
最低賃金の引き上げで利益が圧迫される中小企業へ|賃上げ原資のつくり方と活用できる助成金
最低賃金は近年、毎年のように引き上げられています。従業員のためには望ましい一方で、価格転嫁が進みにくい中小企業や個人事業主にとっては「人件費だけが上がり、利益が削られる」という切実な悩みになっています。「このままでは経営がもたない」と感じている経営者の方も少なくないはずです。
この記事では、最低賃金の引き上げで経営が苦しくなっている中小企業が、何から手をつけるべきか、そして活用できる助成金にはどんなものがあるかを、実務的な視点で整理します。なお、最低賃金額や助成金の要件は改定が多いため、本記事は執筆時点の制度をもとにした考え方の解説です。最新の金額・要件は必ず公式情報で確認してください。
最低賃金の引き上げが中小企業の経営を圧迫する理由
最低賃金が上がると、その水準で働くパート・アルバイトの時給を一律に引き上げる必要が出てきます。さらに、最低賃金近辺の従業員だけを上げると既存社員との差が縮まり、結果として全体の賃金バランスを取るための「玉突きの賃上げ」が発生しがちです。
大企業のように価格へ転嫁しにくい下請け・サービス業では、この人件費上昇分がそのまま利益の減少につながります。まずは「自社のどの層に、どれだけの影響が出るのか」を試算し、対策の優先順位を決めることが出発点になります。
中小企業がとるべき3つの対策
1. 賃上げ原資を生み出す(生産性向上・価格転嫁)
賃上げに対応する根本策は、賃上げの原資を稼ぎ出せる体質に変えることです。具体的には、業務の標準化やツール導入による生産性向上、そして適正な価格転嫁です。国も「価格交渉促進月間」などを通じて取引価格の見直しを後押ししており、原価上昇分を取引先と交渉することは正当な経営行動です。
2. 助成金を活用してコストを抑える
賃上げや設備投資、人材育成にあわせて使える助成金があります。要件を満たせば返済不要の資金を得られるため、賃上げ対応のコストを実質的に軽減できます。代表的な助成金は後述します。
3. 採用・定着の仕組みで「少人数でも回る」体制へ
人件費の上昇局面では、「人を増やす」よりも「今いる人に長く活躍してもらう」ほうが費用対効果は高くなります。採用にかけたコストは、早期離職が起きるたびに無駄になります。求人のミスマッチを減らし、入社後の定着を高めることが、結果的に人件費の最適化につながります。
とはいえ、「どこを変えれば採用が回り、定着が進むのか」を自社だけで見極めるのは簡単ではありません。採用・定着の現状診断から仕組みづくりまでを専門家に伴走してもらいたい場合は、次のサービスが参考になります。
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V-Spiritsの採用定着支援サービスでは、給与・条件の競合リサーチ、求人原稿の改善、応募後24時間以内の初動対応など、採用がうまくいく会社が実践している型を全国2,000社超の支援実績をもとに採用定着士が伴走で組み立てます。「なぜ採れないのか」「なぜ辞めるのか」を現場目線で診断し、5ステップで仕組み化します。
最低賃金の引き上げ対策に活用できる主な助成金
業務改善助成金
事業場内の最低賃金を一定額以上引き上げ、あわせて生産性向上に資する設備投資(機械・システム導入など)を行った中小企業に対して、その費用の一部が助成される制度です。「賃上げ+設備投資」をセットで考える際の中心的な選択肢になります。
キャリアアップ助成金
有期雇用のパート・アルバイトを正社員化したり、処遇を改善したりした場合に活用できる助成金です。定着率の向上や人材の戦力化とあわせて検討すると効果的です。
人材確保等支援助成金
雇用管理制度の整備や職場環境の改善を通じて、従業員の定着を図る取り組みを支援する助成金です。離職率の改善を目指す中小企業に向いています。
これらの助成金は、支給要件・対象・金額が年度ごとに見直されます。受給を前提に計画を立てる場合は、着手前に最新の要綱を確認し、計画段階から社会保険労務士などの専門家に相談すると、申請の取りこぼしを防げます。
よくある質問(FAQ)
