
整体院と整骨院で創業融資はどう違う?使う制度は同じで、変わるのは審査の見られ方です
整体院と整骨院、どちらの形で独立するかを考えている段階で、「創業融資の受けやすさは変わるのだろうか」「整骨院のほうが有利なのではないか」と気になる方は多いと思います。調べてみても、整体院向けの融資制度と整骨院向けの融資制度が別々にあるかのような説明に行き当たり、かえって混乱してしまうこともあります。
先に結論からお伝えします。整体院でも整骨院でも、創業時に使う融資制度そのものは基本的に同じです。「整体院用の融資」「整骨院用の融資」という区分は存在しません。変わるのは制度ではなく、事業計画の組み立て方と、審査で見られるポイントのほうです。この記事では、両者の違いが創業融資のどこに効いてくるのかを4つの観点から整理します。なお融資制度や金利は変わりやすいため、本記事の数字は執筆時点(2026年7月)のものです。申請時は日本政策金融公庫など公式の最新情報を必ずご確認ください。
まず前提:整体院と整骨院は何が違うのか
融資の話に入る前に、両者の違いを押さえておきます。ここを曖昧にしたまま計画を作ると、審査の場で説明が揺れてしまいます。
- 整骨院(接骨院):柔道整復師という国家資格を持つ方が開設します。施術所として所定の届出が必要で、骨折・脱臼・打撲・捻挫などの外傷に対する施術については、健康保険の療養費の対象になる場合が多いです
- 整体院:国家資格が必須の業態ではありません。開設のハードルは低い一方で、健康保険の対象にはならず、売上は自費診療のみで構成されます
この「国家資格の有無」と「健康保険が使えるかどうか」の2点が、創業融資の審査での見られ方をまるごと変えていきます。順番に見ていきましょう。
違い1:売上計画の根拠の作り方が変わる
創業融資では、創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金をもとに審査が行われます。実績がない分、売上計画にどれだけ根拠を持たせられるかが評価を左右します。
整骨院の場合、売上は療養費(保険分)と自費分の2階建てになります。計画では、この2つを分けて示す必要があります。保険分は施術できる範囲が限られているため、「どの症状に、月あたり何件対応する見込みか」を積み上げていくことになります。単価が制度側で決まる部分があるぶん、根拠は立てやすい反面、単価を自分で引き上げることはできません。
整体院の場合、売上は自費のみのシンプルな構成です。そのかわり、単価も来院頻度も自分で設計することになります。裏を返せば、「なぜその単価で、その人数が来るのか」を全部自分で説明しなければなりません。ここが整体院の計画で最も甘くなりやすいところです。近隣の相場、提供するメニューと施術時間、1日に対応できる上限人数、想定するリピート率。この4点を数字でつなげられるかどうかで、計画の説得力が大きく変わります。
「整体院のほうが融資に不利」と言われることがありますが、正確には不利なのではなく、売上の根拠を自力で作らなければならないぶん、計画の作り込みが効いてくる、という言い方のほうが実態に近いと思います。
違い2:整骨院は「入金までのタイムラグ」を運転資金に織り込む
ここが、両者の最も実務的な違いでありながら、見落とされやすいポイントです。
整体院は自費のみですので、施術したその場で現金やキャッシュレス決済で入金されます。売上が立つタイミングと、お金が入るタイミングがほぼ一致します。
一方、整骨院の療養費(保険分)は、施術した月にそのまま入金されるわけではありません。施術後に請求手続きを行い、審査を経て支払われる流れになるため、実際に口座に入るまでには一定の期間が空きます。この期間は保険者や請求の運用によって異なりますが、月単位のずれが生じるのが一般的です。
つまり整骨院の場合、開業してから最初の療養費が入金されるまでの数か月間、保険分の売上は「立っているのに、まだ現金化されていない」状態が続きます。その間も家賃・人件費・リース料は毎月出ていきます。
これは、運転資金として借りるべき金額が整体院より厚くなる、ということを意味します。「患者が定着するまでの数か月分」だけでなく、「療養費が入金され始めるまでの立ち上がり分」を上乗せして見積もる必要があるわけです。ここを織り込まずに運転資金を薄く申請してしまうと、患者数は計画どおりでも手元資金が先に尽きる、という事態が起こり得ます。
逆に言えば、このタイムラグを理解したうえで運転資金を組み立てられている計画は、事業をわかっている人が作った計画として伝わります。審査の場では、この種の「業界特有の資金繰りを踏まえているか」が効いてきます。
違い3:資格が経歴の評価に効く。整体院は別の形で補う
創業融資の審査では、これまでの経験・経歴が、事業の継続性を裏づける材料として見られます。
整骨院で開業する場合、柔道整復師という国家資格そのものが、専門性と参入障壁の裏づけになります。加えて、勤務していた整骨院での施術経験があれば、経歴と開業する事業内容の一貫性を示しやすくなります。
整体院の場合、国家資格という分かりやすい裏づけがありません。そのため、実務経験をどう示すかが論点になります。整体院やリラクゼーションサロンでの勤務経験、担当してきた顧客数、任されていた役割などを、計画の中で具体的に言語化しておくとよいでしょう。
なお、業界での経験が乏しい状態で開業する場合、「同業の知人から定期的に助言をもらう」「専門的な業務は外部に委託する」といった対策を挙げても、経営そのものへの関与としては弱く、有効なカバー策とは言えません。経験不足を補うのであれば、事業経験者を役員として迎えるなど、事業運営に直接関わる体制を整えるほうが説得力を持たせやすくなります。
