
クリーニング店の受付・会計省力化、補助金はどちらが候補になるか
クリーニング店を営んでいると、開店直後や夕方の受け取り時間帯に受付が混み合い、会計対応に手が取られて洗い・仕上げの作業に戻れない、という場面が出てきます。スタッフを増やす前に、受付や会計の作業そのものを機械やシステムで省力化できないかと考える経営者もいるはずです。こうした省力化のための設備投資を支援する国の制度が「中小企業省力化投資補助金」です。この補助金には性質の異なる2つのタイプがあり、受付・会計の省力化と、洗い・仕上げといった生産工程の省力化とでは、検討すべきタイプが変わってきます。本記事では、クリーニング店の受付・会計を軸に、どちらのタイプが候補になるかを整理します。
結論:受付・会計はカタログ注文型、独自の工程改善は一般型が候補になる
中小企業省力化投資補助金には、「中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)」と「中小企業省力化投資補助金(一般型)」という2つのタイプがあります。カタログ注文型は、あらかじめ公的に登録された省力化製品から選んで導入する、比較的手続きが決まっている制度です。一般型は、事業内容や店舗のレイアウトに合わせて設備やシステムを組み合わせて導入する、オーダーメイド性の強い制度です。
受付・会計の省力化を検討する場合、自動精算機やPOSレジのように、汎用的な機器カテゴリとして公的に登録された製品を導入できるのであれば、カタログ注文型が候補になります。一方で、洗い・仕上げといった生産工程の省力化を、店舗ごとの設備配置や作業の組み合わせに合わせて検討する場合は、一般型が候補になります。両方を同時に検討したい場合は、受付・会計側と工程側を別の投資として整理したほうが、申請の準備を進めやすくなります。次の章から、それぞれのタイプの制度概要と申請要件を見ていきます。
受付・会計の省力化とカタログ注文型
制度概要と補助上限
中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)は、公的に登録された省力化製品(汎用機器・ロボット・IoT機器等)から選んで導入する、簡易かつ即効性のある省力化投資を支援する制度です。人手不足の解消と生産性向上を同時に狙い、賃上げにつなげることも目的とされています。補助上限は、大幅な賃上げ計画を盛り込む場合で1,500万円です。
受付・会計の場面で検討されやすい自動精算機やPOSレジといった機器は、特定のメーカーの製品名を指すものではなく、一般的な機器カテゴリの一例として捉えておくのが適切です。こうした機器カテゴリが実際にカタログに登録されているかどうか、どの製品が該当するかは、公募時点の登録状況を確認する必要があります。
製品カテゴリと省力化指数の仕組み
カタログ注文型の対象になる製品は、「製品カテゴリ」という単位で管理されています。製品カテゴリとは、特定の業務に使われ、動作原理や外観、規模などに大きな差がない製品群をまとめて指す分類です。工業会等が製品カテゴリの登録を中小企業庁に申請し、業所管省庁等との協議を経て認定される仕組みになっています。
個々の製品カテゴリには、そのカテゴリがどれくらいの省力化効果を生み出すかを定量的に示す「省力化指数」が、工業会等の承認を受けて設定されます。受付・会計向けの機器を検討する際は、導入したい機器がどの製品カテゴリに属し、カタログに登録済みかどうかを確認するところから始めることになります。
申請要件
- カタログに登録された省力化製品を導入することが前提になります(汎用性・省力化効果が基準です)
- 中小企業等が販売事業者と共同で申請することが必要で、単独での申請は原則できません
- 省力化投資によって労働生産性(付加価値を従業員数で割った値)を年平均成長率3.0%以上向上させる計画が必要です(計画が未達の場合は減額の対象になります)
- 賃上げ目標を盛り込むと上限額の枠が広がりますが、未達の場合は減額対象になるため、事前の計画策定が欠かせません
- 導入後も複数年度にわたる効果報告や、取得した資産の管理ルールを守る必要があります
販売事業者との共同申請が必須になっている点は、カタログ注文型の制度上の特徴です。どの販売事業者と組むかは店舗側で検討することになりますが、この記事では特定の販売事業者を紹介するものではなく、共同申請が必要であるという制度要件を事実として整理しています。
対象経費
対象になるのは、カタログに登録された省力化製品本体の費用と、その導入に伴う据付・設定・運用支援などの付帯費用です。カタログに登録されていない設備や、オーダーメイド性のある機器は、カタログ注文型ではなく一般型の対象になります。
💬 執筆者の三浦から一言
