
急速冷凍機の導入で使える飲食店向け補助金|目的別の選び方と申請前の注意点
業務用の急速冷凍機は、能力や設置条件によって数十万円から数百万円まで幅があります。「補助金で買えないか」と調べ始めた飲食店オーナーの方が最初に戸惑うのが、検索して出てくる記事に並んでいる制度名です。ものづくり補助金、事業再構築補助金、省エネ補助金——名前は聞いたことがあっても、自分の店がどれに当てはまるのかが分かりません。
ここには2つの落とし穴があります。ひとつは、2026年度に制度の枠組みそのものが変わっていて、古い制度名のまま解説している記事がまだ多いこと。もうひとつは、制度を一覧で並べるだけでは「自分はどれか」が決まらないことです。急速冷凍機は、同じ機械を買うのでも何のために冷凍するのかで使える制度が分かれます。
この記事では、2026年8月時点の公募要領をもとに、目的別にどの制度が土俵になるのかと、申請そのものが成立しなくなる注意点を整理します。
2026年度は「ものづくり補助金」という名前の制度がありません
まず前提の確認です。2026年度(令和8年度)から、これまで別々だった「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」は統合され、公募要領上の正式名称は新事業進出・ものづくり商業サービス補助金になりました。制度の中身は枠に分かれていて、飲食店の設備投資で関係してくるのは次の2つです。
- 革新的新製品・サービス枠(新製品・新サービスの開発を伴う投資)
- 新事業進出枠(既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出)
ですから「ものづくり補助金で急速冷凍機を買いました」という数年前の事例記事を読むときは、制度名も金額も現行のものに読み替える必要があります。第1回公募は2026年6月29日に始まり、申請の締切は2026年9月30日18時、採択発表は2026年12月頃の予定です。制度や金額は改定されますので、実際の申請前には必ず最新の公募要領をご確認ください。
急速冷凍機の「使いみち」で土俵が変わります
ここが制度選びの分かれ道です。急速冷凍機の導入目的は、大きく2つのルートに分かれます。
ルートA:自店のロスを減らす・仕込みを平準化する
ランチのピークに合わせた仕込みの山を平らにしたい、売れ残りの廃棄を減らしたい、というように、いま回している店舗業務の中で効率を上げるのが目的のケースです。この場合の土俵は、中小企業省力化投資補助金(一般型・カタログ注文型)と、小規模事業者持続化補助金になります。
逆に、革新的新製品・サービス枠はこのルートには合いません。同枠は「単なる設備・システム導入、既存製品・サービスの生産プロセス改善」を対象外としているためです。既存の仕込み工程を効率化するだけの計画では、審査の入口で外れてしまいます。
ルートB:冷凍商品を作って店外に売る
看板メニューを冷凍商品にして通販で売る、卸に出す、小売店に置いてもらう——という新しい売り方を立ち上げるのが目的のケースです。この場合は、新事業進出枠か革新的新製品・サービス枠が土俵になります。
どちらを選ぶかは計画の主役で決まります。「これまで店内でしか出していなかったものを、新しい市場に持っていく」ことが主役なら新事業進出枠、「冷凍でしか実現できない品質・商品そのものを開発する」ことが主役なら革新的新製品・サービス枠が自然です。ただし新事業進出枠は判定が厳しく、既存事業と同一市場、既存製品の増産、単なる製法変更、単なるメニュー追加、単に商圏が違うだけ、といったものは「新事業進出」に該当せず対象外とされています。「冷凍にしただけ」では通りません。
制度別に見る、通る条件と外れる条件
それぞれの制度の数字と要件を、急速冷凍機の導入という視点で整理します。いずれも2026年8月時点の公募要領に基づく内容です。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠
- 補助上限は従業員規模別で、1〜5人が750万円、6〜20人が1,000万円、21〜50人が1,500万円、51人以上が2,500万円です。大幅賃上げ特例を適用した場合はそれぞれ850万円/1,250万円/2,500万円/3,500万円まで上がります。よく目にする「上限3,500万円」は、最大規模かつ特例適用時の最大値です
- 補助下限は100万円、補助率は中小企業者が2分の1、小規模企業・小規模事業者・再生事業者は3分の2です
- 設備投資が必須で、機械装置・システム構築費は単価10万円(税抜)以上のものが対象です
- 同業で既に相当程度普及している新製品・新サービスの開発は対象外です
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 新事業進出枠
- 補助上限は1〜20人が2,500万円、21〜50人が4,000万円、51〜100人が5,500万円、101人以上が7,000万円(大幅賃上げ特例適用時はそれぞれ3,000万円/5,000万円/7,000万円/9,000万円)です
- 補助下限が750万円と高く設定されています
- 補助率は中小企業者が2分の1(地域別最低賃金引上げ特例の適用時は3分の2)です
- 3つの枠のうち、この枠だけ建物費が対象になります。冷凍商品の製造スペースを整えるための改修を計画に含めたい場合は、この枠が現実的な選択肢になります。ただし建物の単なる購入・賃貸は対象外です
- 新規設立・創業後1年に満たない事業者は対象外で、最低1期分の決算書が必要です
中小企業省力化投資補助金(一般型)
- 補助上限は1億円。単価50万円(税抜)以上の機械装置等を最低1つ入れることが要件です
- ただし、単に汎用設備を単体で導入する事業は対象外とされています。急速冷凍機を1台だけ買う計画は、ここで外れやすい代表例です
- 対象になるのは「オーダーメイド性のある設備」です。省力化に資する汎用設備を複数組み合わせてより高い省力化効果を生む場合や、導入環境に応じて周辺機器・構成する機器の数・搭載する機能等が変わる場合は、汎用設備でもオーダーメイド設備とみなされます
