
士業の創業融資否決から再挑戦するまでの進め方|行政書士・税理士・社労士向け
行政書士・税理士・社会保険労務士など、資格を活かして独立開業を目指す方から「創業融資の面談で断られてしまった。もう一度申し込むにはどうすればいいか」というご相談をいただくことがあります。士業の開業は、他業種と違って専門資格そのものは持っているぶん「経験不足」を疑われることは少ない一方で、別の理由でつまずきやすい特有の事情があります。
この記事では、日本政策金融公庫の創業融資(新規開業・スタートアップ支援資金)で士業の開業者が否決されやすい理由を整理したうえで、再申請までに何を・どの順番で見直せばよいかをステップで解説します(2026年7月時点の情報です。制度・金利は変更されることがあるため、最新は日本政策金融公庫の公式情報でご確認ください)。
創業融資の基本をおさらいする
士業の開業で候補になる代表的な融資制度は、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。2024年3月まで使われていた「新創業融資制度」は廃止され、現在は各融資制度に無担保・無保証人の枠組みが組み込まれる形に整理されています。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)で、創業した実績がなくても事業計画書と自己資金をもとに審査されます。
基準利率は無担保・創業期(税務申告を2期終えていない場合)で年3.45〜5.15%(2026年6月1日現在)です。据置期間は元金返済を5年以内で設定でき、申請から実行までは書類提出後おおむね3週間〜1か月が目安(準備期間を含めると合計2か月程度)とされています。数字は変わりやすいため、申請時には必ず最新の公式情報を確認してください。
士業の開業でとくに否決されやすい理由
理由1:収益モデルの説明が「スポット業務」に寄りすぎている
士業の中でもとくに行政書士のように許認可申請など単発の受任が中心になりやすい業態では、案件ごとの収入が単発(スポット)になりやすく、月々の収入の見通しが立てにくいという特徴があります。事業計画書に「毎月安定してこの金額の売上が見込める」という前提だけを書いてしまうと、審査側から「その根拠は何か」を問われたときに説明が弱くなりがちです。顧問契約のような継続収入と、単発の受任案件を分けて、それぞれの見込み件数・単価を積み上げて説明できるようにしておくことが重要です。
理由2:見込み客・受任案件の裏付けが薄い
資格を取得したばかりで、開業後の受任見込みが「これから営業して増やしていく」という説明にとどまっていると、事業計画の実現可能性が疑われやすくなります。前職からの紹介見込み、勤務時代からの顧客とのつながり、提携先(他士業・金融機関・商工会議所など)との関係など、具体的に「誰から・どれくらいの案件が見込めるか」を示せるかどうかが説得力を左右します。
理由3:面談での説明と事業計画書の内容にズレがある
書類上は整った事業計画書を提出していても、面談で話す内容が書類と食い違っていると、審査側に「計画の実態が薄いのでは」という印象を与えてしまいます。売上の根拠・自己資金の使い道・資金使途について、書類に書いた数字と同じ説明を面談でもできるように、事前に想定問答を整理しておくことが必要です。
否決は信用情報に「傷」として残るのか
士業の開業希望者から特によく聞かれるのが、「一度断られたことが記録され、次回以降の審査に不利になるのではないか」という不安です。ここは誤解が生じやすい部分なので、正確に整理します。
日本政策金融公庫は個人信用情報機関に加盟していますが、審査に落ちたこと自体が信用情報に記録されることはありません。一方で、公庫内には審査に落ちた記録が残ります。そのため次の審査では、落ちたことを考慮に入れた形になるため、慎重に扱われる可能性があります。<
再挑戦までに見直したい5つのステップ
否決の原因を特定しないまま同じ内容で再申請しても、結果が変わることは期待しにくいです。次の順番で見直しを進めます。
- ステップ1:否決理由を具体的に特定する——自己資金の不足、事業計画の説得力不足、収益モデルの説明不足など、指摘された(あるいは推測される)理由を書き出す
- ステップ2:自己資金を見直す——自己資金の額や割合について制度上決まった要件はありませんが、審査の重要な判断材料になります。面談時点で口座に確認できる状態にしておくとともに、創業前に自費で取得した資格・設備・テストマーケティング費用など「みなし自己資金」として説明できるものがあれば、領収書とあわせて整理しておきます
- ステップ3:収益モデルを継続収入とスポット収入に分けて積み上げる——顧問契約など継続的な収入の見込みと、単発の受任案件の見込みを分けて、それぞれの件数・単価の根拠を示せるようにする
- ステップ4:見込み案件・提携先の裏付けを具体化する——前職からの紹介、勤務時代の顧客との関係、他士業・金融機関との提携見込みなど、「誰から・どれくらい」の受任が見込めるかを具体的に示す
- ステップ5:面談想定問答を書類と一致させて準備する——事業計画書に書いた数字・資金使途と同じ説明を面談でもできるよう、事前にリハーサルしておく
再申請までの期間はどのくらい空けるべきか
否決からどのくらいの期間を空けて再申請すべきかについて明確な決まりがあるわけではありませんが、否決理由の分析と改善には一定の時間がかかるため、急いで同じ内容のまま再申請するよりも、原因を具体的に特定し、自己資金や事業計画の数字を実際に改善したうえで申請し直すことが重要です。改善が伴わないまま短期間で再申請しても、結果が変わることは期待しにくい点に注意してください。
よくある質問(FAQ)
Q. 自己資金はいくら用意すればよいですか?
制度上、自己資金の額や割合について決まった要件はありません。ただし自己資金の額は審査の重要な判断材料になるため、多いほど有利になりやすい傾向があります。みなし自己資金として説明できる支出がないかも、あわせて確認してみてください。
Q. 否決された直後にすぐ再申請してもよいですか?
原因を潰さずに再申請しても、結果は変わりません。自己資金不足、事業計画の説得力不足、収益モデルの説明不足など、否決の理由を具体的に特定し、そこを改善したうえで再申請することが必要です。
まとめ
士業の開業者が創業融資で否決される背景には、専門資格そのものへの疑問というより、事業としての収益モデルの説明不足や、見込み案件の裏付けの薄さ、面談と書類のズレといった要因が多く見られます。再申請を検討する際は、否決理由を具体的に特定したうえで、自己資金・収益モデル・見込み案件の裏付けを一つずつ見直すことが結果につながりやすい進め方です。
どこに原因があったのか自分では判断がつかない場合や、事業計画書の作り込みに不安がある場合は、早い段階で専門家に相談することで、再挑戦までの遠回りを減らせます。
【無料相談のご案内】
融資を受けるには何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























