
経営者保証を外す準備の進め方|整える経営状態と、申し入れまでの手順
借入が残っている法人で、代表者の個人保証がそのままになっている。この状態から「保証を外してほしい」と口頭で伝えるだけでは、話がその場で止まりやすくなります。経営者保証がどのようにしたら外れるのかは理解をしておく必要があります。
この記事では、数年経営してきた中小企業が、いまある借入について保証の見直しを申し入れる場面を想定し、その前にそろえておく状態を順番に整理します。根拠は「経営者保証に関するガイドライン」(経営者保証に関するガイドライン研究会、平成25年12月)の本文で、内容は2026年9月時点のものです。
外すための条件は、ひとつの表にまとまっていません
検索で出てくる「3要件」は、ガイドライン第4項(1)「主たる債務者及び保証人における対応」に置かれた3つの項目です。事業者と保証人が努めることとして、次のように並んでいます。
- ① 法人と経営者との関係の明確な区分・分離
- ② 財務基盤の強化
- ③ 財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性確保
ところが、同じ第4項には(2)「対象債権者における対応」という別の枠があり、金融機関が保証を求めない可能性を検討する場面の記述は、そちらに書かれています。そこで挙がっているのはイ)からホ)までの5項目です。
- イ)法人と経営者個人の資産・経理が明確に分離されている。
- ロ)法人と経営者の間の資金のやりとりが、社会通念上適切な範囲を超えない。
- ハ)法人のみの資産・収益力で借入返済が可能と判断し得る。
- ニ)法人から適時適切に財務情報等が提供されている。
- ホ)経営者等から十分な物的担保の提供がある。
。準備を進めるときは、①②③を作業の単位にしつつ、出来上がった状態がイ)からニ)の書き方に届いているかを確かめる、という二段の見方をしておくと、面談での説明がかみ合いやすくなります。
準備1|法人と経営者のお金の出入りを分ける
①について、ガイドラインは「法人の業務、経理、資産 ownership等に関し、法人と経営者の関係を明確に区分・分離し、法人と経営者の間の資金のやりとり(役員報酬・賞与、配当、オーナーへの貸付等をいう。)を、社会通念上適切な範囲を超えないものとする体制を整備するなど、適切な運用を図る」と書いています。
ここで目を引くのは「体制を整備する」という言い方です。決算前にまとめて整理して見た目を直す、という進め方は想定されていません。会社と個人のどちらの財布から出た支出なのか、事業に使っている資産の名義がどちらなのか、代表者への貸付や代表者からの借入が積み上がっていないか。この3点を毎月の処理の中で切り分けられる形にしておくのが、この項目の中身です。
なお、切り分けたあとの会計処理や税務上の扱いは税理士の領域です。ここでは「分かれている状態を作る」ところまでを準備と考え、処理の方法は顧問税理士と決めてください。
準備2|法人だけの数字で返せると読める形にする
②は「財務状況及び経営成績の改善を通じた返済能力の向上等により信用力を強化する」と書かれています。抽象的に見えますが、対応する金融機関側の項目ハ)が「法人のみの資産・収益力で借入返済が可能と判断し得る」となっているため、読み方は絞られます。
着目されるのは黒字かどうかだけではなく、「法人のみ」という限定のほうです。代表者からの借入で運転資金をつないでいる、代表者名義の不動産を担保に入れて借入が成立している、といった状態は、法人だけの力で返済が回っていると読みにくくなります。準備としては、代表者からの借入をどう解消していくのか、その時期の見込みを自分の言葉で説明できるようにしておく段階が先に来ます。
準備3|情報開示を「聞かれたら出す」から「変わったら出す」に変える
③でガイドラインが求めているのは、開示の要請に「正確かつ丁寧に信頼性の高い情報を開示・説明する」ことに加えて、もうひとつあります。「開示・説明した後に、事業計画・業績見通し等に変動が生じた場合には、自発的に報告するなど適時適切な情報開示に努める」という部分です。
金融機関側の項目ニ)も「適時適切に財務情報等が提供されている」という書き方で、頻度ではなくタイミングを問う形になっています。年に一度、決算書を届けるところで止まっている場合、この項目に届いているとは言いにくくなります。試算表を定期的に渡す、計画から外れた月にその理由を先に伝える、といった動きが、ここでの準備にあたります。
💬 執筆者の小峰から一言
信用金庫で融資を出す側にいたころは、目の前の会社の決算書だけを見ていたわけではありません。代表者が別の会社も経営していれば、そちらの決算書にも目を通していました。分離という言葉は堅く聞こえますが、見る側は最初から経営者の周辺まで一続きで眺めています。その視線を思い浮かべてから並べ直すと、どこから手を付けるか決めやすくなります。
外部専門家の検証を付けるかどうかは、この段で決めます
ガイドラインは①の体制整備について「外部専門家(公認会計士、税理士等をいう。)による検証を実施し、その結果を、対象債権者に適切に開示することが望ましい」、③の開示についても「外部専門家による情報の検証を行い、その検証結果と合わせた開示が望ましい」と書いています。
いずれも「望ましい」のであって、要件として書かれてはいません。費用と手間がかかる話なので、借入の残高や取引先の数を見ながら、付けるかどうかをここで決めておきます。付けない場合は、その分だけ自社の説明で埋めることになります。
いまある保証を見直すときは、第6項から入ります
ここまでは、これから借りるときに保証を求めない可能性を検討してもらう話です。すでに差し入れている保証を外したい場合は、ガイドライン第6項「既存の保証契約の適切な見直し」が対応します。
第6項(1)①には「既存の保証契約の解除等の申入れを対象債権者に行うに先立ち、第4項(1)に掲げる経営状況を将来に亘って維持するよう努める」とあります。準備1から3の状態を作ったうえで申し入れる、という順番がここで示されています。「将来に亘って」という語がある以上、直近の1期だけ整った状態では説明しきれない場面も出てきます。
そして②では、申入れがあった場合の金融機関の対応として「真摯かつ柔軟に検討を行うとともに、その検討結果について主たる債務者及び保証人に対して丁寧かつ具体的に説明する」と書かれています。申し入れること自体が想定された行為であり、結論が変わらなかったとしても、何が足りないのかの説明を受けられる建てつけになっています。断られたときに「どの項目が届いていませんか」と重ねて聞くのは、この記述に沿った動き方です。
3つそろえても外れないことがあります
ガイドラインは、中小企業団体と金融機関団体に共通する「自主的自律的な準則」として作られたものです。法律のように守らせる仕組みを持っているわけではありません。第4項(2)の書き方も「経営者保証を求めない可能性、上記のような代替的な融資手法を活用する可能性について、主たる債務者の意向も踏まえた上で、検討する」であり、経営状況、資金使途、回収可能性等を総合的に判断する中で、という前置きが付いています。
また、代替手段として停止条件付保証契約や解除条件付保証契約、流動資産担保融資、金利の一定の上乗せなどが挙げられています。外すか外さないかの二択ではなく、条件を付けた形が返ってくることもあります。イ)からニ)が整っているのに結論が動かない場合は、代替手段の余地があるかどうかを聞いてみると、話が次に進むことがあります。
まとめ
経営者保証を外す準備は、①法人と経営者のお金の出入りを分ける、②法人だけの数字で返済が回ると読める形にする、③変動があったときに自分から報告する、の3つを整えることから始まります。そのうえで、既存の保証については第6項に沿って申し入れ、検討結果の説明を受けます。数字の作り方や税務の扱いには専門家の判断が要る場面もありますので、自社の状況に合わせた進め方は、あわせてご相談ください。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























