども向けスクールの開業でまず候補になるのは、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。2024年3月に「新創業融資制度」が廃止され、現在の主力制度になりました。ネット上には「新創業融資制度」を現役の制度として紹介している情報や、旧称の「新規開業資金」をそのまま使っている情報も残っていますので、制度名で混乱しないようご注意ください。
融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)で、創業期の方は原則として無担保・無保証人で利用できます。ここでいう創業期の方とは、新たに事業を始める方、または事業開始後に税務申告を2期終えていない方を指します。
2026年6月1日現在の基準利率は、創業期(税務申告を2期終えていない時期)に利用する場合で年3.45〜5.15%です。創業期の方が利用する場合は、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性がありますが、適用可否は利用する制度や審査・条件により異なるため、必ず下がると考えず申請先で確認してください。元金返済の據置期間は5年以内で設定でき、據置中は利息のみの支払いとなります。
もうひとつの選択肢が、自治体の制度融資です。こちらは自治体・金融機関・信用保証協会の三者が連携する仕組みで、融資を実行するのは民間金融機関、信用保証協会は保証を付ける役割を担い、自治体が利子補給などで関与します。教室を出す予定の自治体に創業向けのメニューがあるかどうかは、物件を決める段階で確認しておくと選択肢が広がります。
STEP3.自己資金を確認できる形にしておく
自己資金については、制度上、額や割合の要件は決まっていません。「開業資金の10分の1が必須」といった説明を見かけることがありますが、これは廃止された旧制度の要件が独り歩きしたものです。とはいえ自己資金の額は審査の重要な判断材料で、多いほど有利になりやすいという関係は変わりません。
準備としては、面談の時点で口座に確認できる形にしておくことが基本です。原則として全額を入金した状態にしておきます。
もうひとつ知っておきたいのが、みなし自己資金という考え方です。創業前に自費で取得した資格や、購入した設備・備品、テストマーケティングにかけた費用などは、一定の範囲で自己資金として評価されることがあります。子ども向けスクールの場合、指導者資格の取得費用、体験レッスンを試験的に開催したときの会場費や広告費、先に購入した器具や教材などが該当し得ます。領収書は必ず保管しておいてください。
STEP4.売上計画を「コマ数×定員×月謝」で組み立てる
スクール業の売上は、構造的に上限が決まっています。指導者の人数と週あたりのレッスン枠、1コマあたりの定員、月謝。この3つを掛け合わせた数字が、その教室で理論上到達できる売上の天井です。事業計画書では、この天井に対して何割の稼働を、いつまでに達成する想定なのかを説明することになります。
ここで数字の根拠になるのが、現場での経験です。前職の教室で1コマあたり何人を見ていたか、指導者1人が無理なく持てるコマ数はどれくらいか、体験レッスンから入会につながる割合はどうだったか。指導歴のある方は、この部分を具体的に語れる強みがあります。
逆に弱点になりやすいのが、経営そのものの未経験です。未経験を補う方法として「同業のメンターから定期的に助言を受ける」「経理や専門技術を業務委託でプロに任せる」といった対策が挙げられることがありますが、これらは経営への実質的な関与としては弱く、有効なカバー策とは言えません。事業経験者を役員として迎えるなど、事業運営に直接関わる体制を整えるほうが説明の説得力は上がります。
なお審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。判断材料はこの2つに限られるわけではなく、経験や資金使途、面談での説明内容なども含めて総合的に見られます。
💬 執筆者の小峰から一言
金融機関側から見ると、創業融資は決算書を見ないもの、という理解は正確ではありません。新しく設立した会社でも、一期でも決算が締まっていればその決算書は確認されますし、代表の方が別に会社を経営していれば、そちらの決算書も対象になります。手元に決算があるなら、内容を自分の言葉で説明できるところまで整理しておくと話が進みます。
STEP5.書類を揃えて申し込む
申込みに向けて用意するのは、創業計画書、自己資金を確認できる資料、設備の見積書、本人確認書類などが中心です。設備資金を申し込む場合は、床工事や音響機器、器具類の見積書が金額の根拠になります。
スケジュールの目安は、書類提出後おおむね3週間から1か月です。ただし創業計画書を書き上げ、見積書を集める準備期間を含めると、申請準備に1か月、審査・実行に1か月、合計で2か月程度を見ておくと安全です。子ども向けスクールは、新学期や進級のタイミングに入会が集中する業態ですから、開講日から逆算して、いつまでに資金が手元にある必要があるかを先に決めておくことをお勧めします。
申込み前のチェックリスト
- 必要資金を設備資金と運転資金に分け、それぞれの金額を出したか
- 設備の見積書を、実際に発注する予定の業者から取得したか
- 自己資金を、面談時点で口座に確認できる状態にしたか
- みなし自己資金になり得る支出の領収書を保管しているか
- 売上計画を、コマ数・定員・月謝の3要素から組み立てたか
- 経営面の体制を、事業運営に直接関わる形で説明できるか
- 開講予定日から逆算して、資金が必要になる時期を決めたか
よくある質問
Q. 自己資金は面談時点で全額入金しておくべきですか
A. はい、原則として面談時点で口座に確認できる形にしておきます。
Q. 一度審査に落ちると、次回の審査に影響しますか?
A. 日本政策金融公庫は個人信用情報機関に加盟していますが、審査に落ちたこと自体が信用情報に記録されることはありません。一方で、公庫内には審査に落ちた記録が残ります。そのため次の審査では、落ちたことを考慮に入れた形になるため、慎重に扱われる可能性があります。
Q. 否決された直後にすぐ再申請してもよいですか?
A. 原因を潰さずに再申請しても、結果は変わりません。自己資金不足、事業計画の説得力不足、業界未経験への対策不足など、否決の理由を具体的に特定し、そこを改善したうえで再申請することが必要です。
まとめ
子ども向けスクールの開業融資は、実技系ならではの設備投資と、月謝制で徐々に立ち上がる売上という2つの特徴を、どう資金計画に落とし込むかが軸になります。必要資金を設備と運転に分け、制度を決め、自己資金を確認できる形にし、売上計画を3つの要素から組み立て、書類を揃える。この順番で進めれば、創業計画書に書くべき中身も自然に埋まっていきます。
本記事の数字・条件は執筆時点の公表情報にもとづくものです。利率や制度の内容は変更されることがあり、実際の融資可否や利率引下げの適用可否は個別の審査で決まります。判断に迷う部分は、申請先や専門家にご相談ください。
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融資を受けるには何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























