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コラム

医療法人設立と個人クリニック開業、融資審査は変わる?資金調達の違いを比較

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医療法人設立と個人クリニック開業、融資審査はどう変わるか徹底比較

クリニックの開業を控える医師の中には、最初から医療法人として開業すべきか、まずは個人開業医としてスタートすべきか迷う方が少なくありません。とくに開業資金の調達方法や融資審査の受けやすさは、法人形態によって変わるのか気になるところです。この記事では、医療法人設立と個人クリニック開業で融資面がどう違うのかを、創業融資の基本的な仕組みに沿って比較します。なお本文中の制度名・金利・限度額は執筆時点の情報です。実際の適用条件は制度・審査・自治体により異なるため、必ず最新の公的情報でご確認ください。

医療法人設立と個人開業、そもそも何が違うのか

個人クリニック開設の位置づけ

個人開業医としてクリニックを開設する場合は、開業予定地を管轄する保健所への診療所開設届の提出が中心となり、比較的スピーディーに開業手続きを進めやすいのが特徴です。保険診療を行うためには、保健所への開設届に続いて厚生局の保険医療機関としての指定も必要になりますが、行政手続きの負担は医療法人に比べて軽い傾向があります。

医療法人は都道府県知事の認可が必要

一方、医療法人としてクリニックを運営するには、都道府県知事の認可を受ける必要があります。一般的には、医療機関を長期的・安定的に経営できるかどうかを審査するため、原則として一定期間(目安として1年以上)の個人開設の実績が求められる運用になっています。そのため、開業と同時にいきなり医療法人としてスタートするケースは少なく、まず個人開業医としてクリニックを運営し、経営が軌道に乗った段階で医療法人化を検討するという流れが一般的です。

融資審査は「医療法人か個人か」で変わるのか

公庫の創業融資は個人・法人いずれも対象になり得る

日本政策金融公庫の創業融資(新規開業・スタートアップ支援資金など)は、個人事業主・法人のどちらであっても対象になり得ます。基準利率は2026年6月1日現在、無担保・創業期(税務申告を2期終えていない場合)で年3.45〜5.15%です。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)、元金返済の据置期間は5年以内が目安とされています。これらの数字は制度・審査・時期によって変わる可能性があるため、申請時には必ず最新の情報をご確認ください。

審査で見られるのは事業計画書と自己資金など

審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。法人形態そのものが直接的に有利・不利を決めるわけではなく、開業する医療機関としての事業計画の説得力や自己資金の状況が重要な判断材料になる点は、個人開業でも医療法人でも変わりません。

「法人成り」は創業融資の対象外になりやすい点に注意

ここで注意したいのが、既に運営している個人事業をそのまま法人化する「法人成り」の扱いです。一般的に法人成りの場合は、既に事業実績があるとみなされるため、創業融資の対象外となり、通常の融資の扱いになります。個人クリニックをそのまま医療法人化するケースは、この法人成りに近い扱いになりやすい点に注意が必要です。一方で、個人事業主が営んでいる事業とは別の、新しい事業を行う法人を新たに設立する場合は、その新法人にとっては創業にあたるため、創業融資を利用できる可能性があります。自院の状況がどちらに近いかは、個別の事情によって判断が変わるため、金融機関や専門家に事前に確認しておくと安心です。

医療法人ならではの融資・手続き上の注意点

認可・開設許可などの行政手続きが融資実行のスケジュールを左右する

医療法人の設立には、都道府県にもよりますが仮申請から認可までおおむね4〜6か月、そこから開設までさらに1〜2か月程度かかるのが一般的とされています。個人開業に比べて手続きに要する期間が長くなりやすいため、融資の実行タイミングと開業準備のスケジュールを合わせて逆算しておくことが重要です。

