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手形廃止はいつから?資金繰りへの影響と中小企業がとるべき融資・資金調達対策【2026年】

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手形廃止はいつから?資金繰りへの影響と中小企業がとるべき融資・資金調達対策【2026年】

約束手形の廃止はいつ?なくなるのは「紙」だけ——でんさい移行で資金繰り・融資はこう備える

「取引先から、これからは手形をやめて振込やでんさいにしたいと言われた」「手形が廃止されると聞いたが、手形そのものが使えなくなるのか、資金繰りにどう影響するのか分からない」——数年にわたり事業を続けてきた中小企業の経営者から、こうしたご相談が増えています。まず押さえていただきたいのは、なくなるのは強く「紙の」約束手形・小切手であって、期日を決めて後日支払うという決済の機能そのものは、電子記録債権(でんさい)に引き継がれるという点です。ただし「紙から電子へ」の切り替えは、入金・支払いのタイミングや資金調達の方法に確実に影響します。さらに2026年1月には、下請取引での手形払いを禁止する法改正(取適法)も施行されました。本記事では、紙の手形・小切手の廃止スケジュールと「何が残り、何がなくなるのか」を整理したうえで、資金繰りへの影響と、融資をはじめとした備え方の考え方をわかりやすく解説します。なお、制度や運用は変わりやすいため、本記事の内容は2026年7月の執筆時点の情報として、最新の状況は全国銀行協会・金融庁・公正取引委員会などの公式情報でご確認ください。

約束手形の廃止とは?なくなるのは「紙の手形・小切手」

約束手形は、代金を後日支払うことを約束する証券で、支払企業にとっては支払いを先延ばしできる一方、受け取る企業にとっては現金化までに時間がかかる決済手段です。この「支払いまでの期間(サイト)の長さ」が、受注側の中小企業の資金繰りを圧迫してきたという課題が長く指摘されてきました。あわせて、紙であるがゆえの紛失・盗難リスク、取立や保管の事務負担、印紙税の負担も問題とされてきました。

こうした背景から、政府・産業界・金融界は、2026年度末(2027年3月末)を目途に紙の約束手形・小切手の利用を廃止する方針を共有しています。全国銀行協会は「手形・小切手機能の全面的な電子化に向けた自主行動計画」において、2026年度末までに電子交換所における手形・小切手の交換枚数をゼロにすることを最終目標に掲げ、2027年度初から電子交換所における手形・小切手の交換を廃止する予定です(2026年7月執筆時点)。実際、各金融機関では新規の手形帳・小切手帳の発行終了や、2027年4月以降を期日とする手形の取立受付終了など、段階的な縮小がすでに進んでいます。

ここで重要なのは、廃止されるのはあくまで「紙」であって、手形が担ってきた機能(期日を設定した支払い・受け取り)は、電子記録債権(でんさい)や銀行振込に引き継がれるという点です。つまり「手形的な決済がすべて禁止される」のではなく、「紙の証券が電子データに置き換わる」のが今回の変化の本質です。デジタル化により、紛失リスクや印紙税・事務負担が減り、現金化も早く・柔軟になるという方向性です。

2026年1月施行の「取適法」で手形払いは法律上も禁止に

紙の廃止スケジュールと並行して、もうひとつ大きな動きがあります。下請法が改正され、2026年1月1日から「中小受託取引適正化法(取適法)」が施行されました。取適法では、中小受託事業者(受注側)への代金支払いについて、手形の交付による支払いが禁止され、さらに電子記録債権や一括決済方式であっても、支払期日までに代金相当額の現金を受け取ることが困難なものは認められないとされています。支払期日も「受領から60日以内」が求められます。

つまり、下請取引に該当する支払いでは、「紙か電子か」以前に、受注側が期日に満額の現金を受け取れる形での支払いが原則となりました。これまで手形サイトで実質的に支払いを先延ばししてきた発注側の企業にとっては、銀行界の紙廃止スケジュールを待たず、すでに対応が必要な状況です。自社の取引が取適法の適用対象になるかどうかは、資本金基準に加えて従業員基準(300人・100人)も追加されているため、公正取引委員会・中小企業庁の公式情報で確認することをおすすめします。

紙の手形廃止・でんさい移行で中小企業の資金繰りはどう変わるか

受け取る側(売上代金を回収する立場)

