
設立直後のゲーム会社が次の公募に備える IP360 メニュー2「新規IP企画支援」の準備手順
前職で開発の経験はあるものの、会社を作ったばかりで法人としての実績はまだありません。そんなゲーム制作会社が、IP360 メニュー2「新規IP企画支援」を狙えるのかを整理します。
2026年度の第2回公募は2026年7月21日に締め切られ、すでに終了しています。この記事は、次回の公募に向けた準備として読んでください。数字や日付は2026年10月時点の情報です。対象はゲーム・アニメ・実写・音楽などのコンテンツ制作法人に限られ、本記事ではゲーム制作会社に絞って説明します。
設立直後でも狙える?先に確認したい3つの線引き
設立年数に下限があるかどうか、決算前の新設法人が財務諸表の提出をどう扱うかについては、私が確認した資料に記載がありません。ここは最新の公募要領で確認してください。一方で、制作に従事する構成員の過去実績は審査で特に重視される観点です。法人としての実績がなくても、人の実績で示す準備はできます。
そのうえで、対象かどうかを分ける線引きは次の3つです。
- 申請できるのは、日本の法令に基づいて設立された法人です。個人や、法人格を持たない製作委員会・コンソーシアム等は対象外です。ただし、製作委員会等の構成法人1社が責任を持って申請することはできます。
- 対象になるゲームはコンピューターゲーム(PC・モバイル・コンソール等)です。ボードゲームは対象外で、インディーゲームは対象に含まれます。
- 対象になる工程は、プリプロダクションのみです。企画、構成、脚本、世界観設計、キャラクター設計、プロトタイプ制作などが当たります。プロダクション、ポストプロダクション、プロモーションは対象外です。
補助率は1/2、補助上限額はゲームの場合2,000万円/者です。補助金額は「補助対象経費×補助率」と補助上限額のいずれか小さい方になります。音楽の7,000万円はゲームには当てはまりません。成人向けコンテンツ、政治・宗教宣伝、誹謗中傷を含むコンテンツは対象外になり得ます。
出典:経済産業省「IP360(新規IP企画支援事業)」公募要領・QA・補足資料 第1.0版(2026年4月21日版)。制度は改定されることがあるため、申請前に最新の公募要領や事務局サイトで必ず確認してください。
審査で見られる6つの観点を、設立直後の立場で読み替える
審査の観点は6つあります。「加点」と明記されていない評価項目は、基本的に必達要素です。設立直後の会社は、法人の実績ではなく、次のように読み替えて準備します。
| 観点 | 内容 | 設立直後の読み替え |
|---|---|---|
| 市場評価 | プロトタイプ・ポートフォリオに対する専門家の評価(特に重視) | 遊べる形のプロトタイプと、見せ方を整えたポートフォリオを用意します。 |
| 個人実績 | 製作・開発に従事する構成員の過去実績(特に重視) | 法人の実績がない分、構成員一人ずつの経歴を前面に出します。 |
| 海外販売 | 将来的な海外配信国数が日本を除いて1か国以上 | 配信したい国を、予定として1か国以上考えます。 |
| ローカライズ | 将来的なローカライズ言語数が日本語を除いて1言語以上 | 対応したい言語を、予定として1言語以上考えます。 |
| 成果報酬 | 将来的な本製作時にレベニューシェアを得る予定があること | 本製作で配信元などから収益の分配を受ける想定を書きます。 |
| 権利 | 将来的な本製作時に著作権の全部または一部を保有する予定があること | 自社でIPの権利を持つ前提の企画にします。 |
申請までの準備の順番チェックリスト
設立直後の会社は、実績を示す準備に時間がかかります。次の順番で進めると、手戻りが減ります。
- GビズIDを取得します。応募はJグランツにGビズIDで行い、登録に1週間程度かかる場合があります。公募が始まってからでは間に合わないことがあるため、最初に済ませます。
- 構成員の過去実績を一人ずつ書き出します。担当した役割、参加した作品、関わった期間を整理します。数字を載せるときは、公開されている事実だけを使います。前職の作品を掲載してよいかも、この段階で確かめておきます。
- プロトタイプで見せる範囲を決めます。企画の面白さの核が伝わる部分に絞り、全体を作ろうとしないことが大切です。
- ポートフォリオにまとめます。形式は任意です。法人の作品一覧が空でも、構成員の実績とプロトタイプを組み合わせて一冊にします。
- 事業計画書の材料を集めます。法人概要、作品関係者概要、作品一覧、海外展開国、ローカライズ言語、支出収入計画の根拠、投資額の見込みの根拠、実施体制、スケジュールなどが求められます。
- エビデンス書類を揃えます。通帳写し、履歴事項全部証明書、財務諸表等が挙げられています。設立直後で決算を迎えていない場合の扱いは、最新の公募要領で確認してください。
