
機械加工業の工作機械導入で使える補助金|新製品開発と省力化で選ぶ4制度
マシニングセンタやCNC旋盤、複合加工機といった工作機械は1台数百万円から数千万円することも珍しくなく、更新のたびに資金繰りに頭を悩ませる機械加工業の経営者は多いはずです。国の補助金を使えば投資負担を抑えられますが、「ものづくり補助金」「省力化補助金」といった通称だけで調べると、どれが自社の投資に合うのか判断しづらいのが実情です。この記事では、機械加工業が工作機械やシステムを導入する際に使える主な4つの補助金を、目的別・投資内容別に整理して解説します。
機械加工業が使える補助金4制度の全体像
2026年度時点で、機械加工業の設備投資に関係する主な補助金は次の4制度です。制度名は2026年度に整理・統合が行われているため、古い通称のまま調べていると対象条件を見誤ることがあります。
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠(旧「ものづくり補助金」に相当。新製品・新サービスの開発が対象)
- 中小企業省力化投資補助金(一般型)(既存工程の省力化・自動化が対象。オーダーメイド設備向け)
- 中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)(あらかじめ登録された省力化製品を選んで導入するタイプ)
- デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)(CAD/CAM・生産管理システムなどソフトウェア寄りの投資が対象)
2026年度は、従来別制度だった「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」が統合され、公募要領上の正式名称は「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」になっています(革新的新製品・サービス枠/新事業進出枠の2枠構成、公募要領1.0版・令和8年6月)。ネット上にはまだ旧名称や統合前の公募回の数字で解説している記事も多いため、申請前には必ず最新の公募要領で制度名と数字を確認してください。
「新製品開発」か「工程の省力化」かで最初に切り分ける
機械加工業がどの補助金を使うべきか迷ったときにまず確認したいのが、その設備投資が「新しい製品・サービスの開発」なのか、「既存工程の省力化・効率化」なのかという点です。この2つは似ているようで、対象となる補助金がまったく異なります。
たとえば同じマシニングセンタの導入でも、「これまで作れなかった新しい部品形状に対応するための投資」であれば新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(革新的新製品・サービス枠)の土俵に乗りますが、「今ある製品を、より少ない人手で作れるようにするための設備更新」であれば中小企業省力化投資補助金の対象として整理するのが基本です。単なる設備更新・効率化目的の投資を「新製品開発」として申請しても、革新的新製品・サービス枠では対象外と判断されるため、ここの切り分けを曖昧にしたまま申請書を書き始めないことが重要です。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠で工作機械を導入する場合
自社の技術力を活かして、これまでにない新製品・新サービスを開発する取り組みが対象です。補助上限は従業員規模によって異なり、1〜5人は750万円、6〜20人は1,000万円、21〜50人は1,500万円、51人以上は2,500万円です(大幅賃上げ特例を満たす場合はそれぞれ850万円・1,250万円・2,500万円・3,500万円まで拡大)。補助下限は100万円で、補助率は中小企業者1/2、小規模事業者・再生事業者等は2/3です。
対象経費の必須・主軸は機械装置・システム構築費(単価10万円税抜以上)で、汎用PCやスマートフォン、車両、建物費などの単純購入は対象外です。基本要件として、事業計画期間中の付加価値額を年平均+4.0%以上、給与支給総額を年平均+3.5%以上伸ばすことなどが求められ、未達の場合は返還対象になる点も踏まえて計画を立てる必要があります。同業他社で既に相当程度普及している加工技術・製品の単純導入は対象外になりやすいため、「自社にとって新しい」だけでなく「市場から見て新規性があるか」を意識した事業計画が求められます。
中小企業省力化投資補助金(一般型)で工作機械を導入する場合
人手不足の中で既存の生産ラインを回すために、事業内容やレイアウトに合わせたオーダーメイド寄りの設備・システムを導入する場合はこちらが基本の選択肢です。補助上限は1億円で、単価50万円(税抜)以上の機械装置等の導入が必須要件になります。
3〜5年の事業計画で労働生産性(付加価値額÷従業員数)を年平均+4.0%以上向上させる計画が必要で、賃上げ目標も要件に含まれます。未達の場合は達成率に応じて返還が発生しうるため、「省力化はできたが賃上げは未達」という事態にならないよう、無理のない数値計画を立てることが大切です。新しい事業を始める投資ではなく、あくまで既存事業の省力化・生産性向上が主題である点が、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金との大きな違いです。
