
外注費の先払いで資金不足になる?案件ごとの立替額の計算方法と対策を解説
外注先に先に支払い、お客様からの入金は後になる。Web・映像制作、イベント運営、内装・リフォームの下請けなどで開業して1〜2年目の方は、仕事が増えるほど通帳の残高が減っていく感覚に戸惑うことがあります。
この記事では、案件ごとの立替額を仮の数字で出し、不足しやすい月を事前に見つける手順を説明します。そのうえで、着手金や中間払いの交渉の順番と、融資を相談するタイミングまで整理します。
外注費を先に払う仕事は、黒字でも手元資金が減る
粗利が出る仕事でも、外注先への支払いが先、お客様からの入金が後になると、その間の資金は自分で用意することになります。この「払ってから入金されるまでの立替」が、受注が増えるほど膨らんでいきます。
損益計算書の上では黒字でも、入金前に外注費の支払日が来れば、手元資金は先に減ります。見るべきなのは利益の額ではなく、いつ・いくら払い、いつ・いくら入るかの並びです。
1案件の立替額を仮の数字で出してみる
次の数字は、考え方を示すための仮の数字です。相場や平均を示すものではありません。
- 売上(請負代金):100万円
- 外注費:60万円(着手した月の末に支払い)
- 入金:着手した月の2か月後の月末
- 人件費や家賃などの固定費は含めない
立替額と立替期間の2つを見る
この案件では、外注費60万円を払ってから入金まで約2か月、自分の資金で立て替えます。立替額は60万円、立替期間は約2か月です。立替額が同じでも期間が長いほど、ほかの支払いと重なる可能性が高まります。
着手金が3割ある場合との比較
同じ案件で、受注時に着手金として30万円(仮の数字)を受け取れた場合、残りの70万円が2か月後に入る形になります。外注費の支払いと同じ月に30万円が入るので、立替額は60万円から30万円に減ります。
案件が増えると、不足はどう大きくなるか
上の案件を、毎月1件ずつ受注していく場合を月別に並べます(仮の数字、単位は万円、固定費は含めない)。
| 月 | 外注費の支払い | 入金 | その月の収支 | 累計 |
|---|---|---|---|---|
| 1か月目 | -60 | 0 | -60 | -60 |
| 2か月目 | -60 | 0 | -60 | -120 |
| 3か月目 | -60 | 100 | +40 | -80 |
| 4か月目 | -60 | 100 | +40 | -40 |
累計が最も下がるのは2か月目で、不足額は120万円です。受注が毎月2件に増えると、同じ並びで不足額は倍の240万円になります。仕事が増えるほど不足が大きくなるのは、この構造によります。
案件別の入出金予定表を作る
手順は次のとおりです。
- 案件ごとに、外注費の支払日と金額、入金日と金額を月別に書き出す
- 全案件の表を月ごとに合計し、累計の列を作る
- 累計がマイナスになる月を探し、最も下がる月とその額を確認する
- 新しい案件が入るたび、またはスケジュールが変わるたびに更新する
会社全体の通帳残高だけを見ていると、不足は支払日の直前まで見えません。案件単位で並べると、数か月先の不足月を事前に見つけられます。
不足を小さくする条件交渉の順番
不足額は、契約の条件で小さくできます。優先する順番は次のとおりです。
- 着手金をもらう:立替額そのものが減るため、最初に交渉する
- 中間払いをもらう:納品前に一部が入るため、立替期間が短くなる
- 請求書を出すタイミングを詰める:納品から請求までの日数を減らす
- 外注先への支払日を相談する:関係性や取引条件によるため、最後に検討する
着手金や中間払いは、受注の時点で話しておくと通りやすくなります。着手後に頼むと、お客様側も社内手続きが必要になることがあるためです。通らなかった場合は、案件の規模を小さく分けて受ける、受注の時期をずらすといった調整も選択肢になります。
支払期日など取引条件の法的な扱いは、契約の内容や相手によって変わります。判断に迷う場合は、弁護士などの専門家に確認してください。
それでも足りない月が見えたら、融資の相談を考える
条件交渉をしても不足が残る場合は、取引先の金融機関や日本政策金融公庫など、融資の窓口に相談する方法があります。ここでは日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」を例に、2026年10月執筆時点で確認できる範囲を整理します。
運転資金として認められるもの
運転資金とは、事業を回していくために必要な資金のことです。人件費や役員報酬は、事業活動に必要な経費として運転資金の対象になります。資金使途はあくまで「事業に必要な支出」であることが前提のため、個別の支出が資金使途として認められるかどうか判断に迷う場合は、申込先や専門家に確認しながら計画を整えることをおすすめします。
上の入出金予定表は、資金使途と必要額を説明するときの材料になります。審査では、同じ業種での勤務経験、自己資金、事業計画の具体性、資金使途と調達額の整合、信用情報などをもとに判断されます。表の数字と申込額が合っているかが、見られる点のひとつになります。
返済期間と据置期間の枠
新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合の例として、運転資金の返済期間は10年以内、据置期間は5年以内とされています。これは制度上の上限であり、申込者が選べるものではありません。適用される利率や据置期間、返済期間は、審査のうえ金融機関が決定します。希望は申込時に伝えられますが、決めるのは金融機関です。借りられるかどうかも、個別の審査で決まります。

💬 執筆者の小峰から一言
融資は申し込めば翌週に入るものではありません。2026年10月時点の案内では、書類提出後おおむね3週間〜1か月で実行され、書類の準備を含めると2か月程度を見込んでいます。不足月が目前に来てからでは間に合わない計算になるので、予定表で不足月が見えた時点で、窓口に相談する流れがおすすめです。
よくある質問
立替額はどこまで見ておけばよいですか。
固定費や税金の支払いも含めた月別の表で、累計が最も下がる額を見ます。この記事の設例は固定費を除いた仮の数字なので、実際の数字で作り直してください。
着手金を断られたらどうすればよいですか。
中間払いに切り替える、請求のタイミングを早める、案件を分けて受けるといった調整があります。どれも通らない場合は、その案件を受ける月の不足額を表で確かめたうえで、受注するかどうかを判断します。
開業直後でも融資の相談はできますか。
創業期の方が利用できる制度はありますが、融資できるかどうかは個別の審査で決まります。まずは入出金予定表を作り、相談先で説明できる状態にしておくと話が進めやすくなります。
まとめ
外注費の先払いで資金が足りなくなるかどうかは、利益の額より、支払いと入金の並びで決まります。案件ごとの入出金予定表を作って不足月を見つけ、着手金、中間払い、請求のタイミングの順に条件を見直してください。それでも不足が残る場合は、実行までの時間を見込んで融資の窓口に相談する流れになります。
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融資を受けるには何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