受付・会計のような業務プロセスの省力化と、洗い・仕上げのような生産工程の省力化は、同じクリーニング店の中でも投資の性質が異なります。カタログに登録された汎用製品で足りるのか、店舗ごとの設備構成に合わせて組み合わせる必要があるのかを分けて考えると、カタログ注文型・一般型のどちらが候補になるかを整理しやすくなります。
洗い・仕上げ工程の省力化と一般型の考え方
制度概要と補助上限
洗い場や仕上げ工程で、複数の設備を組み合わせて省力化を図りたい場合は、中小企業省力化投資補助金(一般型)が候補になります。一般型は、事業内容や店舗のレイアウトに合わせた設備・システムを導入する、オーダーメイド寄りの省力化投資を支援する制度です。補助上限は従業員規模によって異なります。
| 従業員規模 | 補助上限(基本) | 補助上限(特例) |
|---|---|---|
| 5人以下 | 750万円 | 1,000万円 |
| 6〜20人 | 1,500万円 | 2,000万円 |
| 21〜50人 | 3,000万円 | 4,000万円 |
| 51〜100人 | 5,000万円 | 6,500万円 |
| 101人以上 | 8,000万円 | 1億円 |
オーダーメイド性の判定基準
一般型で対象になるのは「オーダーメイド性のある設備」です。具体的には、ICT・IoT・AI・ロボット等を活用した専用設備等が想定されていますが、次のいずれかに当てはまれば、汎用設備であってもオーダーメイド設備とみなされます。
- 省力化に資する汎用設備を複数組み合わせることで、より高い省力化効果や付加価値を生み出す場合
- 店舗の導入環境に応じて、周辺機器や構成する機器の数、搭載する機能等が変わる場合
洗い機や仕上げ機を単体で1台導入するだけでは、この基準を満たさず対象外になります。単価50万円(税抜)以上の機械装置等を最低1つ導入するという要件を満たしていても、それだけでは足りません。既存の設備や作業工程と組み合わせて、どのように省力化効果を高めるかを事業計画として示す必要があります。
申請要件
- 省力化(生産・業務プロセスやサービス提供方法の省力化)を目的とした投資であること
- 3〜5年の事業計画を組み、労働生産性を年平均+4.0%以上伸ばす計画が必要です
- 賃上げ目標が要件になっており、未達の場合は達成率に応じて返還が発生することがあります
- 単価50万円(税抜)以上の機械装置等を最低1つ導入する必要があります(オーダーメイド性の判定基準を満たすことが前提です)
対象外になりやすい例
みなし大企業に該当する場合、直近3年の課税所得の年平均が15億円を超える場合、実態が確認できない場合、従業員0名の場合、外部任せで主体性がないと判断される場合は、対象外になりやすい点に注意が必要です。
物価高騰支援金とは別制度である点の整理
クリーニング店では、原材料費やエネルギーコストの上昇に対応するための給付金・支援金が話題になることがあります。こうした物価高騰対策としての給付金・支援金と、本記事で扱う中小企業省力化投資補助金は、別の制度として整理しておく必要があります。
中小企業省力化投資補助金は、受付・会計や洗い・仕上げといった業務の省力化のための設備投資を支援する制度であり、物価高騰による負担そのものを直接穴埋めするための制度ではありません。設備投資によって人手不足を解消し、生産性を高めていくための制度という位置づけで検討するのが適切です。具体的な物価高騰支援金の名称や金額については制度ごとに異なるため、該当する制度がある場合は、その制度の案内を個別に確認することをおすすめします。
まとめ
中小企業省力化投資補助金には、カタログに登録された製品を選んで導入する「中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)」と、事業内容に合わせてオーダーメイド性のある設備を導入する「中小企業省力化投資補助金(一般型)」の2つのタイプがあります。受付・会計の省力化であれば、汎用的な機器カテゴリがカタログに登録されているかを確認したうえでカタログ注文型を検討し、洗い・仕上げ工程のように店舗ごとに設備の組み合わせが変わる省力化であれば、オーダーメイド性の判定基準を踏まえて一般型を検討する、という整理になります。
物価高騰対策の給付金・支援金とは別制度である点も踏まえ、受付・会計側と工程側のどちらから検討を始めるかを整理したうえで、具体的な申請準備に進むとよいでしょう。
【無料相談のご案内】
弊社は、V-Spiritsグループ代表の中野裕哲を中心に、元補助金審査員の三浦をはじめとした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。



























