
銀行が創業期の企業に対して考えること
今回は、「銀行が創業期の企業に対してどのように考えているのか?」というテーマでお話しします。
そもそも銀行はどんな人に融資したいのか?
これは意外と盲点なのですが、「銀行が融資したいと思う相手とは?」という視点で事業計画や自己アピールを考えることが、実は融資を受けるうえでとても大切なポイントになります。
銀行が「融資したい」と感じる要素には、次のようなものがあります。
業績の良い会社
現金・資産が潤沢にある会社
社長の人柄や信頼感がある会社
担保を持っている会社
安定的なキャッシュフローが見込める会社
でも、これらの条件って、すでにある程度軌道に乗った企業に当てはまるものが多いですよね。
では、「創業期」の企業――つまり、まだ実績も数字もないスタートアップに対して、銀行はどう見て、どう判断しているのか?
この点について、以下で3つの切り口から解説していきます。
1. きちんと情報開示をしている
創業間もない企業というのは、銀行からするとまさに「未知の存在」です。
決算書もなければ、過去の取引実績もありません。
だからこそ、金融機関としては、質問を通じて一つひとつ情報を引き出していくしかありません。
その時に大事なのが、「都合の良いことだけでなく、悪いこともきちんと説明できるか?」という点です。
まだ集客はこれからだけど、どうやってアプローチするのか?
売上見込みはどう立てているのか?その根拠は?
なぜこのタイミングで独立したのか?
自己資金はどう貯めたのか?普段の生活管理はどうか?
このような質問に対し、包み隠さず、自分の言葉で説明できる方は、銀行側から「誠実で信頼できる人だな」と判断されます。
銀行との信頼関係は、“第一印象”+“情報開示の姿勢”でほぼ決まると言っても過言ではありません。
2. 過去の実績
次に見られるのが、「これまでに何をしてきたか?」という過去の実績です。
ここでいう実績は、決して「起業してからの売上」だけではありません。
むしろ、創業期においては、
これまでの職歴
同業界での経験年数
過去に任されていたポジションや成果
顧客との関係性(既存の見込み客の存在)
といった会社員時代や前職での実績が、審査上の「信用材料」として高く評価されます。
ただし、気をつけたいのは「社内の評価=市場の評価」ではないという点です。
例えば、「社内MVPを取りました」といった実績があっても、それを起業後にどう活かせるか?
つまり、「それをもとにお客様をどう獲得できるか?」という視点が大切になります。
融資はあくまで「返済」が前提ですから、その実績が売上につながる根拠として語れるかが重要なのです。
3. 協力者がいる
最後に見られるのが、「協力者の有無」です。
起業しても、最初は何もかも自分でやらないといけないという場面が多いですよね。
ただし、金融機関の目線からすると、「その人だけで本当にこの計画が回るのか?」という不安は必ず出てきます。
そんな時に、専門的なスキルを補ってくれる仲間や、資金面・営業面でサポートしてくれる協力会社がいれば、それだけで事業の「実現可能性」はグッと高くなります。
開発は外注先に頼める体制が整っている
会計・税務は顧問税理士がついている
営業代行やコンサルタントの支援がある
同業者との業務提携が決まっている
こうした情報は、「一人ではない」「孤立していない」証拠になりますし、事業の安定性や継続性をアピールするうえでも大きな武器になります。
まとめ:銀行は「できるだけ応援したい」と思っている
ここまでご覧いただいたように、銀行は決して「難癖をつけて融資を断りたい」と思っているわけではありません。
むしろ、「この人なら大丈夫」「この事業は面白い」と感じれば、前向きに応援したいと考えてくれます。
ただし、その判断材料はあくまで“具体的な説明”と“信頼できる裏付け”によって支えられています。
自分では「大したことない」と思っている経験でも、銀行から見れば「すごいですね!」と評価されることも多々あります。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 融資担当営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。成績ばかりを追い、取引先を理解できず苦戦するが、企業の本質を知ることの重要性に気づく。以後、信頼関係を築き、資金繰りや融資支援に注力。経営難の企業に融資の基本を伝え、3ヶ月で1.5億円の資金調達を実現。この経験を原点に、中小企業の資金繰り支援を使命とし、日本の企業成長に全力を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


























