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コラム

整骨院開業の融資はFCと独立でどちらが有利?審査で本当に変わる3つの論点と4つの誤解

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整骨院開業はフランチャイズと独立で融資はどう変わる?審査で見られる点の違いを整理

柔道整復師として何年か勤務してきて、そろそろ自分の院を持ちたい。そう考えたときに最初にぶつかるのが、フランチャイズ(FC)に加盟するか、完全に独立して開業するかという分かれ道です。そしてほぼ必ず、「どちらのほうが融資は通りやすいのか」という疑問がついてきます。

この記事では、日本政策金融公庫の創業融資を前提に、フランチャイズと独立で融資の何が変わり、何は変わらないのかを整理します。先にお伝えしておくと、「FCだから有利」「独立だから不利」という形で結論が出るものではありません。実際に変わるのは、資金使途の構成と、それに合わせた返済期間の設計です。

数字は2026年8月時点の情報にもとづいています。制度・金利は変わりやすいため、申請前には必ず日本政策金融公庫の公式情報をご確認ください。

まず押さえたい前提:創業融資の土俵は、FCでも独立でも同じです

日本政策金融公庫の創業融資の主力は「新規開業・スタートアップ支援資金」です。2024年3月まで「新規開業資金」という名称で、2024年4月から現在の名称に改称・拡充されました。無担保・無保証の特例だった「新創業融資制度」は2024年3月に廃止されています。

この制度で「創業期の方」とされるのは、次のいずれかに当てはまる方です。

  • 新たに事業を始める方
  • 事業開始後、税務申告を2期終えていない方

ここにフランチャイズかどうかという区分は入っていません。FC加盟で開業しても、完全に独立して開業しても、初めて自分の院を持つのであれば同じ「創業期の方」です。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)、元金返済の据置期間は5年以内で設定でき、据置中は利息のみの支払いになります。

金利についても同じです。2026年6月1日現在の基準利率は、創業期(税務申告を2期終えていない時期)に利用する場合で年3.45〜5.15%です。創業期の方が利用する場合は、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性がありますが、適用可否は利用する制度や審査・条件により異なるため、必ず下がると考えず申請先で確認してください。

つまり、制度そのものはFCでも独立でも共通です。では何が変わるのか。ここからが本題です。

フランチャイズと独立で本当に変わる3つの論点

論点1:資金使途の構成が変わり、返済期間の設計が変わる

いちばん大きく変わるのがここです。FC加盟の場合、開業資金のなかに加盟金・研修費・保証金といった、独立開業では発生しない費目が入ってきます。一方、独立開業では内装・施術機器の選定を自分で行うため、設備にかける金額の幅が広くなります。

なぜこれが融資に効くかというと、資金使途によって返済期間が変わるからです。新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合、返済期間の目安は設備資金が20年以内、運転資金が原則10年以内です(据置期間はいずれも5年以内)。同じ借入総額でも、設備資金として組める部分が大きいほど返済期間を長く取りやすく、月々の返済額を抑えられる可能性が出てきます。

FC加盟で「加盟金や研修費の比率が高く、設備は本部指定で抑えめ」という構成になるのか、独立で「設備資金の比率が高い」構成になるのか。この違いが、開業後の月々の負担に効いてきます。どちらが有利という話ではなく、構成が違うので設計の仕方が違うということです。

論点2:ロイヤリティを、開業資金ではなく毎月の支出として置く必要がある

FC加盟では、開業後に毎月のロイヤリティが発生します。これは開業時に必要な資金ではなく、事業を回していくうえでの継続的な支出です。創業計画書のなかで、開業資金の欄と、開業後の収支計画のどちらに置くかを取り違えると、計画の整合性が崩れます。

独立開業ではロイヤリティは発生しませんが、そのぶん集客や広告を自分で組み立てる費用が毎月かかります。どちらの形でも、開業後に毎月出ていくお金を収支計画に正しく織り込めているかが計画の説得力を左右します。

