
ペット関連業種の事業計画書で来店客数と客単価を決める数字の積み上げ方
トリミングサロンやペットホテル、ペットショップの開業で創業融資を申し込むとき、書式の書き方でいちばん手が止まるのが売上の欄です。テンプレートや記入例は探せば出てきますが、そこに入れる客数と客単価をどこから持ってくるかは、書式を見ても分かりません。
この記事では、ペット関連業種の事業計画書で来店客数と客単価をどう置くかを、店舗の物理的な制約から積み上げる方法として整理します。あわせて、その数字を審査する側が何を見ているのかもご説明します。数字を先に決めて後から理由を付ける順序ではなく、制約条件から出す順序に変えると、面談で聞かれたときに説明が続きます。
売上の数字は相場ではなく、自店の物理的な上限から逆算します
創業時の事業計画書には過去の売上がありません。そのため参考にできる数字を外から探すことになりますが、同業の平均や相場をそのまま置くと、なぜ自分の店でその数字になるのかを説明できなくなります。先に決めたいのは、自分の店が1日に受け入れられる頭数の上限です。
ペット関連業種は、この上限が設備と人の数ではっきり決まります。トリミングサロンなら、施術台の数とトリマーの人数、1頭あたりの所要時間、そして営業時間の掛け算が1日の受入上限になります。大型犬が入ると1頭の時間が伸びるため、受け入れる犬種の範囲を決めることが、そのまま上限を決めることにつながります。
ペットホテルやデイケアであれば、ケージや部屋の数と、1泊あたりの回転が上限を決めます。ペットショップの生体販売や物販であれば、売場面積と在庫の回転が制約になります。どの業態でも、席や部屋や人という数えられるものから出発できるのがこの業種の特徴です。
計算の形だけを仮の数字で示すと、施術台2台・トリマー2名で、1頭あたりの所要時間を2時間、施術に充てられる時間を1日8時間と置いた場合、1日の受入上限は8頭という形になります。ここに月の営業日数を掛ければ、月間の上限が出ます。数字は自店の条件で入れ替えるものですが、この式の形自体は業態が変わっても使えます。ペットホテルなら所要時間ではなく宿泊日数、ペットショップなら施術ではなく接客と在庫が変数になるだけです。
この式を先に置いておくと、開業後に計画とのずれが出たときにも、どの変数がずれたのかが分かります。所要時間が想定より長かったのか、稼働が埋まらなかったのか、単価が届かなかったのかを切り分けられる形にしておくと、追加の資金が要るときの説明もしやすくなります。
上限が出たら、そこに稼働率を掛けます。開業初月から満枠が埋まる計画にはせず、予約が入りはじめてから安定するまでの立ち上がりを月ごとに置いていきます。上限という天井を先に示し、そこからどこまで埋まるかを示す形にすると、数字の根拠が2段階で説明できるようになります。
客単価は料金表の数字ではなく、実際の構成で決まります
客単価を料金表の中間の価格で置いてしまうと、実際の売上とずれます。トリミングの料金は犬種や体格で変わるため、来店するのがどのサイズ帯かによって平均は動きます。想定する商圏に小型犬が多いのか中型犬以上も来るのかで、同じ料金表でも平均は変わってきます。
そこで、単価を1つ置くのではなく、料金帯ごとの構成比と単価を組み合わせて平均を出す形にします。小型犬が何割、中型犬が何割、という置き方をしておくと、面談で「この単価はどう出しましたか」と聞かれたときに、そのまま答えられます。歯みがきや爪切り、薬用シャンプーといったオプションを付ける割合も、単価を押し上げる要素として分けて置けます。
💬 監修者の元日本政策金融公庫の支店長の多胡から一言
単価はいくらで置けばよいですか、という質問をよく受けます。水準そのものより、必要性と妥当性を明確にする、効果を示す、返済力を証明する、という3つが計画の中でつながっているかを見ています。単価の置き方を聞かれるのは、その数字が事業の説明と地続きになっているかを確かめるためです。
もう一つ、ペット関連業種で効いてくるのが来店の間隔です。トリミングは数か月に一度の来店が続く形になりやすく、新規の獲得数だけでなく、既存客が何か月おきに戻ってくるかで月次の客数が積み上がります。新規獲得数と再来の間隔を分けて置くと、月を追うごとに客数が増える形が数字の上で説明できます。
