
ものづくり補助金はクリニックで使える?医療機器導入の活用事例と電子カルテ補助金との使い分け【2026年版】
「ものづくり補助金はクリニックでも使えるのか」「医療機器や電子カルテの導入費用を補助金でまかなえないか」——開業医や医療法人の方からよくいただくご質問です。結論からいえば、ものづくり補助金は要件を満たしているクリニック・医療機関でも活用できます。ただし2026年度は制度が大きく変わり、また「電子カルテ単体の導入」には別の補助金が向いているなど、押さえておくべきポイントがあります。この記事では、中小規模のクリニックを想定し、ものづくり補助金で何ができるのか、活用事例・申請の流れ・注意点を整理して解説します。
2026年度は「新事業進出・ものづくり補助金」へ。クリニックに関係する2つの方向性
2026年度から、従来の「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」は「新事業進出・ものづくり補助金」として一本化される方向で整理が進んでいます。クリニックの設備投資に関係する支援の方向性は、大きく次の2つに分けて考えると分かりやすくなります。
- 生産性向上(ものづくり領域)=革新的新製品・サービス枠:既存の診療に「新しい製品・サービスの開発」を伴う設備投資が対象。補助上限は2,500万円(大幅な賃上げを行う場合は3,500万円)。
- 新分野進出(新事業進出領域)=新事業進出枠:既存の診療とは異なる新しい市場・サービスへ進出する投資が対象。補助上限は7,000万円(最大9,000万円)。
たとえば、検査機器を導入して新しい検査・診療メニューを立ち上げるなら前者、健診事業や自由診療など既存の保険診療とは別の事業へ広げるなら後者、というイメージです。なお補助額・要件・枠の名称は年度ごとに見直されます。申請前には必ず最新の公式公募要領で確認してください。
クリニックがものづくり補助金を使うための条件
「医療機関だから対象外」ということはありません。中小企業者等(医療法人や個人開業医を含む)であり、公的医療保険との重複がないなどの要件を満たせば申請できます。ただし、次の条件を満たす必要があります。
- 設備投資が必須:機械装置・システム構築費が補助対象の中心です。単価50万円以上(税抜)の機械装置等を導入することが前提になります。
- 「新しい製品・サービスの開発」を伴うこと:単なる設備の更新・買い替えだけでは新規性・革新性が弱いと判断され、採択されにくくなります。「この投資で、患者さんにどんな新しい価値を提供できるのか」を計画で示すことが重要です。
- 交付決定より前に発注・契約・購入をしないこと:理由を問わず、交付決定前の発注は対象外になります。「先に機器を買ってしまった」は最も多い失敗例なので注意してください。
クリニック・医療機関の活用事例
事例1:検査・診療機器の導入で新しい診療メニューを立ち上げる
超音波診断装置や内視鏡、各種測定・検査機器などを導入し、これまで院内で対応できなかった検査・診療を新たに提供するケースです。単に既存機器を新しくするのではなく、「新しい検査メニュー」「新しい診療サービス」という形で患者への提供価値が増える点を計画に落とし込めれば、生産性向上(ものづくり領域)の投資として整理しやすくなります。
事例2:医療機器と専用システムを組み合わせた診療の高度化
画像診断のデジタル化や、検査機器と連携する専用システムを組み合わせて、診断の精度やスピードを高める取り組みです。機械装置・システム構築費が補助対象の中心になるため、医療機器の導入と一体でシステムを組む構成は、ものづくり補助金と相性が良い領域です。電子カルテはこの「設備と一体のシステム」の一部として位置づけられる場合に限り、対象に含められる可能性があります。
事例3:自由診療・新事業への進出(新事業進出枠)
自由診療の新メニューや健診・予防医療など、既存事業とは異なる市場へ進出するケースです。この場合は補助上限の大きい新事業進出枠が選択肢になります。ただし「新市場性」または「高付加価値性」で新規事業として筋が通ることが審査の山場になるため、価格帯や顧客層を変えただけの説明では弱くなりがちです。
電子カルテ・レセコンは「デジタル化・AI導入補助金」が基本
クリニックの補助金でとくに迷いやすいのが電子カルテです。電子カルテやレセプトコンピュータといった「ソフトウェア・ITツールの導入」は、ものづくり補助金よりもデジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)が基本的な選択肢になります。2026年度はAI音声入力や文書作成支援ツールなども対象に広がっており、クラウド型・オンプレミス型の電子カルテも対象に含まれます。
ものづくり補助金で電子カルテが関係してくるのは、医療機器の導入と一体で新しい診療サービスを開発し、システムが設備投資の一部として組み込まれるケースに限られます。整理すると、電子カルテ・レセコン単体ならデジタル化・AI導入補助金、医療機器を伴う新サービス開発ならものづくり補助金、と使い分けるのが基本の考え方です。どちらが自院に向いているか迷う場合は、投資の「主役」が設備なのかITツールなのかで切り分けると判断しやすくなります。
申請の流れと注意点
申請の大まかな流れは次のとおりです。
- ①導入したい機器・サービスと、それによって生まれる「新しい価値」を整理する
- ②電子申請の準備(GビズIDプライムの取得など)を進める
- ③事業計画書を作成し、公募期間内に申請する
- ④採択・交付決定後に発注・導入し、実績報告を行う
- ⑤確定後に補助金が入金される(精算払い)
注意したいのが後払い(精算払い)です。補助金は原則として、事業が終わって実績報告が確定したあとに入金されます。クリニックの場合、医療機器の支払いが先行するため、入金までの数カ月〜半年程度の資金を自院で立て替える必要があります。手元資金が不足する場合は、つなぎ融資など資金繰りの準備も並行して検討しておくと安心です。設備投資と資金調達はセットで考えることをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
Q. 個人開業のクリニックでも申請できますか?
A. 中小企業者等に該当すれば、個人開業医でも申請できます。ただし、1人以上従業員がいることなどの要件を満たす必要があります。
Q. 医療機器の購入だけでも対象になりますか?
A. 単なる機器の購入・更新だけでは「新しい製品・サービスの開発」が弱いと判断されやすく、採択は難しくなります。その機器でどんな新しい診療・検査を提供するのかを計画で示すことが重要です。
Q. ものづくり補助金とデジタル化・AI導入補助金は併用できますか?
A. 同じ経費を二重に補助する形は認められません。経費や事業を分けて整理する必要があるため、複数制度を組み合わせたい場合は事前に専門家へ相談することをおすすめします。
まとめ
ものづくり補助金(2026年度からは新事業進出・ものづくり補助金)は、クリニック・医療機関でも活用できます。医療機器を導入して新しい診療・検査サービスを開発する投資は「生産性向上(ものづくり領域)」、自由診療など新分野への進出は「新分野進出(新事業進出領域)」と整理し、電子カルテ単体の導入はデジタル化・AI導入補助金で——という使い分けが基本です。交付決定前の発注は対象外になる点、補助金が後払いである点には十分注意してください。自院のケースが対象になるか判断に迷う場合は、早めに補助金の専門家へ相談することで、制度選びと事業計画づくりの遠回りを防げます。
【無料相談のご案内】
弊社では、元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが補助金支援を行っております。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























