
いまさら聞けない「損失回避心理」ってなに?──失うのが怖くて人は動けない、その本質とビジネス応用
「損失回避心理」とは、人が「得をすること」よりも「損をすること」をずっと強く嫌がる心理の傾向を言います。得る喜びよりも、同じ額を失う痛みのほうが2倍以上大きく感じると言われ、それが意思決定に深く影響します。本記事では、「損失回避心理」の仕組みと、起業家・経営者として押さえておきたい実務応用をわかりやすく解説します。
① 損失回避心理とは?
- 得るよりも失うことを避けたい:たとえば1万円を得る喜びより、1万円を失う痛みの方が強く感じられます。これは進化的にも脅威回避のために備わった心理機能であり、現代でも判断に影響する常識的な傾向です。
- プロスペクト理論の核心:行動経済学のダニエルカーネマンとトベルスキーが示した理論で、損失が同額の利益より心理的に重くのしかかるという傾向が「損失回避性」です。
② なぜ人は損失を避けたくなるのか?
- 心理的ショックが大きいから:損失は恐怖や不安を引き起こし、人間はそれを避けるよう本能的に動きます。
- 損失に対する感応度が高い:わずかな損失でも痛覚のように敏感に反応します。得られる利益に比べ、失うことを避けようとする力が圧倒的に強い点が特徴です。
③ 日常やビジネスでの具体的例
- 宝くじ:当選の期待より、はずれたときの「もったいない」心理が強く働きます。
- 投資:含み損が出ると「元に戻るかも」と塩漬けし、含み益は早めに確定する傾向が見られます。
- 無料トライアルの解約:「せっかく始めたのに辞めるのが損」…と思う心理が働き、トライアル後も続けやすくなります。
- 放送終了後30分以内に申し込めば4割引き:「逃したら安く買えない!」という心理が強く働き、購買につながります。
④ ビジネスにどう活かせる?
- A. フレーミングの応用:利益を強調するより「損失を避ける手段」を伝えたほうが効果的。「年間○万円の無駄がなくせます」など。
- B. 解約阻止のしくみ:「損失を感じさせる」仕掛け(例:「いつでも戻れます」「データはそのまま」)で継続率アップ。
- C. 価格戦略に活用:「あと少しで無料期間が終わる」など、継続を選ばせる心理を活用。
⑤ 注意すべきポイント
- 不安に頼りすぎない:ネガティブに訴求しすぎると信頼が損なわれます。
- バランスが重要:損失回避を使うときは、「得」もセットで示すのが誠実です。
- 過度な反応に注意:2倍の影響といっても個人差はあり、過信は禁物です。
■まとめ:損失回避心理は“人が前に進むスイッチ”
損失回避心理は、人が動くための強力なスイッチであり、マーケティングや価格設計、継続体験などに役立ちます。一方で、恐怖や不安に過度に依存すると信頼を損なう危険も。「損失回避 × 信頼ある情報提示」のバランス設計が、現代ビジネスでは求められます。
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この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
補助金コンサルタント、融資・資金調達コンサルタント、
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。
この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。