
ピッチ資料だけでは銀行融資は通らない?銀行に説明すべき3つのこと
VCから出資を受けたスタートアップの代表の方から、こんなご相談をいただきました。投資家向けの資料がそのまま銀行で通じない理由と、銀行に何を説明すればよいのかを解説します。
投資家向けのピッチ資料はありますが、それを銀行に見せても話がかみ合いませんでした。銀行に融資をお願いするときは、どんな資料で何を説明すればいいのでしょうか?

回答者
小峰精公
元信用金庫職員で融資審査の実務に詳しい専門家
投資家向けのピッチ資料と、銀行融資の面談で求められる資料は、実は目的そのものが大きく異なります。投資家は「将来どれだけ大きく成長できるか」という可能性に賭けてお金を出しますので、市場の大きさや成長の勢い、将来のビジョンを前面に出した資料が評価されます。一方、銀行は融資したお金を期日通りに返してもらうことを前提にお金を貸しますので、知りたいことは「将来の夢」ではなく「このお金は本当に返ってくるのか」という一点に尽きます。この視点の違いを理解しないまま投資家向け資料をそのまま見せてしまうと、担当者の反応が薄くなってしまうのも無理はないことだと感じます。
銀行の融資審査の現場で私が実際に重視していたのは、まず資金の使い道です。調達した資金を何に、いくらずつ使うのかを、できるだけ具体的に説明できる資料が求められます。人件費、設備費、広告費、システム開発費といった項目ごとに、使う時期と目的を分けて示すと、担当者は使い道の実態をイメージしやすくなります。投資家向け資料のように大きな事業構想を語るだけでなく、直近の資金使途を一つひとつ丁寧に言葉で説明できるよう準備しておくことをお勧めします。使途があいまいなままだと、お金の流れそのものを疑われてしまうこともあります。
次に重視されるのが資金繰りです。資金繰りとは、日々のお金の出入りの見通しのことで、売上が入るタイミングと、仕入れや人件費などの支払いのタイミングにズレがないかを確認するためのものです。成長期のスタートアップは、売上が立つより先に人を雇ったり広告を出したりして支出が先行する場面が多いため、この出入りの見通しを示す資料があるかどうかで、担当者の受け取り方は大きく変わります。月単位でお金の動きを並べた表を用意し、支出が先行する時期や季節的に資金が薄くなる時期をどう乗り切るのかを説明できると、担当者にも安心感を持ってもらいやすくなります。
最後に欠かせないのがランウェイ、つまり今ある手元資金で事業をあと何カ月、何年維持できるのかという見通しです。投資家向けの資料では「いつまでに次の調達を行うか」という前提で語られがちですが、銀行への説明では、次の調達が計画どおりに進まなかった場合でも事業を続けられるのか、という視点が求められます。手元資金と毎月の支出のペースから、資金が底をつくまでの期間を自分の言葉で説明できるようにしておくと、担当者も現実的な判断をしやすくなりますし、経営そのものを堅実に見通している印象にもつながります。
投資家向けの資料をベースにしながらも、成長ストーリーの部分は控えめにし、資金の使い道・資金繰り・ランウェイという三つの軸を中心に資料を組み立て直すだけで、銀行の担当者との話は驚くほどかみ合うようになります。
投資家と銀行では見ているものが違うという前提に立ち、資金の使い道・資金繰り・ランウェイを軸にした資料を用意することが、銀行融資の説明を成功させる近道です。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine 元朝日信用金庫 法人営業 資金繰り解決コンサルタント V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役 大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。 日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。 クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

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多胡藤夫/Fujio Tago 元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役 同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。 支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。 日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。 長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


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中野裕哲/Nakano Hiroaki 税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。 経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。 【対応領域】 税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。 中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。 【主な実績】
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V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
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