
手術室を整えたい動物病院が最初に確認したい、補助金の対象になる投資の形
手術室を整えるときの見積書には、性質の違うものが同時に並びます。無影灯や麻酔器、生体モニター、滅菌器といった機械。壁や床、扉、空調まわりの内装工事。麻酔記録や電子カルテと連携させるソフト。院内では一続きの工事として進みますが、補助金はこれらを一つずつ見ます。
ここで先に切り分けておきたいのが工事の扱いです。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領は、建物の単なる購入等を対象外として挙げています。手術室の整備で建物側の工事が大きな割合を占める場合、その部分は補助の対象から外れる前提で資金計画を組むことになります。
残るのは機械とソフトの部分です。そして、この機械をどう並べるかで、使える制度が変わります。
中小企業省力化投資補助金(一般型)は「組み合わせ」を求める
既存の診療を回すための整備であれば、まず候補に挙がるのが中小企業省力化投資補助金(一般型)です。補助上限は1億円で、人手不足や工程のムダを減らすために、事業内容やレイアウトに合わせて設備やシステムを入れる投資を支援する制度です。
この制度には、設備投資の要件が2段構えで置かれています。一つ目は金額で、単価50万円(税抜)以上の機械装置等を最低1つ入れる必要があります。手術室の機器であれば、この線は超えるものが多いはずです。
問題は二つ目です。対象になるのは「オーダーメイド性のある設備」で、単に汎用設備を単体で導入する事業は対象外と定められています。単価50万円以上という条件を満たしていても、それだけでは足りません。
ではオーダーメイド性はどう示すのか。制度側は、次のいずれかに当てはまれば汎用設備でもオーダーメイド設備とみなす、という判定基準を置いています。
- 省力化に資する汎用設備を複数組み合わせることで、より高い省力化効果や付加価値を生み出す場合
- 事業者の導入環境に応じて、周辺機器や構成する機器の数、搭載する機能等が変わる場合
ここが手術室整備と相性のよいところです。機器を1台だけ入れ替える計画は、この基準から外れやすくなります。一方で、手術室の整備はもともと複数の機器を同時に入れ、院内の広さや動線に合わせて構成を変える形になりがちです。バラバラに見える見積の中身が、そのままオーダーメイド性を説明する材料になります。
あわせて、計画で約束する数字も確認しておきます。この制度は3〜5年の事業計画で労働生産性を年平均4.0%以上伸ばす計画が求められ、賃上げ目標も要件です。未達の場合は達成率に応じて返還が発生しうる設計になっています。上限額の大きさだけで選ぶと、この部分が後から効いてきます。
新しい手術を始めるなら革新的新製品・サービス枠、ただし線引きがある
これまで院内でできなかった手術を始めるために手術室を整える、という計画であれば、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠が視野に入ります。自社の技術力等を活かして顧客等に新たな価値を提供する新製品・新サービスを開発する取組を支援する枠です。
ただし、この枠には外れる形が明記されています。単なる設備・システム導入は対象外です。既存製品・サービスの生産プロセス改善も、この枠では対象外とされています。そして、同業で既に相当程度普及している開発も対象外です。すでに周辺の動物病院で広く行われている手術を自院でも始める、という説明の仕方では、この3つ目に当たる可能性があります。
金額まわりの条件も、省力化投資補助金とは違います。補助下限は100万円で、機械装置・システム構築費は単価10万円(税抜)以上です。補助上限は従業員規模で分かれ、1〜5人であれば750万円、6〜20人で1,000万円となっています。補助率は中小企業者が2分の1、小規模企業・小規模事業者は3分の2です。
計画で約束する数字は、付加価値額が年平均4.0%以上、一人当たり給与支給総額が年平均3.5%以上、事業場内最低賃金が毎年地域別最低賃金プラス30円以上の水準です。いずれも未達の場合は返還の対象になります。
手術室の整備で対象から外れやすい3つの形
制度を選ぶ前に、外れる形を先に潰しておくと計画が組みやすくなります。手術室の整備でよく問題になるのは次の3つです。
1つ目は、機械を1台だけ入れ替える計画です。省力化投資補助金(一般型)では、汎用設備の単体導入が対象外と明記されています。金額の条件を満たしていても、組み合わせや構成の説明がないと土俵に乗りません。
2つ目は、建物側の工事が中心になっている計画です。前述のとおり建物の単なる購入等は対象外で、内装や躯体に近い部分は補助の外に出ます。手術室を「部屋として作る」比重が大きいほど、補助対象として残る金額は小さくなります。
3つ目は、交付決定の前に発注してしまうことです。交付決定前の発注・契約・購入は対象外と定められています。機器の納期が読めないと先に押さえたくなりますが、ここは制度の手続きの順番が優先します。国や公的制度との二重受給も同様に対象外です。

💬 執筆者の三浦から一言
「医療は補助金の対象外と聞いた」と、申請前に諦めてしまう相談を受けることがあります。これは保険適用診療にかかる経費を対象外とする規定の話で、公的医療保険を使う人の医療機関に向けたものです。動物の診療はその枠組みの外にあるため、この規定を理由に外れる立場ではありません。判断が分かれるのは制度ごとの対象要件の側です。
申請の前に決めておきたいこと
制度の見当がついたら、次に確認するのは日程です。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募は、2026年6月29日から始まり、締切は2026年10月30日18時、採択発表は2027年1月頃とされています。電子申請にはGビズIDプライムが必要で、取得には時間がかかります。
もう一つ、公募要領には事業計画は申請者自身が作成することが明記されており、外部への丸投げは不採択や取消の対象とされています。支援を受ける場合も、院内で数字と方針を持っておく前提になります。
まとめ
動物病院の手術室整備で補助金を使うなら、出発点は「どの機械を買うか」ではなく「どんな形の投資として説明するか」です。既存の診療を回すための整備であれば中小企業省力化投資補助金(一般型)が候補になり、そこでは機器を組み合わせて構成を変えることがオーダーメイド性の説明材料になります。新しい手術を始める計画であれば革新的新製品・サービス枠が視野に入りますが、単なる導入や同業で普及済みの取組は外れます。
いずれの制度でも、建物側の工事は対象外に出やすく、交付決定前の発注も対象になりません。見積を受け取った段階で、機械・工事・ソフトの3つに分けて眺めてみてください。補助金の話は、そこから具体的になります。制度の要件は改定されるため、申請前には最新の公募要領で確認してください。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