これまで紙の手形で代金を受け取っていた企業では、決済がでんさいや振込に切り替わることで、現金化のタイミングと方法が変わります。取適法の適用対象となる下請取引であれば、手形払い自体が禁止され支払サイトも60日以内となるため、入金が早まる方向に働きます。また、これまで紙の手形を金融機関で割り引いて機動的に資金を作っていた企業も、心配は要りません。でんさいにも「でんさい割引」という同様の仕組みがあり、支払期日前に金融機関や割引業者に譲渡して現金化できます。むしろ紙のように銀行窓口へ持ち込む必要がなく、オンラインで手続きが完結し、必要な金額分だけ分割して譲渡できるなど、紙の手形割引より柔軟な面もあります。

ただし、でんさい割引も紙の手形割引と同じく、金融機関に依頼する場合は融資と同様の審査があり、審査結果によって割引の可否や割引料が決まります。移行にあたっては、取引金融機関ででんさいネットの利用契約を結び、割引の枠についても事前に相談しておくことが大切です。

支払う側(仕入代金などを支払う立場)

手形で支払いを先延ばししてきた企業への影響は、受け取る側より大きくなりがちです。取適法の対象となる支払いでは手形払いが禁止され、支払サイトも60日以内が原則となるため、これまで手形サイトの分だけ手元に残せていた資金を、より早く用意する必要が出てきます。たとえば「受領から60日後に手形交付、そこから満期まで60日」という取引なら、現金の支出が実質120日後から60日後へ前倒しになるイメージです。この差の期間に相当する運転資金を、どう確保するかが課題になります。取引先との決済条件の変更は段階的に進むことも多いため、自社の主要な取引で決済方法や支払いサイトがどう変わるのか・すでに変わっているのかを、早めに確認しておくことが重要です。

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紙の手形の代わりになる決済・資金調達の選択肢

紙の手形・小切手の廃止にともなう資金繰りの変化に備えるには、決済手段の移行と資金調達の両面から考えるとよいでしょう。主な選択肢を整理します。

電子記録債権(でんさい)への移行——割引も引き続き使える

紙の手形の直接の受け皿となるのが、電子記録債権(でんさい)です。でんさいは、手形のように支払期日を設定しつつ、債権の発生・譲渡を「でんさいネット」の記録原簿で電子的に管理する仕組みで、紛失・盗難のリスクがなく、印紙税もかからず、取立のために銀行へ持ち込む手間も不要です。そして冒頭でも触れたとおり、紙の手形割引に相当する「でんさい割引」も利用できます。支払期日前にでんさいを金融機関や割引業者に譲渡し、割引料を差し引いた金額を受け取って現金化する仕組みで、オンラインで完結し、債権を分割して必要額だけ割り引くこともできます。手形割引で資金繰りを回してきた企業は、「割引ができなくなる」のではなく「割引の対象が紙からでんさいに変わる」と捉え、取引金融機関ででんさいの利用契約と割引枠の相談を早めに済ませておきましょう。

銀行振込への一本化

もうひとつの受け皿が、インターネットバンキング等による銀行振込です。取適法の施行により、下請取引では「原則現金(振込)・受領から60日以内」の支払いが求められるため、期日設定型のでんさいではなく振込への一本化を選ぶ企業も増えています。受け取る側にとっては入金が早まる一方、支払う側にとっては資金の準備を前倒しする必要があります。取引先がでんさい・振込のどちらへ移行するのかによって自社の資金繰り表が変わるため、まずは主要取引先の方針を確認することが出発点になります。

運転資金の融資を早めに検討する

決済条件の変化で一時的に手元資金が薄くなる局面に備えるには、運転資金の融資を早めに検討しておくことが有効です。特に支払う側では、支払サイトの短縮分に相当する運転資金の手当てが必要になるケースがあります。日本政策金融公庫や民間金融機関では、事業を回していくための運転資金を対象とした融資があり、返済の据置期間を設定できる場合もあります。据置期間中は元金の返済を待ってもらい利息のみの支払いにできることがあるため、資金繰りが変化する時期の負担を和らげる助けになります。融資は申し込みから実行までに一定の時間がかかり、書類の準備を含めると余裕を見ておく必要があるため、資金が本当に必要になる前に、早めに動き出すことがポイントです。

その他の資金調達手段

売掛債権を早期に現金化するファクタリングなど、融資・でんさい割引以外の手段もあります。ただし手段によって手数料や資金調達コストは大きく異なります。一般に、金融機関でのでんさい割引は融資に準じた審査がある分コストを抑えやすく、ファクタリングは審査のハードルが相対的に低い分コストが高くなる傾向があります。どれが自社に合うかは資金繰りの状況や取引の形態によって変わるため、複数の選択肢を比較し、コストと調達スピードのバランスで判断することが大切です。判断に迷う場合は、資金調達に詳しい専門家に相談し、自社の状況に合った組み合わせを整理するとよいでしょう。