中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)の対象機種と注意点
カタログ注文型は、あらかじめ公的に登録された省力化製品(汎用機器・ロボット・IoT機器等)の中から選んで導入する、簡易・即効性重視の制度です。補助上限は1,500万円(大幅賃上げ計画を盛り込む場合)で、5軸制御マシニングセンタや複合加工機など、金属加工向けの機種もカタログの対象カテゴリに含まれています。
ここで機械加工業が見落としやすいのが、「カタログに登録されている型式かどうか」という制約です。同じ5軸制御マシニングセンタでも、メーカー・型式によってカタログ登録の有無は異なります。欲しい機種を先に決めてから「カタログに載っているか」を確認する順番だと、選定後に対象外だと判明して計画が振り出しに戻る事故が起きがちです。導入したい機種の候補が挙がった段階で、早めにカタログ登録状況と、共同申請が必要な販売事業者の対応可否を確認しておくことをおすすめします。カタログに無いオーダーメイド系の設備は、前述の一般型で申請するのが基本の整理です。また、労働生産性を年平均+3.0%以上向上させる計画と、導入後複数年度にわたる効果報告の義務がある点も一般型とあわせて確認しておきましょう。
デジタル化・AI導入補助金でCAD/CAM・生産管理システムを導入する場合
工作機械本体ではなく、CAD/CAM連携ソフトや生産管理システム、品質管理システムといったITツール中心の投資であれば、デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)が候補になります。補助上限は3,000万円です。機械加工業では、図面データと加工プログラムを連携させるCAD/CAM導入や、工程管理・原価管理のシステム化などで活用の余地があります。
工作機械本体とセットでシステムを導入する場合、どの経費をどの補助金に計上するかの線引きが必要になります。機械装置費が投資の中心であれば省力化投資補助金や新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の対象経費として整理し、ソフトウェア導入が投資の中心であればデジタル化・AI導入補助金として整理するのが基本的な考え方です。
申請前に必ず確認したい3つの注意点
- 交付決定前の発注・契約は対象外:どの制度も、交付決定が出る前に機械を発注・契約・購入してしまうと補助対象から外れます。設備の見積もりを取るのは早めに進めてよいですが、発注のタイミングは必ず交付決定後にしてください。
- 賃上げ要件未達時の返還リスク:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金、省力化投資補助金(一般型・カタログ注文型)は、いずれも賃上げや労働生産性の目標が要件に組み込まれています。未達の場合は減額・返還が発生しうるため、無理な上限額を狙うよりも、自社の実力に合った計画にすることが結果的にリスクを下げます。
- 事業計画は自社で作成する:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では、事業計画を外部に丸ごと作成させることは不採択・交付取消の対象になり得ます。専門家に相談する場合も、計画の骨子は自社の言葉で組み立てる姿勢が前提です。
よくある質問(FAQ)
Q. 同じ工作機械の導入で、複数の補助金に同時に申請できますか?
A. 同一の経費で複数の補助金を重複して受け取ること(二重受給)は認められません。1つの投資に対してどの制度で申請するかを、目的(新製品開発か省力化か)に沿って1つに絞り込む必要があります。
Q. 中古の工作機械でも補助金の対象になりますか?
A. 制度・公募回によって取り扱いが異なるため、中古設備を検討している場合は該当年度の公募要領で対象可否を必ず確認してください。本記事の内容は新品設備の導入を前提に整理しています。
Q. 補助金の申請はいつ頃から準備すればよいですか?
A. 事業計画の作成や、カタログ注文型であれば販売事業者との共同申請の調整に時間がかかるため、導入したい設備のめどが立った段階で早めに情報収集を始めることをおすすめします。公募スケジュールは年度・回次によって変わるため、直近の公募要領で申請受付期間と締切を確認しましょう。
まとめ
機械加工業が工作機械やシステムを導入する際に使える補助金は、大きく分けて「新製品・新サービスの開発」を支援する新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(革新的新製品・サービス枠)と、「既存工程の省力化」を支援する中小企業省力化投資補助金(一般型・カタログ注文型)、そして「ITツール導入」を支援するデジタル化・AI導入補助金に分かれます。2026年度は制度名の統合も行われているため、まずは自社の投資目的を明確にしたうえで、最新の公募要領で対象条件・補助上限・スケジュールを確認することが失敗しない第一歩です。制度選びや事業計画の作り込みに不安がある場合は、補助金に詳しい専門家に相談することをおすすめします。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























