
人件費高騰に苦しむ中小企業がやるべき対策|賃上げ原資の現実的なつくり方
最低賃金の引き上げ、人手不足による採用競争、物価高による生活コストの上昇。これらが重なり、いま多くの中小企業が「人件費が上がり続けてしまう」という悩みを抱えています。賃上げをしなければ人が採れず、辞めてしまう。かといって、利益が出ていないのに人件費だけを増やせば資金繰りが苦しくなる――この板挟みをどう乗り越えるかが経営の大きなテーマになっています。
この記事では、人件費高騰に苦しむ中小企業の経営者・人事担当者に向けて、賃上げの「原資」を現実的につくり出す5つのアプローチと、進めるうえでの注意点を整理します。なお、賃金・助成金などの制度は変更されやすいため、本記事は執筆時点の一般的な考え方として参考にしてください。
なぜいま中小企業の人件費が上がり続けるのか
人件費が上がる背景には、主に3つの要因があります。1つ目は最低賃金の継続的な引き上げで、パート・アルバイト比率の高い業種ほど影響を強く受けます。2つ目は人手不足です。人材を確保・引き止めるためには、相場に見合った給与水準が求められます。3つ目は物価高で、従業員の生活を守るための賃上げ圧力が高まっています。
重要なのは、これらが一時的なものではなく、構造的に続く流れだという点です。だからこそ「なんとなく我慢する」のではなく、賃上げを続けられる仕組みを会社側につくっておくことが必要になります。
賃上げ原資をつくる5つのアプローチ
賃上げの原資は「どこかから降ってくるお金」ではなく、経営の工夫でつくり出すものです。代表的な5つの方向性を見ていきましょう。
1. 生産性向上で一人あたりの付加価値を高める
もっとも本質的な対策が、生産性の向上です。同じ人数でより多くの付加価値を生み出せれば、その分を賃上げの原資に回せます。設備投資による省力化、業務フローの見直し、ITツールの導入などで「一人あたりが生み出す粗利」を高めることが出発点になります。設備投資にはものづくり補助金や省力化投資補助金などを活用できる場合もあります。
2. 適切な価格転嫁・値上げを行う
コストが上がっているのに価格を据え置けば、利益が削られ賃上げの余力は生まれません。原材料費や人件費の上昇分を、根拠を示しながら適切に価格へ反映することも重要な選択肢です。取引先との価格交渉に踏み切れない中小企業も多いですが、価格転嫁は賃上げ原資づくりの大きな柱になります。
3. 業務のムダを減らしコストを圧縮する
長時間労働や手戻り、重複作業などのムダを減らせば、残業代の圧縮や生産性向上を通じて原資を生み出せます。「忙しいのに儲からない」状態の会社ほど、業務の棚卸しで改善余地が見つかることが多いものです。
4. 助成金を活用して原資を補う
賃上げや待遇改善を行う企業を後押しする助成金が用意されています。たとえば、設備投資などで生産性を上げながら事業場内最低賃金を引き上げた場合の業務改善助成金や、非正規社員の正社員化・処遇改善を支援するキャリアアップ助成金などです。要件や金額は年度によって変わるため、活用を検討する際は最新の情報を確認してください。
5. 採用・定着を改善して採用コスト・離職コストを下げる
見落とされがちですが、採用と定着の改善も立派な人件費対策です。人が辞めるたびに発生する求人広告費や教育コスト、欠員期間の機会損失は、積み上がると大きな金額になります。離職を減らし定着率を高めれば、こうした「見えないコスト」が減り、その分を既存社員の賃上げに回す余力が生まれます。
とはいえ、「どこから手を付ければ採用と定着が改善するのか」が分からないという声は少なくありません。求人の出し方から応募対応、入社後の定着の仕組みまでを体系的に見直したい場合は、専門家の伴走支援を活用するのも有効です。
採用・定着の戦略と仕組みづくりをまるごとサポート
V-Spiritsの採用定着支援サービスでは、給与・条件の競合リサーチ、求人原稿の改善、応募後24時間以内の初動対応など、採用がうまくいく会社が実践している型を全国2,000社超の支援実績をもとに採用定着士が伴走で組み立てます。「なぜ採れないのか」「なぜ辞めるのか」を現場目線で診断し、5ステップで仕組み化します。
賃上げを進めるときの注意点
- 原資の裏付けがないまま賃上げを先行させると、資金繰りを直撃する
- 一度上げた給与は下げにくいため、賞与・手当など調整しやすい形も組み合わせる
- 賃上げの目的・基準を従業員に説明し、納得感を持たせる
- 最低賃金の改定時期(毎年秋ごろ)に合わせて、自社の賃金が下回らないか確認する
- 助成金は要件・申請期限があるため、賃上げの実施前に制度内容を確認する
賃上げは「いくら上げるか」だけでなく、「上げ続けられる仕組みをどうつくるか」が問われます。生産性・価格・コスト・助成金・定着の5つをバランスよく組み合わせることが、無理のない賃上げの近道です。
よくある質問(FAQ)