融資で備えるときに押さえたいポイント

紙の手形の廃止・でんさい移行を見据えて融資を活用する場合、次の点を押さえておくと準備がスムーズになります。

  • 早めに相談・準備を始める:融資は申し込みから実行まで時間がかかります。決済条件が変わってから慌てるのではなく、影響が見え始めた段階で金融機関に相談を始めておくと安心です。でんさいの利用契約や割引枠の相談も同時に進めると効率的です。
  • 資金繰り表で必要額と時期を見える化する:支払サイトの短縮や割引手段の切り替えで、いつ・いくら資金が不足しそうかを整理しておくと、必要な融資額や返済計画を組み立てやすくなり、金融機関への説明もしやすくなります。
  • 据置期間の活用を検討する:資金繰りが変化する時期は、据置期間を設定して当面の返済負担を抑えることも選択肢になります。利用できる条件は制度や審査によって異なるため、申請先に確認しましょう。
  • 数字や制度は最新情報を確認する:紙の手形の取扱終了時期は金融機関ごとに前倒しで進んでいるほか、金利や制度の内容も変わりやすいため、必ず取引金融機関・日本政策金融公庫・全国銀行協会などの公式情報で確認してください。

よくある質問(FAQ)

Q. 約束手形はいつ廃止されるのですか。
A. 政府・産業界・金融界は、2026年度末(2027年3月末)を目途に紙の約束手形・小切手の利用を廃止する方針を共有しており、全国銀行協会は2027年度初から電子交換所での手形・小切手の交換を廃止する予定です(2026年7月執筆時点)。ある日を境に一斉に無効になるのではなく、新規発行の終了や取立受付の終了などが金融機関ごとに段階的に進んでいるため、自社の取引金融機関・主要取引先の状況を個別に確認することをおすすめします。

Q. 手形の制度そのものがなくなるのですか。
A. いいえ。廃止されるのは「紙の」手形・小切手で、期日を設定して支払う・受け取るという機能は電子記録債権(でんさい)に引き継がれます。ただし、下請取引については取適法(2026年1月施行)により手形払い自体が禁止され、電子記録債権等でも支払期日までに満額を現金化できない形は認められないため、取引の性質によっては振込への切り替えが必要です。

Q. 手形割引で資金繰りを回してきましたが、廃止後はどうなりますか。
A. でんさいにも「でんさい割引」という同様の仕組みがあり、支払期日前に金融機関や割引業者へ譲渡して現金化できます。オンラインで完結し、分割譲渡できるなど紙より柔軟な面もあります。ただし金融機関での割引には融資と同様の審査があるため、移行前に取引金融機関へでんさいの利用契約と割引の相談をしておくと安心です。

Q. 資金繰り対策として、まず何から始めればよいですか。
A. まずは主要取引先の決済方法(でんさいか振込か)と支払いサイトの変更予定・変更状況を確認し、資金繰り表で不足しそうな時期と金額を把握することです。そのうえで、でんさいの利用契約・割引枠の確保や、運転資金の融資など必要な手当てを早めに検討すると、余裕を持って対応できます。

まとめ

約束手形をめぐる変化の本質は、「手形制度の消滅」ではなく「紙から電子への移行」です。紙の約束手形・小切手は2026年度末(2027年3月末)を目途に利用廃止が進められ、2027年度初からは電子交換所での交換が廃止される予定ですが、期日を設定した決済という機能はでんさいに引き継がれ、手形割引に相当するでんさい割引も引き続き利用できます。一方で、2026年1月施行の取適法により下請取引では手形払いが禁止され、支払サイトも60日以内が原則となったため、特に支払う側の企業では手元資金を早めに準備する必要が出てきます。備えとしては、主要取引先の移行方針の確認、でんさいの利用契約・割引枠の相談、運転資金の融資の早めの検討、資金繰り表による必要額と時期の見える化が有効です。制度や金利は変わりやすいため、本記事の内容は2026年7月の執筆時点の目安として、最新の情報は公式で確認しながら進めてください。資金繰りや融資の進め方に不安がある場合は、資金調達に詳しい専門家に早めに相談することで、自社に合った備え方を整理できます。

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小峰

この記事を書いた人

小峰精公/Kiyotaka Komine

元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人

多胡藤夫/Fujio Tago

元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

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中野裕哲

中野裕哲/Nakano Hiroaki

税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授

税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。

経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。

【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。

中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。

【主な実績】

  • 起業支援・経営支援の豊富な実績
  • 起業相談件数3,000件以上
  • 資金調達支援1000件以上
  • 大企業Webサイト多数監修
  • 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)

V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。

税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。


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