なお、料金の水準そのものをどこに置くかは、商圏の競合状況やサービス内容によって変わります。周辺より高い設定にすること自体が問題になるわけではなく、その価格で来店が続く理由を説明できるかどうかが問われます。
審査する側が見ているのは、数字の水準よりも出どころです
創業融資の審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。実績の代わりになるのが計画の中身なので、売上の欄に置いた数字がどこから出たのかが説明できるかどうかが、そのまま計画の説得力になります。
ここで店舗型の事業には難しさがあります。設備投資の効果を数字で示すとき、製造業であれば機械の生産能力から「これだけ作れて、これだけ売れる」と積み上げられます。一方で店舗や小売は、設備を入れたからといって来店が増えるとは限らないため、効果を数字にしにくい面があります。
ペット関連業種がこの点で有利なのは、席と人と時間という制約が最初から数えられることです。施術台を1台増やす、トリマーを1人増やす、営業時間を延ばす、という投資は、受入上限が何頭増えるかという形で効果を書けます。設備の見積と売上の欄が数字でつながる状態を作れるのが、この業種の書きやすさです。
逆に、内装や外観のように上限を動かさない投資は、来店が増える理由を別の形で説明することになります。この場合は、その投資が客単価や再来の間隔にどう効くのかを分けて書くと、金額の根拠が見えやすくなります。
置いた数字が、計画の他の欄と噛み合っているか
職員数と受入上限が合っているか
客数を増やす計画にすると、それを施術できる人の数が要ります。トリマーの採用予定と人件費が計画に入っていないまま客数だけが伸びていると、数字の整合が取れません。人件費は事業活動に必要な経費として運転資金の対象になるため、採用の予定があるなら資金使途の側にも反映させます。
売上の立ち上がりと、返済の始まりが合っているか
日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合の例として、返済期間は設備資金が20年以内、運転資金が原則10年以内と案内されています。売上が立ち上がるまでの期間と、返済が始まってからの資金の動きが計画の中でつながっているかを見ておくと、月次の数字を置く意味が出てきます。なお、これらの条件は利用する制度によって異なるため、詳細は申請先でご確認ください。
💬 監修者の元日本政策金融公庫の支店長の多胡から一言
見落とされやすいのは、審査で見栄えのする数字に寄せにいくと、かえって説明が続かなくなる点です。減額されない工夫を探すという発想ではなく、自分の計画が実際どうなのかを素直に出すほうが、面談でのやり取りは進みます。数字を直すのではなく、事業の組み立てのほうを見直す順序になります。
数字を置き直したくなったときは、客数と客単価の欄だけを触るのではなく、その裏にある席の数・人の数・来店の間隔のどれが変わるのかまで戻ります。そこまで戻れていれば、面談で細かく聞かれても答えが出てきます。
まとめ
ペット関連業種の事業計画書では、来店客数と客単価を相場から持ってくるのではなく、施術台とトリマーの数、1頭あたりの所要時間、営業時間という数えられる制約から上限を出し、そこに稼働率と立ち上がりを掛けて置いていく順序になります。客単価は料金表の中間値ではなく、サイズ帯の構成比とオプションの付帯率、そして再来の間隔から組み立てます。
審査する側が見ているのは数字の水準そのものではなく、その数字がどこから出たのかという道筋です。席と人と時間という制約が数えられるこの業種は、その道筋を書きやすい側にあります。本記事の内容は2026年8月時点の情報にもとづくもので、制度の条件は変わることがあります。実際の申し込みにあたっては最新の公式情報をご確認いただき、判断に迷う場合は専門家にご相談ください。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























