
経営者なら知っておきたい!いまさら聞けない「サンクコスト効果」って?
「ここまで投資したんだから、もう少し続けよう…」
そんな経験、経営でもプライベートでもありませんか?
その心理の背景にあるのがサンクコスト効果です。
1. サンクコスト効果とは?
ズバリ言います。
サンクコスト効果とは、すでに回収不能な投資(時間・お金・労力)に引きずられ、合理的な判断ができなくなる心理現象です。
経済学では「埋没費用」と呼ばれます。本来は意思決定に影響を与えてはいけないものですが、人間は感情に左右されやすく、これがしばしば経営判断を誤らせます。
2. 典型的な事例
-
赤字プロジェクトの継続
すでに多額を投じており、撤退すれば損失が確定するため、さらに追加投資してしまう。 -
売れない商品の宣伝強化
開発費や在庫コストをかけたため、販売終了の決断ができない。 -
不採算店舗の運営継続
開店準備や内装費がかかっているからと閉店を先送りする。
これらは「損を確定させたくない」という心理から生じます。
3. なぜ経営者が知っておくべきか?
サンクコスト効果は、資金や時間の無駄だけでなく、機会損失を招きます。
本来なら新しい事業や改善策に回せたリソースが、成果の見込めない活動に縛られてしまうのです。
経営者が理解すべきポイントは、
-
損失回避バイアスが意思決定を歪める
-
「ここまでやったから」という感情論は危険
-
冷静な第三者視点が必要
4. ビジネスでの影響
サンクコスト効果に陥ると、
-
不採算事業からの撤退が遅れる
-
投資判断が過去の支出基準になる
-
新規チャンスに資源を割けなくなる
結果として、企業全体の成長スピードが低下します。
経営者はやめる判断が一番難しいともいえます。
5. 実践的な回避策
私が経営者に提案するサンクコスト効果の回避方法は、次の通りです。
① 定期的な事業評価
感情を排して数字で判断。損益分岐点やKPIを事前に設定します。
② 撤退基準の明確化
「赤字○か月継続で撤退」など、事前ルールを決めておきます。
③ 第三者の意見を取り入れる
社外取締役や顧問、外部コンサルに定期評価を依頼します。
④ 将来価値に基づく判断
過去の投資額ではなく、これから得られるリターンで意思決定します。
6. よくある失敗パターン
-
感情優先の経営
「頑張ってきた社員のため」という気持ちが判断を鈍らせる。 -
撤退の遅れ
損失を最小化するタイミングを逃す。 -
既存資産への執着
設備や在庫にこだわりすぎて柔軟な転換ができない。
7. 成功事例
ある製造業では、不採算だった製品ラインを思い切って撤退。その分の設備と人員を、新しい高付加価値製品に集中投下した結果、翌年度には売上・利益ともに過去最高を達成しました。
また、ITベンチャーでは、利用が伸びないサービスを半年で終了。浮いた開発リソースを新サービスに振り向け、1年後には黒字転換しました。
8. 今日からできる実務チェックリスト
-
各事業のKPIと損益を定期的に確認しているか?
-
撤退や縮小の基準が明文化されているか?
-
過去の投資額ではなく、将来の見込み利益で判断しているか?
-
外部の意見を定期的に取り入れているか?
まとめ
サンクコスト効果は、経営において非常に身近で、しかも気づきにくい罠です。
経営者としては、「過去」ではなく「未来」を基準に判断する習慣を持つことが重要です。
感情や執着を排し、数字と客観的な視点で意思決定を行えば、無駄な投資を防ぎ、より成長性の高い分野に集中できます。
【無料相談のご案内】
起業の手続きって何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!
この記事を書いた人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP技能士。大正大学招聘教授(起業論、ゼミ等)
V-Spiritsグループ創業者。税理士法人V-Spiritsグループ代表。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「ベストセラー起業本」の著者。著書20冊、累計25万部超。経済産業省後援「DREAMGATE」で12年連続相談件数日本一。
【まるごと起業支援(R)・経営支援】
起業コンサル(事業計画+融資+補助金+会社設立支援)+起業後の総合サポート(経理 税務 事業計画書 融資 補助金 助成金 人事 給与計算 社会保険 法務 許認可 公庫連携 認定支援機関)など
【略歴】
経営者である父の元に生まれ、幼き頃より経営者になることを目標として過ごす。バブル崩壊の影響を受け経営が悪化。一家離散に近い貧困状況を経験し、「経営者の支援」をライフワークとしたいと決意。それに役立ちそうな各種資格を学生時代を中心に取得。同じく経営者であるメンターの伯父より、単に書類や手続を追求する専門家としてではなく、視野を広げ「ビジネス」の現場での経験を元に経営者の「経営そのもの」を支援できるような専門家を目指すようアドバイスを受け、社会人生活をスタート。大手、中小、ベンチャー企業、会計事務所等で営業、経理、財務、人事、総務、管理職、経営陣等、ビジネスの「現場」での充実した修行の日々を送ったあと、2007年に独立。ほかにはない支援スタイルが起業家・経営者に受け入れられ、経済産業省「DREAM GATE」にて、面談相談12年連続日本一。補助金・助成金支援実績600件超。ベストセラー含む起業・経営本20冊を出版。累計25万部超。無料相談件数は全国から累計3000件を超す。
この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。