
6次化の設備投資は補助金をどう組み合わせるか|新事業進出枠と省力化投補助金の使い分けと、1次産業の事業者がつまずく3条件
6次産業化で加工場や販売設備を整えようとすると、まず「どの補助金を使えばいいのか」で迷います。国の6次産業化専用の交付金だけを探していると、選択肢が見えにくくなります。この記事では、6次化の設備投資を考えている農家・漁業者の方に向けて、補助金の組み合わせ方と申請前に確認しておきたい条件を整理します。
結論:自治体の6次化関連補助金と、国の中小企業向け補助金2つを組み合わせて考える
6次化の設備投資は、次の3つの入口で考えると整理しやすくなります。
- 自治体の6次化関連補助金(地域の制度です。内容は自治体ごとに異なります)
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 新事業進出枠(加工や販売を「新しい事業」として設備投資する場合)
- 中小企業省力化投資補助金(一般型)(既存の選果・包装・加工の工程で人手を減らす場合)
設備ごとに「どの制度に当てるか」を分けて計画しておくと、申請の段階で迷いにくくなります。国の他の補助金と同じ経費を重ねて計上すると、補助の対象外になります。
国の6次産業化専用の交付金はどうなったのか
国の6次産業化専用の交付金の扱いは、年度ごとに変わります。特定の年度の状況をそのまま前提にすると、申請時点とずれてしまうことがあります。最新の公募要領や、所管省庁の情報で確認してください。
新事業進出枠:加工・販売を「新しい事業」として申請する
新事業進出枠は、既存事業とは違う新しい市場や、高い付加価値をもつ事業への進出を支える枠です。加工品づくりや、直売・ECといった販売の仕組みを新しく作る計画が、ここで検討の対象になります。
「新事業」と認められるかの判断の分かれ目
公募要領では、既存の製品と同じ市場で行うもの、既存製品の増産、単なるメニューの追加、商圏が違うだけのものは、新事業進出に当たらないとされています。
自分の計画で確かめるなら、「いまの直売先に加工品を出すだけなのか」「これまで取引のなかった顧客層を狙うのか」を書き分けてみてください。前者は既存市場の延長に見えやすく、後者は新しい市場として説明しやすくなります。どちらに当たるかは審査で判断されるため、事前に断定はできません。
建物費と機械装置、どちらを中心にするか
新事業進出枠では、機械装置・システム構築費か建物費のどちらかが、対象経費に必ず含まれている必要があります。建物費の対象は、加工施設や販売施設の建設・改修です。建物を単に購入したり賃貸したりする経費は対象外です。建物を建てる場合は、入札または相見積もりが必要とされています。
機械装置だけで組むのか、加工場の建設・改修も含めるのかで、準備する見積もりの種類が変わります。どちらの場合も、交付決定の前に発注・契約・購入した経費は対象外になります。設備を先に買ってしまうと補助の対象から外れるため、発注の順番を先に決めておいてください。
新事業進出枠は、創業1年未満の事業者は対象外です。最低1期分の決算書が必要になります。起業準備中の方は、この条件を最初に確かめてください。
※出典:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 第1回公募要領(1.3版・令和8年9月)。上限額や補助率は従業員規模や枠によって変わるため、最新の公募要領で確認してください。
💬 執筆者の三浦から一言
補助金の計画書は、事業の中身を自分の言葉で説明できるかどうかで、審査の受け止め方が変わります。加工品を作る工程と、誰にどう売るのかを、設備の名前を抜きにして一度紙に書いてみてください。そこで書けない部分が、そのまま申請で詰まる場所になりやすいです。計画を外部に任せきりにすると、中身と申請書がずれやすくなります。
中小企業省力化投資補助金(一般型):既存の工程で人手を減らす
中小企業省力化投資補助金(一般型)は、選果・包装・加工など、既存の工程で人手を減らすための設備投資が中心になります。新しい商品を作るための投資ではなく、今の作業をどう省力化するかが主題です。
この制度では、土地や建物の取得費、簡易建物(ビニールハウス、コンテナ、ドームハウスなど)の購入費が対象外です。自動車などの車両の購入費と、中古品の購入費も対象外になります。設置場所の整備工事や基礎工事の費用も対象になりません。加工場の床や基礎をどこまで補助の対象にするかは、計画の段階で切り分けておく必要があります。
※出典:中小企業省力化投資補助金(一般型)第8回公募要領(2026年8月)。
1次産業の事業者が補助金で最初につまずく3つの条件
1次産業の事業者が補助金の申請で最初につまずくのは、次の3点です。
1.従業員:応募時点で1人以上
応募の時点で従業員が0名の事業者は対象外です。ここでいう従業員は常勤の従業員を指します。代表取締役や役員、個人事業主本人、専従者は、常勤従業員の数には含めません。従業員を1人以上確保できているかを、まず確認してください。
2.対象外の経費:土地・建物・車両・中古
省力化投資補助金(一般型)では、土地や建物の取得費、簡易建物の購入費、車両の購入費、中古品の購入費が対象外です。新事業進出枠では、建物は建設・改修が対象で、単純な購入や賃貸は対象外になります。機械装置については、3者以上の古物商から型式や年式を明記した相見積もりを取れば、中古設備も対象になる場合があります。
3.後払い:融資とセットで資金計画を組む
補助金は、事業が完了したあとに支払われるのが基本です。設備の代金は先に払う必要があるため、事業計画の段階で、支払いのタイミングと資金の手当てを一緒に組み込んでおいてください。融資を含めた資金計画の立て方は、事業計画を作る段階で整理するとよいでしょう。
自治体の6次化関連補助金との併用
自治体の6次化関連補助金は、地域の加工施設や販路づくりを支える制度として用意されていることがあります。国の補助金と自治体の補助金を組み合わせる場合は、同じ経費を両方に計上しないように、設備ごとに分けて計画します。どの制度が使えるかは、お住まいの自治体の担当窓口で確認してください。
よくある質問
個人で農業を営んでいても申請できますか
個人事業主でも、中小企業者の要件や、枠ごとの要件を満たせば検討の対象になります。ただし、1次産業の事業をどう扱うかは、枠と公募要領の規定をもとに個別に判断されます。申請前に最新の公募要領で確認し、判断が難しい場合は窓口に相談してください。
加工場や直売所を作るとき、許認可は必要ですか
加工や販売を始めるには、事業の内容によって許認可や届出が必要になることがあります。どの許認可が必要かは、事業の内容と管轄の窓口によって変わります。手続きの詳細は、行政書士などの専門家や管轄の窓口に確認してください。補助金の申請とは別に、事業を始める前の段取りとして考えておくと安心です。
加工が「新事業」と認められるかは、誰が判断しますか
審査で判断されます。公募要領の基準を、事業計画の内容に当てはめて評価されるため、申請前に認められるかどうかを断定することはできません。計画を書くときは、既存の市場とどう違うのかを具体的に説明できるようにしておいてください。
まとめ
6次化の設備投資は、自治体の6次化関連補助金と、国の中小企業向け補助金2つを組み合わせて考えるのが基本です。加工・販売を新しい事業として計画するなら新事業進出枠、既存の工程の人手を減らすなら省力化投資補助金(一般型)が候補になります。どちらも、従業員の要件、対象外の経費、後払いの仕組みを先に確認しておくと、申請の準備を進めやすくなります。上限額や要件は年度や公募回で変わるため、最新の公募要領と、お住まいの自治体の窓口で確かめてから申請を進めてください。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























