
税理士の独立開業でかかる経費は?固定費と変動費の見積もり方を解説
税理士として独立を考えている方から、開業後にどのような経費がかかるのか、事前に把握しておきたいというご相談をよくいただきます。今回はこの点について、次のようなご質問を取り上げます。
「税理士として独立を考えています。開業後にどのような経費がかかるのか、事前に把握しておきたいです。」

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。
ご質問にお答えします。中小企業診断士として、業種を問わず独立・開業のご相談をお受けしている三浦です。
まず前提をひとつお伝えしておきます。開業後の経費について、どこまでが税務上の必要経費として認められるか、税額にどう影響するかといった判断は、税理士であるご自身の専門分野そのものです。そこは本来の得意領域としてすでに整理がついていることと思いますので、ここでは税務上の扱いには立ち入らず、開業準備として押さえておきたい「収支の見積もり方」を中心にお伝えします。固定費の見通しが立たないという不安は、士業に限らずどの業種で独立される方からも聞かれる悩みですので、順を追って整理していきましょう。
経費を「固定費」と「変動費」に分けて考える
開業後にかかる経費を把握するときに最初にやっていただきたいのは、ひとつひとつの費目を細かく並べるのではなく、「固定費」と「変動費」という2つの性質に分けて整理することです。この分け方ができていると、売上が予想より伸びなかった月にも、最低限いくら確保しておけば事業を維持できるかがすぐに分かるようになります。
固定費とは、売上の有無や業務量に関わらず、毎月決まってかかる費用のことです。税理士として独立される場合、代表的なものは次のような費目になります。
- 事務所の賃料(自宅の一室を事務所にする場合でも、按分した維持費を固定費として見ておくと実態に近づきます)
- 会計ソフトや税務ソフト、顧客管理システムなどの利用料
- 事業用の損害保険や、ご自身の生活を支える保険の見直し分
- 電話・インターネットなど通信費
- 税理士会・支部等への会費
- 事務所を借りる場合の電気・水道などの基本料金部分
これらは、その月にお客様が0件でも1件でも、ほぼ同じ金額がかかります。開業準備の段階でまず把握すべきなのは、この固定費の合計額です。これが分かれば、「毎月これだけの売上がないと事業が赤字になる」という損益の分岐点が見えてきます。
一方、変動費は業務量や活動量によって増減する費用です。独立後の税理士業であれば、次のようなものが当たります。
- 顧客訪問や勉強会参加のための出張費・交通費
- 繁忙期に外部に委託する事務作業の費用
- 仕入れにかかった費用
変動費は「売上を増やすために使うお金」という側面が強く、活動量を抑えればその分支出も抑えられます。固定費のように毎月一定額が出ていくわけではないため、先に固定費を把握したうえで、どのくらい変動費に充てる余力があるかを考える、という順番で整理すると分かりやすくなります。
見積もりの順番は「固定費が先、変動費は売上目標から逆算」
固定費と変動費の性質が分かったところで、実際の見積もり作業の順番についてお伝えします。私がご相談を受ける際には、次の順序をおすすめしています。
最初に行うのは、固定費の洗い出しと合計です。事務所をどこに構えるか、会計システムは何を使うか、保険はどう見直すかといった個々の判断は、開業準備の中でひとつずつ固まっていくものですので、確定した時点でその都度、月額換算して積み上げていきます。賃料のように毎月同額のものだけでなく、税理士会費のように年1回まとめて支払うものも、12で割って月割りにしておくと、月ごとの収支を見るときに扱いやすくなります。この合計額が、独立後に「最低限、毎月稼ぐ必要がある金額」の土台になります。
次に行うのが、売上目標の設定です。開業後何か月目までにどの程度の顧問先数や案件数を見込むか、独立前の人脈や紹介の見込みも踏まえて、現実的な範囲で目標を立てます。ここで大切なのは、楽観的な数字だけでなく、立ち上がりが遅れた場合の控えめな数字も併せて置いておくことです。
そして最後に、設定した売上目標から逆算して、変動費にどれだけ使えるかを決めます。たとえば、ある程度の売上が見込めるまでの期間は広告費を抑えめにし、顧問先が増えてきた段階で広告費や交通費を積極的に使う、といった配分です。変動費は「使っただけ見込み顧客が増える」という前提で使うものですので、固定費を上回る売上が安定して確保できる見通しが立つまでは、無理に増やさないほうが手堅い進め方になります。
この「固定費を先に固める、変動費は売上目標からの逆算で決める」という順番を踏んでおくと、開業後に想定外の支出が重なっても、どこを削ればよいか、どこまでなら使ってよいかの判断がしやすくなります。固定費の見通しが立たないという不安は、裏を返せば「毎月いくら確保すればよいか」という基準がまだ手元にないということでもありますので、まずはこの基準づくりから始めていただくとよいかと思います。
見積もりの精度を上げるための工夫
はじめに立てた固定費・変動費の見積もりは、あくまで開業前の想定にすぎません。実際に事務所を借りてみると管理費が想定より高かった、会計システムを使い始めてから上位プランへの切り替えが必要になった、といったことは独立開業ではよくあります。そのため、見積もりは一度作って終わりにせず、開業後3か月、半年といった節目で実際の支出と比べ直すことをおすすめしています。
特に事務所の形態は固定費の大きさに直結します。賃貸オフィスを構えるのか、シェアオフィスを利用するのか、自宅の一室を事務所代わりにするのかによって、月々の固定費は大きく変わります。開業直後は顧問先数が読みにくい時期でもありますので、まずは固定費を抑えやすい形態で始め、顧問先が安定して増えてきた段階で事務所を広げるという進め方も、固定費の見通しを立てやすくする一つの方法です。また、同じように独立された他の士業の方から、実際にどのくらいの固定費で運営しているかを聞いてみるのも、ご自身の見積もりの精度を上げるうえで参考になります。
まとめ
開業後の経費は、個々の費目を集めるよりも、固定費と変動費に分けて、固定費を先に固め、変動費は売上目標から逆算して配分するという順番で見積もると、見通しが立てやすくなります。当方では、こうした開業時の収支計画のご相談も承っておりますので、具体的な数字に落とし込む段階になりましたら、お気軽にお声がけください。
【無料相談のご案内】
弊社では、中小企業診断士・元補助金審査員の三浦を中心とした専門家チームが、業種を問わない幅広い起業・新規事業のご相談に対応しております。何から始めればいいかわからないという段階でも、適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひ一度ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を監修した人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。




























