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コラム

習い事スクールと学習塾の開業融資の違い|制度は同じでも返済期間と計画書の作り方が変わる理由

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学習塾と習い事スクール、開業融資の審査はどこが違うのか|同じ制度でも計画書で見られる点が変わります

「学習塾を開くつもりだったけれど、英会話やプログラミング、ダンスのような習い事スクールのほうが向いているかもしれない」。開業の形を決めきる前に、こう迷う方は少なくありません。そして両方の情報を集めていくと、「学習塾の開業融資」と「スクールの開業融資」がそれぞれ別々に解説されていて、 結局どこが違うのかが分からないという状態になりがちです。

先に結論をお伝えすると、両者で使える融資制度そのものは変わりません。違いが出るのは制度ではなく、 事業計画書の中身と、審査で確認されるポイントのほうです。この記事では、開業の形をまだ決めていない方に向けて、その違いを4つの観点で並べて整理します。数字はいずれも執筆時点(2026年8月)の情報で、制度や利率は変わりやすいため、申請の際は日本政策金融公庫など申請先の最新情報をご確認ください。

まず前提|制度は業種で分かれていません

個人事業主・中小企業の創業時の代表的な選択肢は、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。2024年3月に「新創業融資制度」が廃止され、現在の主力制度になっています。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)で、原則として無担保・無保証人での借入が可能です。

この制度は「学習塾向け」「スクール向け」というように業種で分かれてはいません。つまり、学習塾でも習い事スクールでも、申し込む窓口も制度も同じです。審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。

2026年6月1日現在の基準利率は、創業期(税務申告を2期終えていない時期)に利用する場合で年3.45〜5.15%です。創業期の方が利用する場合は、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性がありますが、適用可否は利用する制度や審査・条件により異なるため、必ず下がると考えず申請先で確認してください。元金返済の据置期間は5年以内で設定でき、据置中は利息のみの支払いとなります。

スケジュールの目安は、書類提出後おおむね3週間から1か月です。創業計画書や自己資金の裏づけとなる資料、見積書などをそろえる時間を含めると、準備に1か月、審査と実行に1か月で、合計2か月程度を見ておくと安全です。この点も学習塾と習い事スクールで変わりません。

では、何が違うのでしょうか。ここから4つの観点で見ていきます。

違い1|資金使途の構成が違うので、返済期間の使い方が変わる

最初の、そして最も大きな違いは、必要になるお金の中身です。

学習塾は、机・椅子・ホワイトボード・教材・パソコンといった比較的軽い設備で始められる形が多く、費用の重心は物件の取得と広告、そして開業後しばらくの運転資金に寄ります。一方、習い事スクールは種目によって設備の重さが大きく変わります。ダンスや体操であれば床材・鏡・防音、音楽教室であれば防音室と楽器、プログラミング教室であれば機材というように、内装や機器への投資額が先に大きく立ちます。

この違いが効いてくるのが、返済期間です。新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合の例として、返済期間は設備資金が20年以内、運転資金が原則10年以内とされています(いずれも据置期間は5年以内)。同じ金額を借りても、設備資金として組める部分が多いほど返済期間を長く取れるため、毎月の返済額を抑えやすくなります。

したがって、設備の重い習い事スクールは、投資額が大きくなる一方で長い返済期間を使いやすいという構造があります。逆に、設備の軽い学習塾は借入総額を抑えやすい代わりに、運転資金の比重が高くなると返済期間が短くなり、月々の負担感が出やすくなります。「借りられる額」だけを見て比べると、この差を見落とします。

なお、設備をリースでそろえる選択肢もありますが、リースには次のようなデメリットがあります。

  • 連帯保証人が必要になる
  • 機器の所有権が持てない
  • 契約期間中の中途解約が難しい
  • 故障時の修理負担が借主側になる契約が多い

融資とリースのどちらが有利かは、資産計上の考え方や資金繰りの状況によっても変わるため、賃貸借費用の負担も含めて税理士や金融機関に相談しながら判断することをおすすめします。

違い2|売上予測の組み立て方が違う

2つ目は、事業計画書の売上予測です。ここは学習塾と習い事スクールで、置くべき前提がはっきり分かれます。

学習塾は、月謝制で在籍が続く前提を置きやすい事業です。学年ごとの在籍数、コース単価、季節講習の追加売上、そして年度末の卒業と春の新規入会という循環が読みやすく、売上予測は「在籍数×単価」の積み上げで説明しやすくなります。その代わり、受験の学年で一斉に抜けるという構造的な離脱があるため、そこを織り込んでいない計画は説得力を欠きます。

習い事スクールは、種目によって課金の形が変わります。月謝制のほかに、都度払いのレッスン、回数券、短期集中の講座などが混ざりやすく、さらに振替レッスンの運用によって同じ在籍数でも売上と稼働率が変わります。加えて、体験レッスンからの入会率と、季節による波(夏休みの短期講座など)が読みにくい要素として残ります。

そのため、習い事スクールの計画では「何人集めるか」よりも、 1コマあたり何人まで受けられるのか(定員)と、週に何コマ回せるのか(稼働)から積み上げるほうが、根拠のある数字になります。学習塾が在籍数から積み上げるのに対して、習い事スクールは枠の埋まり方から積み上げる、という違いだと考えると整理しやすいでしょう。

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違い3|経験と講師体制の示し方が違う

3つ目は、事業をやり切れるかを示す部分です。

学習塾は、代表者自身が指導経験を持っているケースが多く、そこが計画の説得材料になります。一方で規模を大きくするほど講師の確保が課題になるため、講師の採用と研修をどう回すのかを計画に入れておくと、在籍数の前提が現実的に見えてきます。

