
寿司店の冷凍冷蔵設備に使える補助金|省エネ更新・省力化・冷凍販売の3つで入口を仕分ける
寿司店の冷凍冷蔵設備に補助金は使えるか|目的別に選ぶ制度と見積前の仕分け
ネタケースの効きが落ちてきた、仕込み用の冷蔵庫から異音がする、持ち帰りを増やしたいので急速冷凍機を検討している。寿司店で冷凍冷蔵まわりの相談が出てくるきっかけは一つではありません。ところが補助金を調べると「冷凍冷蔵設備に使える制度一覧」という形の情報が並び、自分の投資がどれに当たるのか分からないまま見積だけが先に進みます。ここでは寿司店の冷凍冷蔵設備を「何のために入れるのか」で仕分けし、制度を選ぶ順番を整理します。情報は2026年8月時点のもので、申請時は各制度の公式情報をご確認ください。
寿司店の「冷凍冷蔵設備」は一つの投資ではありません
寿司店が抱える冷凍冷蔵まわりの機器は、役割がはっきり分かれています。カウンターのネタケース、バックヤードの縦型冷蔵庫、製氷機、そして急速冷凍機や冷凍ストッカーです。前の三つは、今の営業をそのまま続けるために必要な設備です。対して急速冷凍機は、仕込みを前倒しする、休業日の仕入れを持たせる、冷凍した握りや丼を持ち帰りや発送で売るといった、営業の中身を変えるために入れる設備になります。
補助金の側から見ると、この違いがそのまま入口の違いになります。今と同じことを続けるための入れ替えを支援する制度と、人手を減らす投資を支援する制度と、新しい売り方を作る投資を支援する制度は、それぞれ別の枠組みだからです。「冷凍冷蔵設備を買う」という一つのくくりで見積を作ると、どの制度から見ても中途半端な計画になります。
投資の目的を三つに仕分けると入口が見えます
目的1:古い設備を省エネ性能の高いものへ入れ替える
電気代の負担が重く、機器の老朽化を機に高効率の設備へ更新したいという場合は、省エネ・非化石転換補助金が候補になります。この補助金は事業区分が複数あり、そのうち設備単位型(従来枠)は補助上限1億円・補助下限30万円、補助率は3分の1以内です。対象設備の例に冷凍冷蔵設備が挙げられており、寿司店の冷蔵ショーケースや冷蔵庫の更新は形の上では射程に入ります。
ただし条件が細かく、設備単位型では省エネ率10%以上、省エネ量1キロリットル以上、経費当たり省エネ量1キロリットル/千万円以上のいずれかを満たす必要があります。さらに設備単位型は原則として「更新」が中心で、新規導入・増設・予備設備・将来用設備・中古品は対象になりにくく、更新前後で用途が同じであることも求められます。席数を増やすためにネタケースを1台足す話だと、筋が変わってきます。
目的2:仕込みや会計の手を減らす
人が採れないので工程そのものを作り替えたい、という動機であれば中小企業省力化投資補助金(一般型)が候補です。補助上限は1億円で、単価50万円(税抜)以上の機械装置等を最低一つ入れることが要件になります。ここで見落とされやすいのが、対象になるのは「オーダーメイド性のある設備」だという点です。汎用設備を複数組み合わせてより高い省力化効果を生む場合や、導入環境に応じて周辺機器や機能の構成が変わる場合は対象になり得ますが、汎用設備を単体で導入するだけの事業は対象外とされています。急速冷凍機を1台置くだけの計画では、金額の要件を満たしていても届きません。
既製の省力化機器をそのまま導入したい場合は、同じ補助金のカタログ注文型という選択肢もあります。ただしカタログ注文型は補助上限額が改定されているため、金額を前提に判断する前に公式の最新情報でご確認ください。
目的3:冷凍を使って売り方そのものを変える
冷凍した商品を通信販売で出す、店で出していない冷凍寿司を新しく開発する、といった方向であれば、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠が視野に入ります。補助下限は100万円で、補助上限は従業員規模別に1〜5人で750万円、6〜20人で1,000万円という形です(大幅賃上げ特例の適用時はさらに上振れします)。補助率は中小企業者で2分の1、小規模企業・小規模事業者・再生事業者は3分の2です。新製品・新サービスの開発を伴わない単なる導入は対象外なので、既存の握りをそのまま凍らせて売るだけでは説明が弱くなります。
投資額がもっと小さく、販路開拓が主題であれば小規模事業者持続化補助金という道もあります。商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)は常時使用する従業員5人以下が対象で、補助率3分の2、補助上限は基本50万円、特例の要件を満たす場合に最大250万円まで上乗せされます。冷凍商品の販売サイト制作を組み込む場合、ウェブサイト関連費は補助金交付申請額の上限が30万円(税込)で、ウェブ関連費のみの申請はできない点にご留意ください。
💬 執筆者の三浦から一言
