
有料試食ビジネスの収益モデル設計と成功の考え方
有料試食ビジネスの収益モデル:誰が何に払うかを先に決める考え方
食に関する新しいビジネスを考えている方から、次のようなご相談をいただくことがあります。
「有料で試食ができるビジネスを考えています。成功させるには、何が必要でしょうか?」
回答者
三浦高
創業支援一筋で日本政策金融公庫について誰よりも詳しい中小企業診断士
有料試食ビジネスというのはとても面白い発想だと思います。ただ、企画を具体化する前に、まず整理していただきたいことがあります。それは「誰が、何に対してお金を払うのか」という点です。この一点を先に決めておくかどうかで、その後の商品設計や価格設定、集客の方法まで、ほぼすべての判断が変わってきます。
有料試食の収益源は、大きく分けて二つの方向性が考えられます。一つは、試食そのものを体験として消費者が楽しみ、その体験に対して対価を支払うという形です。珍しい食材を少量ずつ食べ比べられる、普段入手しにくいものを試せる、といった「体験価値」にお金を払ってもらう考え方です。もう一つは、食品メーカーや生産者が、自社の商品を知ってもらうためのマーケティング予算として費用を負担する形です。試食会の場や機会を提供し、メーカー側から出展料や企画料を受け取るという構造になります。
この二つは、同じ「有料試食」という言葉であっても、顧客が誰なのか、何を評価してもらう必要があるのか、競合がどこにいるのかがまったく異なります。消費者から対価を得る場合は、食べる人が「お金を払ってでも体験したい」と感じる企画力や会場の魅力が問われますし、メーカーから予算を得る場合は、出展することで売上やブランド認知にどれだけつながりそうかを、担当者に納得してもらう提案力が問われます。どちらも成立し得ると思いますが、最初の段階で両方を同時に追おうとすると、企画の軸がぼやけてしまいやすいので、まずはどちらを主な収益源にするのかを決めていただくことをお勧めします。
方向性が見えてきたら、次に考えていただきたいのが、小さく試すということです。最初から常設の店舗や大きな会場を構えるのではなく、期間や場所を限定したテスト販売から始める方法です。たとえば一日限定の出店や、一店舗だけでの試験的な実施といった形であれば、必要な準備や費用も抑えられますし、実際にお客様がどのくらいの価格なら支払ってくれるのか、どのような説明の仕方だと興味を持ってもらえるのかを、身をもって確認することができます。
テスト販売を行う際は、試食の価格だけでなく、何に対して対価をいただいているのかを、その場で説明できるようにしておくことも大切だと思います。体験そのものに価値があるのか、珍しさに価値があるのか、提供者である自分や生産者のストーリーに価値があるのかによって、お客様への伝え方も変わってきます。小さな規模だからこそ、いろいろな伝え方を試しながら、お客様の反応を見比べることができるはずです。
小さく試す過程で得られた反応は、価格設定やメニュー構成、会場の選び方を見直すための材料になります。想定していた反応と違う結果が出ることも当然あり得ますので、そのときは企画の前提に戻って、収益源の設定や体験の見せ方を調整していくという進め方が現実的だと思います。
なお、食品を扱って試食を提供する以上、食品衛生法に基づく許可や届出が必要になる場合があります。業態や提供方法によって要件が変わってきますので、詳しくは専門家や管轄の保健所に確認されることをお勧めします。
事業全体としての収益モデルの組み立て方や、資金計画との整合性について相談しながら設計していきたいという場合は、早めに専門家と一緒に整理していくと、方向性を固めやすくなると思います。
有料試食は、誰からお金をいただくのかを決め、小さく試しながら調整していく、という順番を守れば、無理なく形にしていけるビジネスだと思います。
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この記事を監修した人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。




























