
緑ナンバー取得前でも創業融資は申請できる?運送業の許可と融資を並行して進める段取りガイド
「トラック運送業で独立したいが、緑ナンバー(一般貨物自動車運送事業の許可)はまだ取っていない。この状態で創業融資の申請はできるのだろうか」。運送業での開業を準備している方から、よくいただくご質問です。車両の購入費など先にまとまったお金が必要になるだけに、許可と融資のどちらを先に動かすべきか迷いやすいところです。
結論からいえば、許可取得前でも創業融資の相談・申請の準備を進めることは可能です。ただし、許認可が必要な業種ならではの注意点があり、許可申請と融資申請の段取りを正しく組むことが重要になります。本記事では、2026年7月執筆時点の情報をもとに、運送業の創業融資の基本と、許可と融資を並行して進める流れを解説します。
結論:許可取得前でも創業融資の準備・相談は進められる
日本政策金融公庫の創業融資は、これから事業を始める方を対象にした制度のため、開業前・許可取得前の段階から相談や申請の準備を進めること自体は可能です。
ただし、運送業のように許認可が前提となる業種では、許可が下りなければ事業を開始できません。そのため審査では、許可取得の見通しが確認されるのが一般的で、融資の実行(入金)は許可の取得状況とあわせて判断される流れになりやすい点は押さえておきましょう。「許可がなくても必ず借りられる」というものではないため、早い段階で金融機関や専門家に段取りを相談しておくと安心です。
前提の整理:緑ナンバーと黒ナンバーでは進め方が違う
ひとくちに運送業といっても、必要な手続きは事業形態で大きく異なります。
- 一般貨物自動車運送事業(緑ナンバー):普通トラックで他社の荷物を有償で運ぶ事業。運輸局の「許可」が必要で、車両台数や運行管理体制などの要件があり、審査には数か月単位の期間がかかるとされています
- 貨物軽自動車運送事業(黒ナンバー):軽貨物車で運ぶ事業。「届出」で始められるため、開業までの段取りは緑ナンバーよりシンプルです
緑ナンバーは許可までの期間が長いぶん、車両費・車庫・人件費などの資金計画と融資のタイミング調整がより重要になります。本記事では主に緑ナンバーでの開業を想定して解説します。なお、許可要件の詳細や申請手続きは個別性が高いため、運送業許可に詳しい行政書士等の専門家に確認することをおすすめします。
運送業の開業で使える創業融資の基本
創業時の資金調達の代表的な選択肢は、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。2024年3月に「新創業融資制度」が廃止され、現在の主力制度となっています。
- 融資限度額:7,200万円(うち運転資金4,800万円)
- 担保・保証人:原則として無担保・無保証人で利用可能
- 基準利率:無担保で創業期(税務申告を2期終えていない場合)に利用するとき年3.45〜5.15%(2026年6月1日現在)。創業期の方が無担保で利用する場合は、原則0.65%(雇用拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性があります
- 据置期間:元金返済の据置は最長5年以内(据置中は利息のみ)
- スケジュール:書類提出後おおむね3週間〜1か月で実行。準備期間を含めると合計約2か月が目安です
金利や条件は変わりやすいため、上記は執筆時点の情報として、申請時には日本政策金融公庫の最新情報をご確認ください。トラックの購入費は設備資金、燃料費や人件費などは運転資金として、資金使途を分けて計画するのが基本です。
許可申請と融資申請を並行して進める段取り
緑ナンバーの審査期間を踏まえると、許可と融資は「どちらかが終わってから次へ」ではなく、並行して段取りを組むのが現実的です。流れの一例を示します。
STEP1:事業計画と資金計画を固める
車両の台数・取得方法(購入かリースか)、車庫や営業所の費用、ドライバーの人件費、燃料費などを洗い出し、開業までに必要な資金と開業後の収支見通しをまとめます。ここで作る事業計画書が、融資審査の土台になります。
STEP2:自己資金を確認できる状態にする
現行制度では自己資金の額や割合について決まった要件はありませんが、自己資金の額は審査の重要な判断材料になります。面談時点で口座で確認できる形にしておきましょう。
STEP3:許可申請の準備と融資の相談を並行させる
運輸局への許可申請の準備を進めながら、公庫や専門家に融資の事前相談を行います。許可のスケジュールと融資実行のタイミングをどう合わせるかを、この段階ですり合わせておくと手戻りを防げます。
STEP4:融資の申込み・面談
創業計画書・自己資金を確認できる書類・車両などの見積書等を揃えて申し込みます。審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。
STEP5:許可取得・融資実行・事業開始
許可の取得状況を確認しながら融資が実行され、車両の取得や運輸開始の手続きへ進みます。実行のタイミングは個別の審査や状況により異なるため、金融機関との認識合わせを最後まで丁寧に行いましょう。
運送業の融資審査で見られやすいポイント
- 業界経験:ドライバーや運行管理の経験など、運送業に関わる経験は計画の説得力につながります
- 資金計画の妥当性:車両費の見積りが適正か、開業後の運転資金まで見込めているか
- 収支の現実性:荷主の確保見込みや運賃水準が、無理のない数字になっているか
とくに緑ナンバーは開業資金が大きくなりやすい業種です。必要額を積み上げた根拠資料(見積書など)を揃えておくことが、審査を進めやすくするポイントです。
よくある質問
Q. 許可が下りる前に融資金を受け取ることはできますか?
A. 許認可の進捗と融資の申込は連動しません。許可が下りるのを待つ必要はなく、準備・申請は並行して進めて構いません。融資実行の前または後に許可証の提示・確認を求められるため、その点だけ押さえておきましょう。
Q. 一度審査に落ちると、次回の審査に影響しますか?
A. 日本政策金融公庫は個人信用情報機関に加盟していますが、審査に落ちたこと自体が信用情報に記録されることはありません。一方で、公庫内には審査に落ちた記録が残ります。そのため次の審査では、落ちたことを考慮に入れた形になるため、慎重に扱われる可能性があります。
Q. 軽貨物(黒ナンバー)で始める場合も創業融資は使えますか?
A. 貨物軽自動車運送事業も事業である以上、創業融資の対象になり得ます。届出で始められるため、緑ナンバーに比べて開業までの段取りはシンプルです。車両費や当面の運転資金など、必要額の根拠を整理して申請しましょう。
まとめ|許可と融資は並行の段取りで進める
緑ナンバー取得前でも、創業融資の相談・準備を進めることは可能です。ただし、許可が下りなければ事業を開始できない業種のため、融資の実行タイミングは許可の取得状況とあわせて判断されやすく、許可申請と融資申請を並行させる段取りが鍵になります。
運送業は車両費など開業資金が大きく、事業計画書の作り込みが結果を左右しやすい業種です。許可と融資の段取りに不安がある方は、創業融資の支援実績が豊富な専門家に早めに相談しながら進めることをおすすめします。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

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中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