習い事スクールは、指導そのものに専門性が求められる種目が多く、代表者や講師の実績・指導歴が計画の裏づけになります。反対に、代表者自身が指導者ではなく運営に回る形であれば、講師をどう確保しているのかが計画の中心になります。

もし未経験の分野で始める場合、経験不足をどう補うかが審査の論点になります。ここで注意したいのは、 補い方として弱いものがあるという点です。「同業のメンターから定期的に助言を受けている」「経理や専門技術を業務委託でプロに任せている」といった対策は、経営そのものへの関与としては弱く、有効なカバー策とは言えません。より説得力を持たせるには、事業経験者を役員として迎えるなど、事業運営に直接関わる体制を整えることが有効です。

違い4|「創業」に当たるかどうかは、業種ではなく開業の形で決まる

4つ目は、そもそも創業融資を使えるかどうかの入口です。ここは学習塾か習い事スクールかではなく、 どういう形で始めるかで決まります。

創業期の方とは、新たに事業を始める方、または事業開始後に税務申告を2期終えていない方を指します。この定義に当てはまれば、原則として無担保・無保証人で各種融資制度を利用でき、前述の利率引下げの対象としても案内されています。

学習塾と習い事スクールの違い早見表

観点 学習塾 習い事スクール
使う制度 同じ(新規開業・スタートアップ支援資金など。業種で分かれていない)
費用の重心 物件・広告・運転資金 内装・機材(種目により大きく変動)
返済期間の使い方 運転資金の比重が高いと原則10年以内が中心 設備資金の比重が高く20年以内を使いやすい
売上予測の積み上げ方 在籍数×単価+季節講習。受験学年の一斉離脱を織り込む 定員×コマ数の稼働率。体験からの入会率と季節の波
経験の示し方 代表者の指導経験+講師の採用・研修体制 種目の専門性・指導歴+講師の確保
創業扱いの判定 業種ではなく開業の形で決まる(法人成りは原則対象外/別事業の新法人は創業)

どちらを選んでも共通して見られること

自己資金

公庫の創業融資では、自己資金の額が審査の重要な判断材料になります。一方で、制度上、自己資金の額や割合の要件は決まっていません。「総額の何分の1が必須」といった固定要件は現行制度にはないため、割合の話に振り回されず、実際にいくら用意できているかを整えるほうが実務的です。自己資金は面談時点で口座に確認できる形にしておきます。

また、創業前に自費で取得した資格・設備や備品の購入・テストマーケティング費用などは、 みなし自己資金として一定範囲で評価されることがあります。領収書を必ず保管しておきましょう。指導資格の取得費用や、開業前に行った体験会の費用などが該当し得る点は、学習塾でもスクールでも同じです。

決算書

創業融資は事業として創業した実績がなくても申し込めますが、決算書をまったく見ないわけではありません。新しく設立した会社であっても、一期でも決算が締まっていれば、その決算書が確認されます。また、代表者が別に会社を経営している場合は、その会社の決算書も確認の対象になります。

一度断られた場合

公庫内には審査に落ちた記録が残ります。そのため次の審査では、落ちたことを考慮に入れた形になるため、慎重に扱われる可能性があります。

よくある質問

学習塾と習い事スクールでは、どちらが融資に通りやすいですか

業種によって通りやすさが決まっているわけではありません。使う制度が同じである以上、差が出るのは事業計画の説得力と自己資金などの準備状況です。設備が重い分だけ借入額が大きくなる習い事スクールは、そのぶん計画の根拠をより丁寧に示す必要がある、という違いのほうが実務的です。

学習塾と習い事スクールを1つの教室で併設する場合、計画はどう書けばよいですか

売上の積み上げ方が異なるため、同じ表にまとめてしまうと根拠が見えにくくなります。在籍ベースの部分と、コマの稼働ベースの部分を分けて示し、教室と時間帯をどう共有するのかを書き添えると、稼働の実現性が伝わりやすくなります。

フランチャイズに加盟して始める場合、必要書類は変わりますか

創業計画書・自己資金の裏づけ資料・見積書・本人確認書類などです。加盟金や内装費をどこまで借入で賄うかは、資金使途として個別に説明することになります。

開業時の税務や社会保険の手続きも一緒に相談できますか

開業に伴う税務処理や労務・社会保険の手続きは、それぞれ税理士・社会保険労務士の専門領域になります。具体的な手続きや処理の方法については、各分野の専門家にご相談ください。

まとめ

学習塾と習い事スクールの開業融資は、制度そのものは同じで、違いは事業計画のつくり方に現れます。整理すると次のとおりです。

  • 資金使途の構成が違うため、設備資金20年以内と運転資金原則10年以内という返済期間の使い方が変わる
  • 売上予測は、学習塾が在籍数の積み上げ、習い事スクールが定員とコマの稼働率の積み上げになりやすい
  • 経験の示し方が違い、未経験を補うなら事業経験者を役員に迎えるなど事業運営に直接関わる体制が有効
  • 創業融資を使えるかは業種ではなく開業の形で決まる(法人成りは原則対象外、別事業の新法人は創業扱い)

どちらの形で始めるにせよ、審査では事業計画書と自己資金などをもとに総合的に判断されます。制度や利率は変わりやすいため、数字は申請時点の公式情報で確認しながら、早めに準備を始めていただければと思います。

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小峰

この記事を書いた人

小峰精公/Kiyotaka Komine

元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人

多胡藤夫/Fujio Tago

元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

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中野裕哲

中野裕哲/Nakano Hiroaki

税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授

税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。

経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。

【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。

中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。

【主な実績】

  • 起業支援・経営支援の豊富な実績
  • 起業相談件数3,000件以上
  • 資金調達支援1000件以上
  • 大企業Webサイト多数監修
  • 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)

V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。

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