論点3:経営経験の示し方が変わる

柔道整復師としての施術経験は十分でも、経営は初めてという方は少なくありません。FC加盟の場合、本部の研修や運営サポートを受けられることを計画のなかで説明することになりますし、独立の場合は自分でどう補うかを説明することになります。

ここで注意したいのが、経験不足を補う方法として弱いとされるものです。「同業のメンターから定期的に助言を受けている」「経理や専門技術を業務委託でプロに任せている」といった対策は、経営そのものへの関与としては弱く、有効なカバー策とは言いにくい面があります。より説得力を持たせるには、事業経験者を役員として迎えるなど、事業運営に直接関わる体制を整えるほうが伝わりやすくなります。

小峰精公

💬 執筆者の小峰から一言

「FCと独立、どちらが融資に通りやすいですか」というご質問はよくいただきます。実務でお話を伺うと、争点になっているのは通る通らないではなく、見積の中身と毎月の返済額であることがほとんどです。加盟金・設備・運転資金の内訳を先に紙に落としてから相談いただくと、話が早く進みます。

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加盟前に正しておきたい4つの誤解

誤解1:「本部の実績があるから、FCのほうが審査に通りやすい」

審査で問われるのは、申請する本人に「事業として創業した実績」があるかどうかです。本部ブランドの実績や、そのFCチェーンの店舗数ではありません。もちろん、事業モデルとしての妥当性を説明する材料には使えますが、それをもって本人の創業実績が補われるわけではない、という点は分けて理解しておく必要があります。

審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。判断材料はこの2つに限られるわけではなく、経験・資金使途・面談の内容なども含めて総合的に見られます。

誤解2:「FC融資の必要書類には、法定開示書面が要る」

フランチャイズの融資について書かれた記事で、必要書類として「法定開示書面(フランチャイズ・ガイドラインに基づく重要事項説明書)」が挙げられていることがあります。これは正確ではありません。

法定開示書面は、FC本部が加盟希望者に対して交付する書類であって、公庫融資の申請に必要な書類ではありません。融資側で中心になるのは、創業計画書・自己資金のエビデンス・見積書・本人確認書類などです。もちろん、加盟契約の内容を説明するために手元に置いておくこと自体は有用ですが、必要書類のリストに混ぜて考えないほうが準備がすっきりします。

誤解3:「自己資金は開業資金の10分の1あればよい」

制度上、自己資金の額や割合の要件は決まっていません。かつての「新創業融資制度」にあった自己資金10分の1の要件は、その制度自体が2024年3月に廃止されたため、現行制度には存在しません。

ただし、自己資金の額は審査の重要な判断材料です。要件がないことと、少なくてよいことは別の話で、多いほど有利になりやすいという関係は変わりません。また、創業前に自費で取得した資格・設備や備品の購入・テストマーケティング費用などは、「みなし自己資金」として一定範囲で評価されることがあります。領収書は必ず保管しておきましょう。

誤解4:「創業融資だから、決算書は関係ない」

創業融資は事業として創業した実績がなくても申し込めますが、決算書をまったく見ないわけではありません。新しく設立した会社であっても、一期でも決算が締まっていれば、その決算書が確認されます。また、代表者が別に会社を経営している場合は、その会社の決算書も確認の対象になります。

すでに整体院などを運営していて、そこにFCで整骨院を追加するというケースでは、ここが効いてきます。あわせて、個人事業をそのまま法人化する「法人成り」は原則として創業融資の対象外となり、通常の融資の扱いになります。一方で、いま営んでいる事業とは別の新しい事業を行う法人を新たに設立する場合は、その新法人にとっては創業にあたるため創業融資を利用できます。

小峰精公

💬 執筆者の小峰から一言

法定開示書面を融資の必要書類だと思って探されている方に、これまで何度かお会いしました。加盟の判断に使う書類と、融資の申請に出す書類は別物です。整理しておくと準備の順番が決めやすくなりますので、迷ったら早めに確認していただければと思います。

