
動物病院の医療機器を融資でそろえる方法|エコー・レントゲン費の疑問に回答
動物病院の開業では、超音波診断装置(エコー)やレントゲン装置、麻酔器、血液検査機器といった医療機器が費用の大きな部分を占めます。内装や物件の費用と違い、機器は一台あたりの単価が高く、そろえる順番によって必要な資金額も変わります。ここでは「高額な医療機器の費用を創業融資でどう扱うか」という一点に絞り、開業準備中の獣医師の方から寄せられやすい疑問に、一問一答の形でお答えします。本文の数字は執筆時点(2026年8月)に確認した内容であり、制度や利率は変更されることがあります。
Q. エコーやレントゲンなどの医療機器は、設備資金として申し込めますか
A. 創業融資の資金使途は、大きく「設備資金」と「運転資金」に分かれます。設備資金は、機械・器具・備品や内装工事など、長く使う資産の取得に充てる資金を指し、運転資金は仕入れや人件費など日々の事業運営に充てる資金を指します。医療機器の購入費は、性質としては設備資金で検討する費用です。
ただし、どの機器の費用をどこまで設備資金として申請できるかは、事業計画との整合性や機器の使い方など個別の事情によって判断されます。資金使途はあくまで「事業に必要な支出」であることが前提となるため、判断に迷う費目がある場合は、自己判断で振り分けず、申請先の金融機関や専門家に確認しながら計画を整えてください。
日本政策金融公庫の主力制度である「新規開業・スタートアップ支援資金」の場合、融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)です。返済期間は、同資金を利用する場合の例として設備資金が20年以内、運転資金が原則10年以内とされています。機器のように金額が大きく使用期間の長い投資は、返済期間の面でも設備資金の枠組みで考えることになります。
Q. 中古の機器やリースを使う場合、融資の扱いはどうなりますか
A. 中古機器を購入する場合も、金額の根拠を示す書類が必要になる点は新品と変わりありません。販売業者の見積書や売買契約書など、いくら支払うのかが分かる資料を用意します。中古は同じ型式でも状態や付属品によって価格に幅が出るため、その価格になった理由を説明できるようにしておくと、計画の説明がスムーズです。
リースは、金融機関からの借入とは異なり、法的には賃貸借契約にあたります。そのため、リースで導入する機器の費用を融資の資金使途としてどう扱うかは、契約の形態によって考え方が変わります。ここも一律に決まるものではないため、申請先に確認してください。
初期費用を抑えられるのがリースの利点ですが、次のようなデメリットもあります。
- 連帯保証人が必要になること
- 機器の所有権を持てないこと
- 契約期間中の中途解約が難しいこと
- 故障時の修理負担が借主側になる契約が多いこと
融資とリースのどちらが有利かは、資産計上の考え方や資金繰りの状況によっても変わります。賃貸借費用の負担も含めて、税理士や金融機関に相談しながら判断することをおすすめします。なお、購入した機器やリース料の税務上の処理については、税理士にご確認ください。
💬 執筆者の小峰から一言
機器の話になると借入額にばかり目が向きますが、開業前にご自身の費用で買った備品や設備、取得した資格、テストマーケティングにかけた費用は、みなし自己資金として一定の範囲で評価されることがあります。その材料になるのが領収書です。申し込み前の支出でも、捨てずに残しておいてください。
Q. 見積書はどの段階で必要ですか。相見積もりは取ったほうがよいですか
A. 設備資金を申し込むときは、購入予定の機器について見積書を添えるのが基本です。創業計画書に書いた設備資金の金額は、この見積書の合計と一致している必要があります。金額を先に決めてから機器を選ぶのではなく、導入する機器を決めて見積書を取り、その合計を計画書に落とし込む、という順番になります。
そのため見積書は、申し込みの直前ではなく、資金計画を組み立てる段階で取得しておくことになります。エコーやレントゲンのように納期や設置工事を伴う機器は、見積もりの取得から発注までに時間がかかることもあるため、面談日から逆算して余裕のある日程を組んでおくと落ち着いて準備できます。
相見積もりが必須という決まりはありませんが、複数社から見積もりを取っておくと、その価格で購入する理由を自分の言葉で説明しやすくなります。機器の型式や台数、保守契約の有無まで見積書の内訳が分かる形になっていると、面談での説明も進めやすくなります。
Q. 機器の総額が膨らむとき、審査では何を見られますか
A. 動物病院は機器の単価が高く、そろえる範囲を広げるほど申込金額が大きくなります。審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。判断材料はこの2つに限られるわけではなく、獣医師としての経験、資金使途の内容、面談での説明なども合わせて見られます。
機器に関して問われやすいのは、その機器を導入することで何ができるようになり、それが診療内容や収支の見通しとどうつながるのか、という点です。設備資金の内訳と、計画書に書いた診療体制や売上の見込みが食い違っていないかを、提出前に読み返しておくと安心です。
また、創業融資であっても決算書をまったく見ないわけではありません。新しく設立した法人でも、一期でも決算が締まっていればその決算書が確認されますし、代表者が別に会社を経営している場合は、その会社の決算書も確認の対象になります。分院や別事業を法人で運営している場合は、その内容も踏まえて説明できるように整理しておくとよいでしょう。
金利については、2026年6月1日現在の基準利率は、創業期(税務申告を2期終えていない時期)に利用する場合で年3.45〜5.15%です。創業期の方が利用する場合は、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性がありますが、適用可否は利用する制度や審査・条件により異なるため、必ず下がると考えず申請先で確認してください。
Q. 開業後に機器を買い足す場合はどうなりますか
A. 開業時にすべての機器をそろえず、診療の状況を見ながら追加していく進め方もあります。その場合、後から購入する機器の費用は、当初の融資とは別の申し込みとして扱われるのが一般的です。追加時点では開業後の実績や決算の内容も材料になるため、開業前とは説明の仕方が変わります。
申し込みから融資実行までは、書類提出後おおむね3週間〜1か月が目安です。創業計画書や見積書などの準備期間を含めると、合計で2か月程度を見込んでおくと安全です。機器の納品時期に合わせて資金が必要になるため、「機器を発注してから資金調達を考える」という順番にならないよう、導入スケジュールから逆算して動くことになります。
まとめ
動物病院の医療機器は、エコーやレントゲンをはじめ一台あたりの金額が大きく、創業融資の資金使途の中でも説明を求められやすい部分です。設備資金として申し込む際は見積書で金額の根拠を示し、その機器が診療内容や収支の見通しとどうつながるのかを計画書で説明できる状態にしておくことになります。中古やリースを組み合わせる場合は、それぞれの扱いが異なるため、契約前に整理しておくと迷いが減ります。
本文の数字は執筆時点(2026年8月)に確認したもので、制度や利率は変更されることがあります。個別の費目が資金使途としてどう扱われるかは事業の実情によって変わるため、判断に迷う場合は申請先や専門家にご相談ください。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
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- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
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