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個人で受けた融資を医療法人へ引き継げないことがある

将来的に医療法人化を検討している場合、注意しておきたいのが融資の引き継ぎです。都道府県によっては、個人開業時に借り入れた運転資金の借入れを、そのまま医療法人へ引き継がせない取り扱いになっている場合があります。この場合、個人開業時に受けられた低金利・固定金利での借入条件を医療法人側で維持できなくなる可能性があるため、法人化のタイミングを検討する際にはあわせて確認しておくとよいでしょう。

医療法人化時は保証人が必要になる場合がある

個人開業医としての創業融資は、原則として無担保・無保証人での借入れが可能とされていますが、医療法人化する際には保証人が必要になるケースがあるとされています。法人形態を変えることで、融資条件そのものが変わりうる点は、開業前の資金計画を立てるうえで押さえておきたいポイントです。

公庫以外の資金調達ルート(選択肢として)

福祉医療機構(WAM)の医療貸付

医療機関向けの資金調達手段としては、独立行政法人福祉医療機構(WAM)による医療貸付事業もあります。医療施設の整備に必要な建築資金等を長期・固定・低利で融資する制度ですが、いわゆるビル診(テナント開業)で担保となる抵当権を設定できない場合は対象外となるなど、融資を受ける本人が建物を所有していることが前提になる点に注意が必要です。什器・備品やベッドといった建設資金以外の費用も対象外とされています。自院の開業形態によって利用できるかどうかが変わるため、選択肢の一つとして早めに確認しておくとよいでしょう。

民間金融機関・制度融資・リースという選択肢

このほか、民間金融機関からの融資や、自治体・金融機関・信用保証協会が連携する制度融資、医療機器などをリースで導入する方法もあります。リースには初期費用を抑えられるメリットがある一方で、連帯保証人が必要になる、機器の所有権が持てない、契約期間中の中途解約が難しい、故障時の修理負担が借主側になる契約が多いといったデメリットもあります。融資とリースのどちらが有利かは資金繰りの状況によっても変わるため、賃貸借費用の負担も含めて専門家に相談しながら判断することをおすすめします。

開業前に押さえておきたい判断の順序

ここまで見てきたように、医療法人としていきなり開業するケースは少なく、多くの場合はまず個人開業医として創業融資を活用してスタートし、経営の実績を積んだうえで医療法人化を検討するという順序になります。融資審査そのものは法人形態で単純に有利・不利が決まるわけではありませんが、行政手続きにかかる期間、融資の引き継ぎの可否、保証人の要否といった点は法人形態によって変わりうるため、開業前の段階でこれらを踏まえた資金計画を立てておくことが大切です。

よくある質問(FAQ)

Q. 開業と同時に医療法人を設立することはできますか

制度上不可能ではありませんが、実務上は医療法人の認可にあたって一定期間の個人開設の実績を求められる運用が一般的であり、開業と同時に医療法人としてスタートするケースは多くありません。まず個人開業医として運営し、経営が安定してから医療法人化を検討する流れが一般的です。

Q. 医療法人の設立手続きは自分で進められますか

都道府県知事の認可申請や定款の作成など、医療法人の設立には専門的な手続きが伴います。具体的な手続きの進め方については、司法書士や行政書士などの専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

まとめ

医療法人設立と個人クリニック開業では、融資審査で見られる基本的な判断材料(事業計画書と自己資金など)そのものに大きな違いはありません。一方で、医療法人の認可にかかる期間、個人開業時の融資の引き継ぎ可否、保証人の要否といった手続き・条件面では違いが生じうるため、開業前にどちらの形態で進めるかを慎重に検討する必要があります。制度の詳細や自院に合った資金計画については、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

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小峰

この記事を書いた人

小峰精公/Kiyotaka Komine

元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人

多胡藤夫/Fujio Tago

元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

中野裕哲紹介画像

この記事を監修した人


中野裕哲/Nakano Hiroaki

税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授

税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。

経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。

【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。

中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。

【主な実績】

  • 起業支援・経営支援の豊富な実績
  • 起業相談件数3,000件以上
  • 資金調達支援1000件以上
  • 大企業Webサイト多数監修
  • 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)

V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。

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