施術機器をリースにする場合の注意点

整骨院の開業では、施術機器を購入するかリースにするかという選択が出てきます。FC加盟の場合、本部が推奨する機器をリースで導入する形が示されることもあります。

リースには初期費用を抑えられるメリットがある一方で、次のようなデメリットもあります。

  • 連帯保証人が必要になる
  • 機器の所有権が持てない
  • 契約期間中の中途解約が難しい
  • 故障時の修理負担が借主側になる契約が多い

融資とリースのどちらが有利かは、資産計上の考え方や資金繰りの状況によっても変わるため、賃貸借費用の負担も含めて税理士や金融機関に相談しながら判断することをおすすめします。

スケジュールは、加盟契約の日程と並べて考える

創業融資は、申請から融資実行までに時間がかかります。書類提出後おおむね3週間から1か月程度が目安で、創業計画書・自己資金エビデンス・見積書などの書類を整える時間を含めると、準備に1か月、審査・実行に1か月で、合計2か月程度を見ておくと安全です。

FC加盟の場合、本部との契約日程、研修の開始時期、物件の引き渡し日といった外部の日程が先に決まっていることが多くなります。融資の実行がそれらに間に合うかどうかを、逆算して確認しておく必要があります。独立開業の場合は日程を自分で組める分、物件の申し込みから契約までの期限のほうが先に来やすいので、そちらから逆算します。

よくある質問

Q. 加盟金は設備資金と運転資金のどちらになりますか

資金使途の区分は、支出の性格によって判断されます。加盟金の扱いを含め、個別の費目がどちらに区分されるかは契約内容によっても変わるため、見積書と契約書を手元に置いたうえで申請先や専門家に確認しながら整理することをおすすめします。区分によって返済期間の設計が変わるため、早めに詰めておく論点です。

Q. 一度審査に落ちると、次回の審査に影響しますか?

A. 公庫内には審査に落ちた記録が残ります。そのため次の審査では、落ちたことを考慮に入れた形になるため、慎重に扱われる可能性があります。

Q. 否決された直後にすぐ再申請してもよいですか?

原因を潰さずに再申請しても、結果は変わりません。自己資金不足、事業計画の説得力不足、業界未経験への対策不足など、否決の理由を具体的に特定し、そこを改善したうえで再申請することが必要です。

Q. 自己資金は面談時点で全額入金しておくべきですか

はい、原則として面談時点で口座に確認できる形にしておきます。

まとめ

整骨院の開業でフランチャイズと独立のどちらを選んでも、創業融資の制度そのものは同じです。「創業期の方」の定義にFCかどうかという区分はなく、限度額・据置期間・利率の枠組みも共通です。

変わるのは、資金使途の構成(加盟金や研修費が入るのか、設備の比率が高いのか)と、それに応じた返済期間の設計、そして開業後に毎月出ていくお金の置き方です。あわせて、本部の実績は本人の創業実績の代わりにはならないこと、法定開示書面は融資の必要書類ではないこと、自己資金に制度上の割合要件はないこと、創業融資でも見られる決算書があることの4点を押さえておけば、加盟の判断と融資の準備を切り分けて進められます。

本記事の数字・制度内容は2026年8月時点の情報にもとづいています。融資の制度・金利は変わりやすいため、申請前には日本政策金融公庫の公式情報をご確認ください。自院の見積と加盟契約の内容をどう資金使途に落とし込むかで迷われた場合は、専門家にご相談いただくのが確実です。

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小峰

この記事を書いた人

小峰精公/Kiyotaka Komine

元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人

多胡藤夫/Fujio Tago

元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

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この記事を監修した人


中野裕哲

中野裕哲/Nakano Hiroaki

税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授

税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。

経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。

【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。

中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。

【主な実績】

  • 起業支援・経営支援の豊富な実績
  • 起業相談件数3,000件以上
  • 資金調達支援1000件以上
  • 大企業Webサイト多数監修
  • 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)

V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。

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