プリプロダクション予算の組み方:人件費と外注費をどう分けるか
対象になる経費の区分は、人件費・補助員人件費、旅費、備品費(1年以上継続使用できる物品)、借料・損料、通信費・運搬費・諸経費、委託・外注費です。国内で営業するフリーランスへの支払いも、委託・外注費として対象になり得ます。
対象外の経費もあります。一般管理費、国内消費税、実績報告のための費用、主要人員以外の旅費、商標登録料、任意保険、おみやげ代、飲食費(接遇費に該当しないもの)、使途不明瞭な調整費・予備費などです。予算表を作る段階で、これらを除いてください。
人件費と外注費の分け方は、次の考え方で整理できます。構成員自身が担当する作業は人件費に、自社に足りない専門技能は外注費に振り分けます。どちらも、プリプロダクションの範囲に収まる作業だけを計上します。
金額の目安は、補助率1/2と上限2,000万円から逆算します。次は計算例です。
- 補助対象経費が3,000万円の場合、補助金は1,500万円で、自己負担は1,500万円です。
- 補助対象経費が4,000万円の場合、補助金は上限の2,000万円で、自己負担は2,000万円です。
- 補助対象経費が4,000万円を超えても、補助金は2,000万円のままです。超えた分は全額自己負担になります。
補助金は原則として事業の後に支払われます。前回の公募では、事業完了期限が2027年2月28日、補助金の支払期限が2027年3月31日でした。必要に応じて、交付決定額の2/3以下までの概算払(前払い)を受けられる仕組みもあります。それでも、事業期間中に先に支払う分は自社で手当てすることになります。
💬 執筆者の三浦から一言
「制作費全般に使える補助金」と受け取られることがありますが、IP360 メニュー2「新規IP企画支援」でゲームが対象になるのはプリプロダクション段階だけです。上限も2,000万円です。完成までの総予算を組むのではなく、プロトタイプまでで区切った計画として組み立てるほうが、対象範囲に合います。
海外配信・ローカライズ・権利は「将来の予定」でどう書くか
海外配信、ローカライズ、権利の関係は、応募時点で確定していなくても構いません。将来の予定として説明できれば申請できます。ただし、これらの観点も基本的に必達要素です。企画書では、どれも空欄にしないでください。
書く内容は、次のような事柄です。
- 配信したい国を、日本を除いて1か国以上挙げます。
- 対応したい言語を、日本語を除いて1言語以上挙げます。
- 本製作の段階で、レベニューシェアを得る予定があることを書きます。
- 本製作の段階で、著作権の全部または一部を自社で持つ予定であることを書きます。
権利の持ち方は、外注先や共同開発者が加わる場合に整理が必要になります。動く時期は、外注先と契約を結ぶ前です。誰が何を持つかを企画段階で決めておかないと、後から計画と食い違うおそれがあります。契約や著作権の詳しい扱いは、専門家に確認してください。
交付決定前の発注に注意して、次回公募までの動きを逆算する
補助対象になる経費は、原則として交付決定日以降に発注・発生したものだけです。交付決定前に発注した分は対象外になります。基本契約だけを交付決定前に結び、金額や時間などの詳細を交付決定後の発注書で確定する形であれば、対象になり得ます。詳細まで決まった契約を交付決定前に結んでしまうと、対象外です。外注先とは、この順番を前提に話を進めてください。
前回の流れは次のとおりでした。
- 2026年6月30日に第2回公募が始まりました。
- 2026年7月21日に締め切られました。
- 採択・不採択の通知は、2026年8月下旬頃でした。
公募開始から締切までは約3週間で、締切から通知までは約3〜5週間が目安とされています。次回の実施や日程は、私が確認した資料には載っていません。経済産業省の公式発表を定期的に確認してください。公募が始まってから動くと間に合わないため、GビズIDの取得、構成員の実績整理、プロトタイプ制作は、今のうちから進められます。
まとめ
設立直後のゲーム制作会社が次回の公募に備えるには、法人の実績ではなく、構成員の実績とプロトタイプで示す準備が中心になります。予算は、プリプロダクションの範囲に絞り、補助率1/2と上限2,000万円から自己負担を逆算します。海外配信・ローカライズ・権利は、将来の予定として具体的に書きます。数字や条件は2026年10月時点のもので、制度は改定されることがあります。申請前に最新の公募要領や事務局サイトで必ず確認してください。
【無料相談のご案内】
弊社は、V-Spiritsグループ代表の中野裕哲を中心に、元補助金審査員の三浦をはじめとした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。



