違い4:設備資金の規模と返済期間の考え方
設備投資の中身も、両者で変わります。
整骨院では、施術ベッドに加えて、電気治療器や超音波機器などの物理療法機器を揃えるのが一般的です。そのぶん設備資金の額は大きくなりやすく、見積書をきちんと揃えて、開業当初の患者数に見合った投資であることを説明できる状態にしておく必要があります。
整体院では、施術ベッドと内装が中心になり、設備資金は相対的に軽くなります。そのぶん資金の重心は、集客のための広告費や、患者が定着するまでの運転資金のほうに移ります。
日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合、返済期間は設備資金が20年以内、運転資金が原則10年以内とされています(据置期間はいずれも5年以内)。設備の比重が大きい整骨院と、運転資金の比重が大きい整体院とでは、借入の内訳と返済スケジュールの形が自然と変わってくることになります。
両者に共通する制度の基本
制度そのものは共通ですので、押さえるべき基本も同じです。
- 主な選択肢:日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)です。なお、かつての「新創業融資制度」は2024年3月に廃止されており、古い制度名で情報を探すと混乱しやすいのでご注意ください
- 担保・保証人:創業期の方は、原則として無担保・無保証人で利用できます
- 金利:2026年6月1日現在、無担保で創業期(税務申告を2期終えていない時期)に利用する場合の基準利率は年3.45〜5.15%です。創業期の方には原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが案内されていますが、適用可否は利用する制度・審査・条件により異なる可能性がありますので、詳細は申請先でご確認ください
- 据置期間:元金返済の据置を5年以内で設定でき、据置中は利息のみの支払いです。患者が定着するまでの資金繰りに余裕を持たせられます
- スケジュール:書類提出後、審査から実行までおおむね3週間〜1か月が目安です。創業計画書や見積書などの準備期間を含めると、合計で2か月程度を見ておくと安全です
自己資金については、制度上、額や割合の要件は決まっていません。ただし自己資金の額は審査の重要な判断材料であり、多いほど計画への本気度が伝わりやすくなります。面談の時点で口座に確認できる形にしておきましょう。開業前に自費で購入した施術用ベッドや器具、資格取得にかかった費用などは、「みなし自己資金」として一定範囲で評価されることがありますので、領収書は必ず保管しておいてください。
よくある質問
整体院と整骨院では、どちらが融資に通りやすいですか
業態そのもので有利・不利が決まるわけではありません。審査で見られるのは、事業計画の説得力・自己資金・経験・資金使途の妥当性などです。整骨院は保険分があるぶん売上の根拠を立てやすい一方、療養費の入金タイムラグを織り込んだ運転資金の設計が求められます。整体院は売上の根拠を自力で作る必要がある一方、資金繰りはシンプルです。それぞれに詰めるべき論点が違う、と捉えていただくのが実態に近いと思います。
整体院から始めて、あとから整骨院に切り替えることはできますか
整骨院として保険を扱うには柔道整復師の国家資格が前提になりますので、資格をお持ちでない場合、業態の切り替えは現実的ではありません。開業前の段階で、どちらの形で進めるのかを固めておくことをおすすめします。
資金使途に入れられない費用はありますか
店舗を借りる際の敷金・礼金・仲介手数料や保証会社費用は、資金使途には含めません。また、開業者自身の生活費も運転資金の対象にはなりません。一方で、従業員の給与や役員報酬は、事業活動に必要な経費として運転資金に計上できます。
一度審査に落ちると、次回の審査に影響しますか
日本政策金融公庫は個人信用情報機関に加盟していますが、審査に落ちたこと自体が信用情報に記録されることはありません。一方で、公庫内には審査に落ちた記録が残ります。そのため次の審査では、落ちたことを考慮に入れた形になるため、慎重に扱われる可能性があります。原因を特定せずに再申請しても結果は変わりにくいため、否決の理由を潰してから臨むことが大切です。
まとめ
整体院と整骨院で、創業時に使う融資制度は基本的に同じです。日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金が主な選択肢になり、限度額も金利も据置期間も、業態によって別枠が用意されているわけではありません。
違いが出るのは、その制度をどう使うかの設計です。整骨院は療養費と自費の2階建てで売上の根拠を立てやすい反面、請求から入金までのタイムラグを運転資金に織り込む必要があります。整体院は資金繰りがシンプルな一方、単価と来院数の根拠を自力で組み立て、国家資格に頼らない形で経歴の説得力を示すことが求められます。設備資金の重さも異なるため、借入の内訳と返済期間の形も自然と変わってきます。
ちなみにV-Spiritsグループでは、これまでに712件(2026年6月時点)の創業融資を支援しており、そのうち治療院(整骨院・鍼灸等)が51件を占めています。業態ごとに詰めるべき論点が違う分野ですので、事業計画の作り込みや運転資金の見積もりに迷われた際は、早めに専門家へご相談いただくと準備を進めやすくなります。融資制度や金利は変わりやすいため、申請時には必ず最新の公式情報をご確認ください。
【無料相談のご案内】
融資を受けるには何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























