
VCから出資を受けた赤字スタートアップは銀行融資でどう評価されるのか
シリーズAで数億円の調達に成功したのに、銀行の融資相談では反応が思ったより慎重だった。そんな戸惑いを抱えるCFOの方から、こんなご質問をいただきました。
VCから数億円の出資を受けましたが、成長投資を優先しているので決算は赤字です。銀行に融資の相談をしたところ、反応が思ったより慎重でした。VCから出資を受けている実績は、銀行の審査ではどう見られるのでしょうか?
回答者
小峰精公
元信用金庫職員で融資審査の実務に詳しい専門家
私が信用金庫で融資審査に携わっていた経験から言えば、VCと銀行はそもそも見ている方向が違います。同じ「出資を受けた企業」を評価する場面でも、VCが重視する基準と銀行が重視する基準は重なる部分もあれば、大きくずれる部分もあります。資金調達に成功した直後ほど、この違いに戸惑う経営者の方が多い印象です。投資家には評価されたのに銀行の反応が芳しくないと感じるのは、評価の物差しそのものが異なるためで、決して矛盾した話ではありません。
VCは将来の成長性や事業の伸びしろを評価し、将来のリターンを期待して出資します。多少の赤字があっても、それが成長投資によるものであれば、将来の企業価値の拡大につながると判断すれば出資を決めます。一方で銀行が見ているのは、貸したお金をきちんと返済してもらえるかどうかです。将来性そのものよりも、現在の資金繰りや収益の安定性、そして返済原資をどう確保しているかに関心が向きます。手元の資金が今後どのくらいのペースで減っていくのか、収益が安定軌道に乗るまでにどれくらいの期間を見込んでいるのかといった点も、合わせて確認される項目です。この視点の違いが、同じ決算書を見てもVCと銀行で評価が分かれる理由になっています。
だからといって、成長投資を優先した結果の赤字が単純にマイナス評価になるわけではありません。私が審査の現場で見てきた中でも、赤字そのものより、その赤字をどう説明できるかで印象が大きく変わるケースは珍しくありませんでした。重要なのは、今後どのように収益を安定させ、返済原資を確保していく見通しがあるかを、具体的な根拠とともに説明できるかどうかです。資金の使い道や、どの段階で収支のバランスが改善していく計画なのかを言葉にできているかどうかで、担当者の受け止め方は変わってきます。
その意味で、VCからの出資を受けている実績は、説明材料としてプラスに働く場面があります。資本基盤がある程度厚くなっていること、今後も追加の資金調達が見込める状況にあること、そして株主であるVCによるガバナンスが機能し、経営の規律が働いていると見てもらえることなどです。株主として外部の目が入っていることは、経営の独りよがりを防ぐ仕組みとして伝わりやすい材料でもあります。これらは、短期的な資金繰りの不安を補う材料として、審査の担当者に伝わる情報になり得ます。
一方で、赤字の中身を説明できなければ、出資実績だけでは評価は上がりません。先行投資による一時的な赤字なのか、それとも本質的な収益性の問題を抱えているのかは、銀行にとって大きな分かれ目です。前者であれば、投資が一段落した後の収益見通しを示すことで理解を得やすくなりますが、後者であれば、出資があっても返済能力への懸念は解消しにくくなります。採用や広告、開発など、どの費目にどれだけ先行投資しているのかを分解して伝えられるかどうかも、説明の説得力を左右するポイントです。
VCの評価と銀行の評価は物差しが異なるという前提に立ち、赤字の背景と今後の収益見通しを丁寧に説明することが、銀行との信頼関係を築く近道になります。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


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中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























