
トリミングサロン開業の融資金額はどう決める?借入額の目安と決め方
トリマーとして働いた経験を活かして自分のサロンを持とうとするとき、最初に迷いやすいのが「いくら借りればよいのか」という金額の決め方です。開業資金の相場として紹介される金額は幅が広く、他店の数字をそのまま自分の申込額に当てはめることはできません。この記事では、日本政策金融公庫の制度の数字(2026年6月1日現在)をもとに、トリミングサロンの開業でいくら借りるかを決める順番を整理します。
融資金額は「設備資金」と「運転資金」に分けて考えます
開業に必要な資金は、大きく設備資金と運転資金に分かれます。設備資金は開業時にまとまって発生する支出で、トリミングサロンであれば物件の取得費、内装工事費、トリミングテーブルやシャンプー台、ドライヤーなどの機器の購入費が中心です。運転資金は開業後に毎月続く支出で、家賃、人件費、水道光熱費、シャンプーやタオルなどの消耗品費が挙げられます。
この2つを分ける理由は、費目を整理するためだけではありません。日本政策金融公庫の融資では、設備資金と運転資金で返済期間の上限が異なり、限度額の内訳も分かれています。資金使途はいずれも事業に必要な支出であることが前提になるため、まずは自分の計画をこの2つの箱に振り分けるところから始めます。
開業資金の総額は、テナントの広さや立地、機器を新品でそろえるか中古を含めるか、従業員を雇うかどうかによって大きく変わります。相場として示される金額の幅が広いのはこのためで、自分が借りる金額は、実際に取った見積りから積み上げる以外に決めようがありません。
公庫の融資限度額と、申し込む金額の組み立て方
日本政策金融公庫の主力の創業融資は「新規開業・スタートアップ支援資金」です。2024年3月までは「新規開業資金」という名称で、2024年4月に改称・拡充されました。融資限度額は7,200万円で、そのうち運転資金は4,800万円までです。
ただし、7,200万円は制度上の上限であって、トリミングサロンを1店舗開くときに申し込む金額の目安ではありません。申し込む額は上限から逆算するものではなく、必要資金の総額から自己資金として用意できる分を差し引いた金額として組み立てます。
そのため、先に固めるのは融資額ではなく必要資金のほうです。物件と内装工事、機器はそれぞれ見積書を取り、運転資金は開業直後に売上が計画どおりに立たない期間を見込んで、家賃や人件費が何か月分必要かという形で積み上げます。トリミングサロンは新規のお客様がリピートに変わるまで時間がかかりやすいため、この期間をどう見るかで必要額が変わります。
運転資金をどれくらいの期間分で見るかは、申込額を大きく動かします。開業してすぐに予約が埋まる前提で1か月分しか見ていない計画と、軌道に乗るまでの数か月分を見込んだ計画とでは、必要な総額が変わります。売上が計画を下回った場合にどこまで持ちこたえられるかという視点で、期間の取り方に理由を持たせておきます。
審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。金額の根拠を見積書と計画で説明できる状態にしておくことが、希望した額をそのまま伝えるための前提になります。
💬監修者の多胡から一言
「返済が不安なので、少なめに申し込んだほうが通りやすいですか」とご相談をいただくことがあります。返済の重さは返済期間で調整できる部分があり、返済力が乏しいからその分を削る、という考え方で金額が決まるわけではありません。必要なものを緻密に見積もったうえで、収益の中から返済金を出せることを計画で示していただく形になります。
「多めに申し込む」が有利に働かない理由
少し多めに申し込んでおけば、減らされても必要な額が残るのではないか、と考える方がいます。ただ、申込額は資金使途と一対一で説明できることが前提です。見積りの裏づけがない上乗せ分は、何にいくら使うのかを説明できないため、計画全体の精度そのものに疑問を持たれることになります。融資の申込額は、多く書いたから多く出るというものではなく、計画の中身から説明できる範囲で決まっていきます。
もう一つは返済の問題です。借りた金額には利息が付き、必要以上に借りた分も同じ条件で返していくことになります。開業直後の資金繰りに余裕を持たせたいという意図であれば、金額を上乗せするのではなく、次に触れる据置期間の設定で調整する方法があります。
返済期間と据置期間から、月々の返済に耐えられる額を確かめます
新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合の返済期間は、設備資金が20年以内、運転資金が原則10年以内です(利用する制度により異なります)。据置期間はいずれも5年以内で設定でき、据置期間中は利息のみの支払いとなります。
借入希望額の候補が出たら、この期間を使って月々の返済額を試算します。設備資金と運転資金では返済期間の上限が違うため、同じ総額でも内訳によって毎月の負担は変わります。トリミングは1日に対応できる頭数に限りがあり、売上の上限が読みやすい業種です。想定した売上から家賃や人件費などを差し引いたうえで、その返済額が残るかどうかを確かめます。
据置期間は、開業直後の売上が安定しない時期の負担を抑えるための仕組みです。ただし据置期間中は元金が減らないため、据置期間が明けたあとの返済額はその分だけ大きくなります。据置期間を長めに取る場合は、明けたあとの返済額でも計画が回るかどうかまで見ておきます。
金利と、申し込みから融資実行までの期間(2026年6月1日現在)
2026年6月1日現在の基準利率は、創業期(税務申告を2期終えていない時期)に利用する場合で年3.45〜5.15%です。創業期の方が利用する場合は、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性がありますが、適用可否は利用する制度や審査・条件により異なるため、必ず下がると考えず申請先で確認してください。
金利は改定されることがあるため、返済額の試算はこの時点の数字にもとづくものとして扱ってください。なお創業期の方(新たに事業を始める方、または事業開始後に税務申告を2期終えていない方)は、原則として無担保・無保証人で各種融資制度を利用できます。
申し込みから融資実行までは、書類提出後でおおむね3週間から1か月が目安です。創業計画書や見積書などの準備にかかる時間を含めると、合計で2か月程度を見込んでおくと安全です。物件の引き渡し時期から逆算して動くと、家賃だけが先に出ていく期間を短くできます。
まとめ
トリミングサロンの開業で借りる金額は、相場から決めるものではなく、次の順番で自分の計画から積み上げていく形になります。
- 必要資金を設備資金と運転資金に分け、見積書で金額の根拠をそろえます。
- 必要資金の総額から自己資金を差し引いて、申し込む金額を組み立てます。
- 設備資金20年以内・運転資金原則10年以内という返済期間で、月々の返済額を試算します。
- 据置期間(5年以内)が明けたあとの返済額でも、計画が回るかどうかを確かめます。
ここまでの数字は2026年6月1日現在の情報です。制度の内容や金利は改定されることがあり、適用される条件は個別の状況によって異なるため、実際の申込額を決めるときは申請先や専門家に確認しながら進めてください。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























