
創業融資で「〇〇さんが言っていた」を信じすぎると危ない理由
目次
よくある「誰かの成功談」の例
なぜ他人の融資話は鵜呑みにしてはいけないのか
創業融資は“個別案件”である理由
創業融資で大切なのは「基本事項の徹底」
よくある質問(FAQ)
1. よくある「誰かの成功談」の例
創業融資の相談を受けていると、必ずと言っていいほど以下のようなお話を聞きます。
「友人のAは公庫で1,000万円借りられたらしいです」
「アルバイトから独立して創業融資を通した人がいます」
「未経験業種でも大丈夫だったと聞きました」
「自己資金ゼロでもいけるって話を聞いたのですが…」
「一度断られても、二回目で通ったって人もいるみたいです」
これらの情報は、いずれも“完全な嘘”ではありません。事実としてそういうケースもあるでしょう。
しかし――結論から申し上げると、どれも正解であり、不正解でもあります。
2. なぜ他人の融資話は鵜呑みにしてはいけないのか
ズバリ言います。融資は人によって、まったく条件が違う“オーダーメイド審査です。
つまり、「他人ができた=自分もできる」とは限りません。
それはまるで、以下のような誤解と同じです。
「あの人がマラソン完走できたから、私もぶっつけ本番で完走できるはず」
→ 経験もトレーニングも違えば、結果も違って当然ですよね。
融資においても同様です。
これまでの職歴や経験
自己資金の有無と金額
創業計画の具体性と実現可能性
家計状況や信用情報
こうした**“見えない背景”**が評価されているため、表面的な情報だけを信じて行動するのは危険なのです。
3. 創業融資は“個別案件”である理由
創業融資とは、あくまで「あなたという経営者」と「あなたのビジネス」を信じてもらう融資です。
同じ金額、同じ業種でも、提出する事業計画書の内容や、面談での受け答え、創業への想いなどによって、審査結果は大きく変わります。
たとえば…
友人は自己資金100万円+飲食店経験10年で1,000万円調達
自分は自己資金30万円+未経験だと、同じ金額を通すのは難しい
このような違いは当然のこと。むしろ、“他人と比べすぎない”ことこそ、成功への近道なのです。
4. 創業融資で大切なのは「基本事項の徹底」
創業融資の成功に近づくために、テクニックを探す前に確認したいのが、次の「基本5項目」です。
① 自己資金の蓄積
毎月コツコツと積み立ててきた記録があると、堅実さが評価されます。贈与や一時的な入金では評価されづらい傾向にあります。
② 創業計画の現実性
「売上1,000万円、利益700万円」など非現実的な数値は逆効果。競合分析や根拠ある見積もりが大切です。
③ 経験やスキルの裏付け
業種に対する経験・知識がどのくらいあるか。未経験でも「業界との接点」「学んでいる姿勢」が見えると好印象です。
④ 家計の安定性
家計収支表を出すケースもあります。無理のない生活設計がされているかも見られます。
⑤ 面談での受け答え
事業に対する本気度、計画への理解度を確認される場です。シミュレーション練習が有効です。
5. よくある質問(FAQ)
Q1. 本当に自己資金ゼロでも融資は通るのですか?
A. レアケースではありますが、全否定はできません。ただし、自己資金ゼロ=マイナス評価になるのは確かなので、最低でも事業費の1/10は用意したいところです。
Q2. 他人より少ない金額しか借りられなかったら、失敗ですか?
A. いいえ。創業融資は「スタート地点」です。大切なのは事業を継続し、次に繋げること。金額の大小は必ずしも成功・失敗を分けるものではありません。
Q3. 一度断られても再チャレンジできますか?
A. 可能です。事業計画を見直し、自己資金や経験を積んで再申請することで通過するケースも多くあります。
まとめ
創業融資は「人の数だけストーリーがある」審査です。
第三者の話を鵜呑みにして一喜一憂するのではなく、自分自身の状況を冷静に見つめ、基本を固めていくことが何よりも大切です。
他人の話は「参考程度」に
融資は「個別案件」であることを理解する
基本事項の徹底が最大の“対策”になる
この3つを意識することで、創業融資の成功率は格段に高まります。
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この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura 元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員 中小企業診断士、起業コンサルタント®、 1級販売士、宅地建物取引主任者、 補助金コンサルタント、融資・資金調達コンサルタント、 産業能率大学 兼任教員 2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。 融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago 元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役 同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。 支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。 日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。 長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。



