Q. 価格転嫁が難しい業種ですが、何から始めればいいですか?
A. まずは自社の人件費負担の試算と、業務のムダの洗い出しから始めるのが現実的です。そのうえで、設備投資をともなう業務改善助成金などを使い、生産性向上と賃上げを同時に進める方法が検討できます。意外と聞くのが、社員の定着推進です。現在人が採りづらくなっており採用コストも上がり続けています。半年の求人掲載で100万円かかることも当たり前になっています。今いる人が長く働くことで採用コストを削減し、賃上げの原資にすることで、社員の定着を促しつつ満足度も上げ、全体のコストを下げることが可能です。
Q. 助成金と補助金は何が違いますか?
A. 厚生労働省系の「助成金」は要件を満たせば原則受給できるものが多く、経済産業省系の「補助金」は設備投資に使えるものが多くあります。また審査による採択が必要なものが中心です。賃上げ・雇用関連は助成金、設備投資による事業拡大は補助金、と整理すると考えやすくなります。
まとめ
最低賃金の引き上げは、もはや一時的な話ではなく、継続する経営前提として向き合う必要があります。打ち手は、(1)生産性向上と価格転嫁で賃上げ原資をつくる、(2)助成金でコストを抑える、(3)採用・定着の仕組みで人件費を最適化する、の3方向です。助成金の要件は変わりやすいため最新情報を確認しつつ、自社に合った組み合わせを早めに設計していきましょう。
この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP技能士。大正大学招聘教授(起業論、ゼミ等)
V-Spiritsグループ創業者。税理士法人V-Spiritsグループ代表。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「ベストセラー起業本」の著者。著書20冊、累計25万部超。経済産業省後援「DREAMGATE」で12年連続相談件数日本一。
【まるごと起業支援(R)・経営支援】
起業コンサル(事業計画+融資+補助金+会社設立支援)+起業後の総合サポート(経理 税務 事業計画書 融資 補助金 助成金 人事 給与計算 社会保険 法務 許認可 公庫連携 認定支援機関)など
【略歴】
経営者である父の元に生まれ、幼き頃より経営者になることを目標として過ごす。バブル崩壊の影響を受け経営が悪化。一家離散に近い貧婚状況を経験し、「経営者の支援」をライフワークとしたいと決意。それに役立ちそうな各種資格を学生時代を中心に取得。
同じく経営者であるメンターの伯父より、単に書類や手続を追求する専門家としてではなく、視野を広げ「ビジネス」の現場での経験を元に経営者の「経営そのもの」を支援できるような専門家を目指すようアドバイスを受け、社会人生活をスタート。
大手、中小、ベンチャー企業、会計事務所等で営業、経理、財務、人事、総務、管理職、経営陣等、ビジネスの「現場」での充実した修行の日々を送ったあと、2007年に独立。
ほかにはない支援スタイルが起業家・経営者に受け入れられ、数々の実績を残しています。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。
- 経済産業省「DREAM GATE」にて、面談相談12年連続日本一
- 補助金・助成金支援実績600件超
- ベストセラー含む起業・経営本20冊を出版(累計25万部超)
- 無料相談件数は全国から累計3,000件超
この記事を書いた人
坂井 優介(Yusuke Sakai)
起業コンサルタント® / 採用定着士 / 行政書士法人V-Spirits 補助者
1988年東京都生まれ。転勤族の父の影響で幼少期を愛知・長野・岩手・埼玉で過ごす。転入するたびに方言や文化の違いをからかわれつつも、1週間もあれば現地に溶け込む適応力を身につける。
大学在学中に公認会計士試験にチャレンジするも挫折し、アルバイト先だった埼玉の大手学習塾に就職。塾業界特有の過酷な労働環境の中でも10年間勤務を続けるが、成果を上げても給与が変わらない状況に限界を感じ、在職中に会計士試験に再挑戦。再び挫折するも、学んだ会計知識を活かせる職場を求めて転職活動を開始。2021年にV-Spiritsグループに参画し、2022年よりV-Spirits総合研究所の常務取締役に就任。
現在は、中小企業の経営者向けに補助金・助成金の支援から採用定着の仕組みづくりまで幅広く担当。「制度を使いこなす中小企業を増やす」をテーマに、現場に寄り添ったサポートを行っている。
役職:V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役 / 税理士法人V-Spirits 業務部長 / 社会保険労務士法人V-Spirits 業務部長
担当業務:経済産業省系補助金支援・厚生労働省系助成金支援・マーケティング・人事労務・採用定着支援




