省エネの補助金は上限が数億円と紹介されることがありますが、あの数字は事業区分ごとの話です。省エネ・非化石転換補助金は区分によって補助上限も補助率も対象経費も変わりますので、冷凍冷蔵設備の入れ替えがどの区分に当たるのかを先に決めないと、見積の作り方から食い違います。区分名まで確認してから設備業者と条件を詰めてください。
見積の総額と、補助の対象になる金額は別ものです
冷凍冷蔵設備の入れ替えは、機器の代金だけでは終わりません。既存機の撤去、搬入、据付、配線と配管、廃棄。設備業者から出てくる見積は、これらが一式で並んだ形になります。ところが省エネ・非化石転換補助金では、設備単位型・GX設備単位型の多くは「設備費のみ」が中心で、設計費、運搬費、撤去費、廃棄費、据付費・工事費、配線・配管などは対象外になりやすい扱いです。電化・脱炭素燃転型では工事費が対象になる場合がありますが、区分ごとに対象範囲がかなり違います。
見積の総額に補助率を掛けて手元に残る金額を計算すると、実際の交付額とずれます。設備費とそれ以外を分けた見積を出してもらい、どこまでが対象経費なのかを業者と共有しておくと後の書類作成が楽になります。あわせて省エネ・非化石転換補助金は原則として3者以上の価格競争・見積取得が求められ、補助対象経費は価格競争等の結果による最低価格が上限です。1社に相談して決めてしまう進め方とは相性がよくありません。
投資額が小さいと、そもそも制度に乗りません
補助金には上限額だけでなく下限額があります。省エネ・非化石転換補助金は補助下限30万円、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は革新的新製品・サービス枠が補助下限100万円、新事業進出枠が補助下限750万円です。下限があるということは、投資が小さいほど選べる制度が減っていくということでもあります。
逆に言えば、単体では届かない投資も、目的が一本につながっていればひとつの事業として組み立てられます。ネタケースと縦型冷蔵庫を同時期に更新する、急速冷凍機と販売サイトを冷凍商品の立ち上げという一つの計画にまとめる、といった発想です。ただし金額を届かせるために目的の違う投資を寄せ集めると、今度は計画の筋が通らなくなります。
💬 執筆者の三浦から一言
相談でよくいただくのが、ネタケースを1台だけ入れ替えたいのですが対象になりますか、という質問です。制度には補助の下限額があり、革新的新製品・サービス枠は100万円、新事業進出枠は750万円が下限です。1台だけでは枠に届かないことがありますので、どこまでを一つの計画としてまとめるかを最初に考えていただくと話が早く進みます。
交付決定の前に発注すると対象外になります
冷凍冷蔵設備は、壊れてから動くと補助金に間に合わない類の投資です。省エネ・非化石転換補助金は交付決定前の契約・発注が不可で、事業開始日は交付決定日とされています。小規模事業者持続化補助金も交付決定日前に行った発注・契約・支払は対象外で、採択の通知だけでは事業を始められません。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金でも、交付決定前の発注・契約・購入は対象外です。
公募の時期も見ておきます。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募は2026年6月29日に始まり、申請締切は2026年9月30日18時、採択発表は2026年12月頃とされています。小規模事業者持続化補助金の第20回は申請受付開始が2026年11月5日、締切が2026年12月15日17時です。持続化補助金は商工会・商工会議所が発行する事業支援計画書が必要で、その発行受付締切は2026年12月4日と申請締切より前に置かれています。機器の寿命と公募の時期を並べておくと、どこまで粘れるかを判断しやすくなります。
ここまでの制度の外にある選択肢について
冷凍冷蔵機器については、経済産業省・中小企業庁の系統とは別に、環境分野の枠組みで支援が用意されている場合があります。所管も要件も対象機器の考え方も別建てのため、ここでは存在に触れるにとどめます。冷媒や環境性能を軸に検討される場合は、所管する官庁の公表情報か、機器メーカーに該当する枠組みがあるかをご確認ください。どちらが有利かは事業所の状況で変わります。
まとめ
寿司店の冷凍冷蔵設備に補助金を使えるかどうかは、機器の名前ではなく投資の目的で決まります。今と同じ営業を続けるための省エネ更新なのか、人手を減らすための工程の作り替えなのか、冷凍で売り方を変える新しい取り組みなのか。この仕分けを先に済ませてから、制度ごとの下限額、対象経費の範囲、交付決定と発注の順番を確認する流れになります。見積を取る前に目的を言葉にしておくと、後戻りが減ります。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























