
起業を目指すあなたへ――「自己資金」という最初の一歩の大切さ
こんにちは。起業コンサルタント、税理士、行政書士、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナーの中野裕哲です。
今回は、「自己資金」についてズバリお話しいたします。
第1章 そもそも「自己資金」とは何か?
起業準備中の方から非常によくいただく質問が、
「先生、“自己資金”って、具体的に何を指すんですか?」
というもの。確かに、自己資金という言葉はよく耳にするけれど、漠然としたイメージで捉えている方も多いようです。
ズバリ言います。
自己資金とは、「借りていないお金で、自分が自由に使える資金」のこと。
ここがポイントです。
- 銀行からの融資ではなく、
- 親から借りたお金でもなく、
- カードローンでもなく、
自分でコツコツ貯めたお金や、退職金など、返済義務のないお金。 これが自己資金です。
創業融資を狙うなら、この自己資金が「どこから出たお金か」まで問われます。金融機関は甘くありません。口座の入出金履歴を遡ってチェックされます。
第2章 なぜ自己資金が重要なのか?
自己資金の重要性は、次の3つの理由からです。
1.創業融資の審査で重視される
融資を受けたい場合、たとえば日本政策金融公庫や自治体の創業融資制度では、自己資金が全体の1/3〜1/2程度必要とされることが多いです。
これはつまり、「事業に対する本気度」を問われているということです。
「すべて借りたお金で始めたい」は、残念ながらNGです。
2.経営者の金銭感覚の証明になる
自己資金をしっかり貯めてきたという実績は、「この人はお金の管理がきちんとできる人だ」という評価につながります。金融機関はそこを見ています。
3.いざというときの安心材料になる
たとえば、売上が伸びず、資金がショートしそうなとき。手元に自己資金があることで、冷静に判断できる余裕が生まれます。自己資金は、経営の“バッファ”なのです。
第3章 自己資金はいくら必要?
「最低でもいくら貯めればいいですか?」
これもよく聞かれる質問です。
ズバリ言いますと、最低でも100万円、理想は300万円以上。
もちろん業種によって違いはありますが、以下のように考えてください。
- 開業時の初期費用(設備、内装、備品など)
- 3〜6ヶ月分の運転資金(家賃、人件費、生活費含む)
これらを見積もって、足りない分は融資で補うのが現実的です。
【例:IT系フリーランスでの起業】
- 開業費用(ノートPC、HP制作、開業届など):50万円
- 運転資金(毎月20万円×6ヶ月):120万円
- 広告費、研修費など:30万円
→ 合計:200万円程度。自己資金100万円、融資100万円、という組み立てもありです。
第4章 自己資金をどう準備する?
1.コツコツ貯金が王道
通帳を1冊作り、「起業専用貯金口座」として毎月積み立てましょう。1,000円からでもOKです。重要なのは“習慣化”です。
2.退職金・満期保険・積立型投資を活用
- 会社の退職金
- 学資保険や終身保険の解約返戻金
- iDeCoやつみたてNISA(解約タイミングに注意)
も自己資金として使える可能性があります。ただし、元本割れのリスクや税務上の影響には要注意です。
3.親族からの支援を受ける場合
「親に援助してもらおうかな……」という方も多いでしょう。これはOK。ただし、贈与でなければ自己資金と認められません。
第5章 自己資金の「見せ方」にもコツがある
創業融資を受けるときには、通帳のコピーを提出するのが一般的です。
ここで重要なのは、通帳の履歴が“見せ金”でないことの証明です。
NGな自己資金の例
- 直前に親から振り込まれた100万円
- 口座間でグルグル回して増やしたように見せる資金
- クレジットカードの現金化など、不自然な入金
OKな自己資金の例
- 毎月コツコツ積み立てた預金
- 給与振込口座に残った自然な残高
- 解約保険や満期の証明書がある一時金
書類での裏付けが大切なのです。
第6章 自己資金ゼロでも起業はできる?
正直に言いますと、「不可能ではないけど、かなり難しい」です。
ただし、例外的に自己資金ゼロでも起業が可能なケースもあります。
1.開業費用がほとんどかからない業種
- スキル販売(ココナラ、クラウドワークスなど)
- オンライン講師(Zoom、Udemyなど)
2.副業からのスタート
いきなり脱サラせず、会社員のうちに副業として始めて、売上を作っておくのは非常に堅実な戦略です。
ただし、いずれにしても「自己資金は貯めておくに越したことはない」というのが私のアドバイスです。
FAQコーナー よくあるご質問
Q. 副業で稼いだお金も自己資金になりますか? → はい、なります。ただし、通帳の記録などで確認できるようにしておきましょう。
Q. 親からの贈与は大丈夫?贈与税が心配です。 → 年間110万円までなら非課税で受け取れます。それ以上の場合は工夫が必要です。
Q. クラウドファンディングの支援金は自己資金になりますか? → 基本的には「売上」や「資金調達」であって、自己資金とは別の扱いになります。融資の審査には含めにくいです。
まとめ 自己資金は「信頼の証」
自己資金は、単なるお金ではありません。
- あなたの計画性
- 起業への本気度
- 金銭感覚の健全さ
そうした「信頼」を数値で示す、極めて重要な指標なのです。
融資の成功率を高めるだけでなく、自分自身の心の支えにもなります。ぜひ、今日からコツコツと自己資金の準備を始めましょう!
お金のこと、起業のこと、不安があればいつでもご相談くださいね。
【無料相談のご案内】
起業の手続きって何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!
この記事を書いた人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP技能士。大正大学招聘教授(起業論、ゼミ等)
V-Spiritsグループ創業者。税理士法人V-Spiritsグループ代表。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「ベストセラー起業本」の著者。著書20冊、累計25万部超。経済産業省後援「DREAMGATE」で12年連続相談件数日本一。
【まるごと起業支援(R)・経営支援】
起業コンサル(事業計画+融資+補助金+会社設立支援)+起業後の総合サポート(経理 税務 事業計画書 融資 補助金 助成金 人事 給与計算 社会保険 法務 許認可 公庫連携 認定支援機関)など
【略歴】
経営者である父の元に生まれ、幼き頃より経営者になることを目標として過ごす。バブル崩壊の影響を受け経営が悪化。一家離散に近い貧困状況を経験し、「経営者の支援」をライフワークとしたいと決意。それに役立ちそうな各種資格を学生時代を中心に取得。同じく経営者であるメンターの伯父より、単に書類や手続を追求する専門家としてではなく、視野を広げ「ビジネス」の現場での経験を元に経営者の「経営そのもの」を支援できるような専門家を目指すようアドバイスを受け、社会人生活をスタート。大手、中小、ベンチャー企業、会計事務所等で営業、経理、財務、人事、総務、管理職、経営陣等、ビジネスの「現場」での充実した修行の日々を送ったあと、2007年に独立。ほかにはない支援スタイルが起業家・経営者に受け入れられ、経済産業省「DREAM GATE」にて、面談相談12年連続日本一。補助金・助成金支援実績600件超。ベストセラー含む起業・経営本20冊を出版。累計25万部超。無料相談件数は全国から累計3000件を超す。
この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。