
赤字決算からの資金調達|検討できる融資制度と相談前の準備
「今期は赤字決算になってしまった。この状態で融資の相談をしても、どうせ断られるのでは」——資金繰りに悩む経営者からよく聞かれる不安です。結論からいえば、赤字決算であることが即座に融資不可を意味するわけではありませんが、金融機関が慎重になりやすいのも事実です。大切なのは「赤字だから無理」と決めつけて相談自体をあきらめないことと、赤字の中身を金融機関に伝わる形で整理しておくことです。
この記事では、赤字決算の会社が融資を検討するときに金融機関がどこを見ているか、赤字でも検討余地がある資金調達手段、相談前に準備しておきたいことまで、中小企業の経営者向けに整理します。制度・金利等の数字は執筆時点(2026年7月)の情報のため、実際の申請前には必ず最新の公式情報で確認してください。
赤字=一律で融資NGではない|金融機関が見る3つのポイント
金融機関は「黒字か赤字か」という結果だけでなく、赤字の中身と、今後の返済能力を見ています。特に次の3点が判断材料になりやすいポイントです。
1. 赤字の性質(先行投資型か、一時的か、構造的か)
同じ赤字でも、内容によって金融機関の受け止め方は変わります。
- 先行投資型の赤字:新規出店や設備投資など、将来の売上拡大を見込んだ支出が先行して生じた赤字。投資の効果が数字で見通せれば、前向きに評価されやすい
- 一時的な赤字:取引先の倒産、災害、感染症の流行など、外的要因による一時的な業績悪化。原因が特定でき、今後の回復見込みを説明できるかがポイント
- 構造的な赤字:売上の減少傾向が続いている、固定費が売上に対して重すぎるなど、事業構造そのものに起因する赤字。改善計画の具体性がより強く問われる
自社の赤字がどのタイプに近いかを整理し、それを裏づける数字とあわせて説明できる状態にしておくことが、最初の一歩になります。
2. 資金繰り表・黒字化計画で「返せる見込み」を示せるか
赤字であっても、今後の資金繰り表や事業計画で「いつ、どのように黒字化・返済原資を確保するか」を具体的に示せると、金融機関の判断材料が増えます。売上の見込みだけでなく、経費削減や事業の見直しなど、黒字化に向けた具体的な行動とセットで説明できるかが重要です。
3. 担保・保証で信用力を補完できるか
不動産などの担保を用意できる場合、無担保での申し込みより検討してもらいやすくなる場合があります。担保の有無だけで結論が決まるわけではありませんが、信用力を補完する材料の一つになります。
赤字決算でも検討余地がある資金調達手段
赤字だからといって選択肢がゼロになるわけではありません。次のような手段は、赤字企業でも検討の余地があります。
日本政策金融公庫の各種融資制度
日本政策金融公庫は政府系金融機関という性質上、民間金融機関では対応が難しいケースにも積極的に取り組むのが特徴です。取引先の倒産や災害、経済情勢の変化など外的要因で一時的に業績が悪化している事業者向けに、経営の安定を目的とした融資制度も用意されています。自社の赤字が外的要因による一時的なものだと説明できる場合は、まず公庫に相談してみる価値があります。制度の名称・要件・限度額は変更されることがあるため、相談時に最新の情報を確認してください。
マル経融資(小規模事業者経営改善資金)
商工会議所・商工会等の経営指導を受けることを要件に、小規模事業者の経営改善を目的とした融資制度です。適用利率は特別利率Fで、金利は一律2.60%(固定・2026年6月1日現在)と設定されています。経営改善を目的とした制度のため、業績が厳しい局面にある小規模事業者との相性が比較的よい選択肢の一つです。商工会議所・商工会での経営指導が前提になる点は事前に確認しておきましょう。
制度融資(自治体・金融機関・信用保証協会の三者連携)
制度融資は、自治体・金融機関・信用保証協会の三者が連携する仕組みです。融資を実行するのは民間金融機関で、信用保証協会が保証を付け、自治体が利子補給や預託などで関与します。信用保証協会の保証が付くことで、金融機関単独では慎重になりやすい先でも、相談の土台に乗りやすくなることがあります。
ファクタリング(融資以外の選択肢)
売掛金を早期に現金化するファクタリングは、審査で重視されるのが主に売掛先の信用力であるため、利用者自身が赤字決算かどうかの影響を受けにくい資金調達方法です。ただし融資とは仕組みが異なり、手数料が発生する点には注意が必要です。急な資金繰りの手当てとして、融資の代替・つなぎとして検討されることがあります。
相談前に整理しておきたい3つのこと
- 赤字の理由を数字で説明できるようにする:先行投資・一時的要因・構造的要因のどれに近いか、根拠となる資料(試算表・取引先の状況など)をそろえる
- 資金繰り表・黒字化計画を用意する:今後の入出金の見通しと、黒字化・返済原資確保の道筋を具体的に示す
- 複数の相談先を早めに検討する:日本政策金融公庫、制度融資、取引のある金融機関など、赤字の性質に合いそうな相談先を早めに洗い出しておく
資金繰りが厳しくなってから慌てて動くと、準備が不十分なまま相談することになりがちです。赤字の兆候が見えた早い段階で、資金繰り表を作りながら相談先を検討しておくと、選択肢を狭めずに動けます。
過去に融資を断られたことがある場合はどうなる?
「以前、審査に落ちたことがあるので、もう相談しづらい」と感じる経営者もいますが、まず知っておきたいのは次の点です。日本政策金融公庫は個人信用情報機関に加盟していますが、審査に落ちたこと自体が信用情報に記録されることはありません。一方で、公庫内部には審査に落ちた記録が残るため、次回の審査では過去の経緯を踏まえて慎重に扱われる可能性があります。「二度と借りられなくなる」といった話ではなく、前回の否決理由を具体的に特定し、そこを改善したうえで相談し直すことが大切です。
よくある質問(FAQ)
Q. 赤字が2期続いていても融資を受けられる可能性はありますか?
赤字の期間だけで一律に判断されるわけではありません。赤字の性質や、今後の黒字化に向けた具体的な計画を示せるかどうかが重要な判断材料になります。まずは日本政策金融公庫や取引金融機関に相談し、状況を具体的に説明してみることをおすすめします。
Q. 担保が無くても相談できますか?
無担保での相談自体は可能です。担保があると信用力を補完しやすくなりますが、無担保でも事業計画や資金繰り表の具体性によって検討してもらえる余地はあります。
Q. 銀行に断られたら、他の方法はありませんか?
制度融資や日本政策金融公庫への相談、売掛金があればファクタリングの検討など、複数の選択肢があります。どの手段が自社の状況に合うかは個別事情によって異なるため、専門家に相談しながら整理することをおすすめします。
まとめ
赤字決算は融資審査においてマイナス材料になりやすいものの、それだけで一律に融資を受けられなくなるわけではありません。赤字の性質(先行投資型・一時的・構造的)を整理し、資金繰り表や黒字化計画で「返せる見込み」を具体的に示せるかどうかが鍵になります。日本政策金融公庫の各種制度、マル経融資、制度融資、ファクタリングなど、赤字決算でも検討できる選択肢は複数あります。資金繰りが厳しくなる前の早い段階で、専門家に相談しながら準備を進めましょう。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

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中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























