
起業前に知っておこう!「出資」の基本と賢い使い方
こんにちは。起業コンサルタント、税理士、行政書士、特定社会保険労務士、ファイナンシャルプランナーの中野裕哲です。
今回のテーマは「出資」。そう、「誰かにお金を出してもらうこと」です。
「借りる」とは違うこの資金調達方法、しっかり理解しておかないと、あとで思わぬトラブルに巻き込まれることも。
そこで今回は、出資の基本から実務的な活用法、そして投資家との付き合い方まで、起業準備中のあなたに向けてわかりやすく解説します。
1. 出資とは?借入とどう違うの?
まず、「出資」と「借入」の違いを押さえておきましょう。
- 借入:将来、返す義務があるお金
- 出資:原則として返す必要がないが、経営権や配当などの「見返り」が発生するお金
つまり、出資とは「出してくれた人(出資者)がリスクも一緒に負う代わりに、見返りを得る」仕組みです。
借金と違って、毎月の返済義務はありません。ただし、その代わりに「経営への関与」や「株式の譲渡」などの条件が付くのが一般的です。
2. 出資の主な種類と特徴
起業における出資には、いくつかのパターンがあります。
(1) 株式出資(株式会社の場合)
- 出資者は「株主」になります
- 出資額に応じて株式を保有
- 配当や議決権を持つ
- 会社の利益が出れば「配当」、株式売却益も可能
投資家やベンチャーキャピタルからの出資は、ほぼこの形式です。スタートアップ企業では最も一般的な形態といえます。
(2) 出資持分(合同会社など)
- 株式はないが、「出資比率」に基づく分配がされる
- 持分割合が経営への影響力につながる
合同会社の場合は出資=持分であり、議決権なども出資比率によって決まります。
(3) 出資という名の「支援」
- エンジェル投資家、クラウドファンディング型など
- 金銭的な見返りより「共感」を重視するケースも
特に最近は「共感型出資」が注目されています。クラウドファンディングでは「リターンとして製品を先行提供」など、金銭的利益以外の動機も大切です。
3. 出資のメリットとデメリット
■ メリット
- 借金ではないので返済義務なし
- 財務体質が強くなる(自己資本比率アップ)
- 資金とともにノウハウや人脈が手に入ることも
とくに、エンジェル投資家やVCからの出資は、「お金+人脈・ノウハウ・信用力」が得られる点が大きなメリットです。
■ デメリット
- 経営に口を出されるリスク
- 持分比率によっては「経営権の喪失」も
- 成功時の利益を出資者に分配する必要
また、「追加出資を要求される」「期待どおりの利益が出なかったときに責任を問われる」などのプレッシャーもあるかもしれません。
ズバリ言います。お金を「もらう」のではなく、「共に背負う」覚悟が必要です。
4. 出資を受ける際のチェックリスト
- 出資者の人となり(信頼できるか?)
- 出資契約書の有無と内容
- 議決権・配当・持分比率の整理
- 将来の資本政策(他の出資を受ける可能性含む)
とくに「持分比率」の考え方は重要です。創業初期に大きな持分を渡してしまうと、後の増資時に創業者の影響力が減ってしまうリスクがあります。
5. 出資契約書のポイント
- 出資額、出資日、出資の目的
- 配当の有無と方法
- 経営関与の程度
- 議決権の取り決め
- 退出(エグジット)のルール
とくに後者、将来「どうやって出資者が抜けるのか?」まで想定しておくことが、トラブル回避のカギです。
エグジットとは、出資者が利益を得て事業から撤退する方法。たとえばIPO(株式上場)やM&A(会社売却)などです。これを最初から見据えた設計が必要です。
6. 出資者との関係構築
「お金を出してもらったら、何でも言うことを聞く」
これは間違い。
出資者は「パートナー」であって、「上司」ではありません。
お互いの役割や責任を明確にしたうえで、対等な関係を築くことが重要です。
また、出資者は「リスクを負ってくれた恩人」でもあります。その信頼に応えるためにも、定期的な報告やコミュニケーションを怠らないようにしましょう。
7. 出資を受けるまでの流れ
- 資金計画と出資希望額の明確化
- 出資先候補の選定(知人、投資家、VCなど)
- 面談・提案(事業計画書の提示)
- 条件交渉
- 契約締結(出資契約書)
- 資金受領・出資実行
事業計画書では、ビジョン・マーケット・競合・収支計画などを整理しておく必要があります。これは「熱意×数字」の勝負です!
FAQ:出資に関するよくある質問
Q1. 出資と借入、どちらがよいですか?
A. ケースバイケースです。返済義務を避けたいなら出資、自由な経営を重視するなら借入が有利です。
Q2. 出資者は必ず会社に関与してきますか?
A. 出資契約で決められます。完全にサイレント(静かな)出資もあれば、積極的に関わる投資家もいます。
Q3. クラウドファンディングも出資ですか?
A. 一部はそうです(投資型)。購入型や寄付型とは異なり、出資型は金融商品としての規制を受けます。
Q4. 出資の割合が大きすぎるとどうなりますか?
A. 会社の実権を奪われる可能性もあります。創業者としての立場を守るため、慎重に判断を。
Q5. 出資を受けたら必ず配当しなければならない?
A. 契約内容によります。利益が出たときにだけ配当する、または一定年数後に配当開始など、柔軟に設計できます。
まとめ:夢の実現には「信頼できるお金」が必要
起業とは、夢を形にする冒険です。
そのためには、資金が必要。そしてその資金は、信頼できる形で集めるべきです。
「出資」は単なるお金の話ではありません。共に未来をつくる仲間を迎え入れる行為でもあります。
正しい知識をもって、あなたにとって最適な資金調達を選びましょう。
不安な点があれば、どうぞお気軽にご相談ください。あなたの夢の実現を、心から応援しています!
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この記事を書いた人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP技能士。大正大学招聘教授(起業論、ゼミ等)
V-Spiritsグループ創業者。税理士法人V-Spiritsグループ代表。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「ベストセラー起業本」の著者。著書20冊、累計25万部超。経済産業省後援「DREAMGATE」で12年連続相談件数日本一。
【まるごと起業支援(R)・経営支援】
起業コンサル(事業計画+融資+補助金+会社設立支援)+起業後の総合サポート(経理 税務 事業計画書 融資 補助金 助成金 人事 給与計算 社会保険 法務 許認可 公庫連携 認定支援機関)など
【略歴】
経営者である父の元に生まれ、幼き頃より経営者になることを目標として過ごす。バブル崩壊の影響を受け経営が悪化。一家離散に近い貧困状況を経験し、「経営者の支援」をライフワークとしたいと決意。それに役立ちそうな各種資格を学生時代を中心に取得。同じく経営者であるメンターの伯父より、単に書類や手続を追求する専門家としてではなく、視野を広げ「ビジネス」の現場での経験を元に経営者の「経営そのもの」を支援できるような専門家を目指すようアドバイスを受け、社会人生活をスタート。大手、中小、ベンチャー企業、会計事務所等で営業、経理、財務、人事、総務、管理職、経営陣等、ビジネスの「現場」での充実した修行の日々を送ったあと、2007年に独立。ほかにはない支援スタイルが起業家・経営者に受け入れられ、経済産業省「DREAM GATE」にて、面談相談12年連続日本一。補助金・助成金支援実績600件超。ベストセラー含む起業・経営本20冊を出版。累計25万部超。無料相談件数は全国から累計3000件を超す。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。



