- 3〜5年の事業計画で労働生産性を年平均4.0%以上伸ばす計画が必要です。従業員0名の事業者は対象外になりやすい点にもご注意ください
中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)
- 補助上限は1,500万円(大幅賃上げ計画を盛り込む場合)です
- カタログに登録された省力化製品を導入することが前提で、販売事業者と共同で申請する必要があります(単独申請は原則不可)。導入したい機種がカタログに載っているかを先に確認する順番になります
- 労働生産性を年平均3.0%以上向上させる計画が必要で、未達時には減額規定があります
小規模事業者持続化補助金
- 補助率は3分の2、補助上限は基本50万円です。インボイス特例で50万円、賃金引上げ特例で150万円が上乗せされ、両方の要件を満たすと最大250万円になります
- 対象は小規模事業者に限られます。商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)は常時使用する従業員5人以下、宿泊業・娯楽業と製造業その他は20人以下です。会社役員・個人事業主本人・日雇い等はカウントしません
- 「販路開拓」が主題の制度です。急速冷凍機は機械装置等費として計上を検討することになりますが、あくまで販路開拓の取組とセットで説明できるかが問われます
- 商工会・商工会議所の支援を受けて進める設計で、事業支援計画書(様式4)の発行が必要です
申請そのものが成立しなくなる4つの注意点
制度を選べても、次の4点を見落とすと申請が組み立たなくなります。競合記事ではあまり触れられていない部分です。
1つ目は、補助下限額です。新事業進出枠は補助下限が750万円ですから、補助率2分の1で計算すると総事業費で1,500万円規模の投資が必要になります。急速冷凍機1台と周辺工事だけでは届かないことが多く、その場合は下限100万円の革新的新製品・サービス枠のほうが現実的です。上限額だけを見て枠を選ぶと、この下限で足元をすくわれます。
2つ目は、省力化投資補助金(一般型)のオーダーメイド性です。前述のとおり、汎用設備を単体で導入するだけでは対象外です。真空包装機や自動計量機、庫内温度の管理システムなどと組み合わせて一連の工程として設計できるかどうかが分かれ目になります。
3つ目は、交付決定前の発注・契約・購入は対象外という共通ルールです。採択の通知が来ただけでは事業を始められません。急速冷凍機は納期が読みにくい機種もあり、「間に合わないから先に発注しておこう」としてしまうと、その分は全額自己負担になります。
4つ目は、冷凍商品を店外で売る場合の営業許可です。2021年6月の食品衛生法改正で営業許可の区分が再編され、そうざいに該当する食品の冷凍品を製造する場合は「冷凍食品製造業」、食肉処理業や菓子製造業などを併せて行う場合は「複合型冷凍食品製造業」といった許可が必要になります。都道府県知事が定める施設基準もありますので、飲食店営業許可を持っているだけでは足りません。補助金の事業計画は、この許可が取れる前提で組む必要があります。まずは管轄の保健所に、設備の配置図を持って事前相談されることをおすすめします。
締切から逆算してスケジュールを組む
2026年8月時点で公表されている日程は次のとおりです。
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 第1回:締切2026年10月31日18時、採択発表2027年1月頃
- 小規模事業者持続化補助金 第20回:申請受付開始2026年11月5日、締切2026年12月15日17時
持続化補助金でとくに注意したいのが、商工会・商工会議所が発行する事業支援計画書(様式4)の受付締切が2026年12月4日に設定されていることです。この日を過ぎるといかなる理由でも発行されないため、申請締切の11日前に実質的なデッドラインが来ます。窓口も混み合いますので、早めに相談枠を押さえておくのが安全です。
また、いずれの制度も電子申請でGビズIDプライムが必要です。アカウントの取得には日数がかかりますので、機種選定と並行して進めてください。事業計画は申請者自身が作成することが求められており、外部への丸投げは不採択や交付取消の対象になります。
よくある質問
Q. 中古の急速冷凍機でも補助対象になりますか。
制度によって扱いが異なります。小規模事業者持続化補助金では中古品は条件付きで、50万円(税抜)未満かつ2者以上の見積が必要とされています。見積を取る前に、対象になる条件を公募要領で確認しておくと手戻りがありません。
Q. リースでも使えますか。
小規模事業者持続化補助金には借料(機器・設備等のリース・レンタル料)という経費区分があります。一方で、設備を取得して資産として管理する前提の制度もあり、扱いは制度ごとに違います。リース前提で進めるなら、その時点で制度の選択肢が絞られると考えておいてください。
Q. 補助金があれば手元資金は要らないのでしょうか。
補助金は原則として後払いです。交付決定を受けてから自社で発注・支払いを済ませ、実績報告を経て入金されます。つまり一度は投資額の全額を用意する必要があります。手元資金が薄い状態で設備投資を進める場合は、融資とあわせて資金繰りを設計しておくと安心です。
まとめ
急速冷凍機の補助金選びは、機械のスペックからではなく「何のために冷凍するのか」から始めるのが近道です。自店のロス削減や仕込みの平準化が目的なら省力化投資補助金や小規模事業者持続化補助金、冷凍商品を作って店外に売るのが目的なら新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の各枠、という分かれ方になります。
そのうえで、補助下限額に届くか、オーダーメイド性を示せるか、交付決定前に発注していないか、営業許可の見通しが立っているか——この4点を早い段階で潰しておくと、申請の直前で計画を組み直す事態を避けられます。制度は毎年見直されますので、数字と日程は必ず最新の公募要領でご確認ください。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