Q. 利益が出ていなくても賃上げすべきですか?
A. 採用・定着のために一定の賃上げが避けられない局面はありますが、原資の裏付けは不可欠です。まずは生産性向上や価格転嫁で原資を確保しながら、段階的に進めるのが現実的です。
Q. 賃上げの原資づくりに使える助成金はありますか?
A. 業務改善助成金やキャリアアップ助成金など、賃上げ・処遇改善を後押しする制度があります。要件・金額は年度で変わるため、申請前に最新情報の確認をおすすめします。
Q. 賃上げと採用・定着はどちらを優先すべきですか?
A. どちらか一方ではなく、定着改善でコストを下げつつ、その余力を賃上げに回すという循環をつくるのが効果的です。
まとめ
人件費の高騰は構造的に続く流れであり、我慢で乗り切れるものではありません。賃上げの原資は、(1)生産性向上、(2)価格転嫁、(3)コスト圧縮、(4)助成金の活用、(5)採用・定着の改善という5つの方向からつくり出せます。とくに採用・定着の改善は、見えにくいコストを減らして賃上げ余力を生む重要な打ち手です。自社だけで進めるのが難しい場合は、労務・採用定着の専門家に相談しながら、無理なく続けられる賃上げの仕組みづくりを進めていきましょう。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP技能士。大正大学招聘教授(起業論、ゼミ等)
V-Spiritsグループ創業者。税理士法人V-Spiritsグループ代表。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「ベストセラー起業本」の著者。著書20冊、累計25万部超。経済産業省後援「DREAMGATE」で12年連続相談件数日本一。
【まるごと起業支援(R)・経営支援】
起業コンサル(事業計画+融資+補助金+会社設立支援)+起業後の総合サポート(経理 税務 事業計画書 融資 補助金 助成金 人事 給与計算 社会保険 法務 許認可 公庫連携 認定支援機関)など
【略歴】
経営者である父の元に生まれ、幼き頃より経営者になることを目標として過ごす。バブル崩壊の影響を受け経営が悪化。一家離散に近い貧婚状況を経験し、「経営者の支援」をライフワークとしたいと決意。それに役立ちそうな各種資格を学生時代を中心に取得。
同じく経営者であるメンターの伯父より、単に書類や手続を追求する専門家としてではなく、視野を広げ「ビジネス」の現場での経験を元に経営者の「経営そのもの」を支援できるような専門家を目指すようアドバイスを受け、社会人生活をスタート。
大手、中小、ベンチャー企業、会計事務所等で営業、経理、財務、人事、総務、管理職、経営陣等、ビジネスの「現場」での充実した修行の日々を送ったあと、2007年に独立。
ほかにはない支援スタイルが起業家・経営者に受け入れられ、数々の実績を残しています。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。
- 経済産業省「DREAM GATE」にて、面談相談12年連続日本一
- 補助金・助成金支援実績600件超
- ベストセラー含む起業・経営本20冊を出版(累計25万部超)
- 無料相談件数は全国から累計3,000件超
この記事を書いた人
坂井 優介(Yusuke Sakai)
起業コンサルタント® / 採用定着士 / 行政書士法人V-Spirits 補助者
1988年東京都生まれ。転勤族の父の影響で幼少期を愛知・長野・岩手・埼玉で過ごす。転入するたびに方言や文化の違いをからかわれつつも、1週間もあれば現地に溶け込む適応力を身につける。
大学在学中に公認会計士試験にチャレンジするも挫折し、アルバイト先だった埼玉の大手学習塾に就職。塾業界特有の過酷な労働環境の中でも10年間勤務を続けるが、成果を上げても給与が変わらない状況に限界を感じ、在職中に会計士試験に再挑戦。再び挫折するも、学んだ会計知識を活かせる職場を求めて転職活動を開始。2021年にV-Spiritsグループに参画し、2022年よりV-Spirits総合研究所の常務取締役に就任。
現在は、中小企業の経営者向けに補助金・助成金の支援から採用定着の仕組みづくりまで幅広く担当。「制度を使いこなす中小企業を増やす」をテーマに、現場に寄り添ったサポートを行っている。
役職:V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役 / 税理士法人V-Spirits 業務部長 / 社会保険労務士法人V-Spirits 業務部長
担当業務:経済産業省系補助金支援・厚生労働省系助成金支援・マーケティング・人事労務・採用定着支援




























