
退職前と退職後で変わる創業融資の相談時期、会社員が判断する分かれ目
在職中に独立を考え始めると、創業融資の相談は退職の前に始めるべきか、辞めてからで足りるのかで迷います。この記事は、融資を申し込めるかどうかではなく、相談をいつ始めるかに絞って考え方を整理します。どちらが正解とは言いません。何が動かせて何が動かせないのか、窓口で何を確認すればよいのかを、仮の数字を使って並べます。
制度の数字や条件は執筆時点の情報です。最新の内容は日本政策金融公庫の公式情報でご確認ください。
相談と申込は別。退職の前後で変わるのは準備に使える日数
まず、相談を始めることと、融資を申し込むことは分けて考えます。退職の前後で変わるのは、申込までに準備できる日数と、退職日との距離です。相談を始める時期を決めても、申込の時期まで同時に決まるわけではありません。
融資は「申込」から「実行」までの流れで進みます。書類提出後おおむね3週間から1か月で実行され、準備を含めると合計で約2か月を見ておくと安全です。内訳は、準備に1か月、審査と実行に1か月です。この約2か月が、この記事の仮の例で使う制度側の数字です。
在職中に動けることと、退職後でないと決まらないこと
在職中でも進められること
次の項目は、退職の前後を問わず手を付けられます。
- 事業計画の下書き。売上、原価、人件費の根拠を整理しておきます
- 自己資金を、面談の時点で口座に確認できる形にしておくこと
- 創業前に自費で取得した資格や備品、テストマーケティングの費用の領収書を保管すること
- 同じ業種での勤務経験、勤務年数、役職を書き出しておくこと
- 相談の窓口に、在職中でも相談できるかを問い合わせること
審査では、同じ業種での勤務経験、自己資金、事業計画の具体性、資金使途と調達額の整合、信用情報などをもとに判断されます。このうち勤務経験と自己資金は、在職中のうちから整理しやすい項目です。自己資金の額や割合に、制度上の決まりはありません。ただし、額は審査の重要な判断材料になります。

💬 執筆者の小峰から一言
自己資金は、面談の時点で口座に確認できる形にしておきます。見られるのは金額そのものより、いつ、どのように入金されたのかという経緯を説明できるかどうかです。額や割合に制度上の決まりはありませんが、自己資金は審査の判断材料の一つになります。面談の場で通帳を見ながら経緯を話せるかが、ここでの確認点です。
退職後でないと決まらないこと
退職日と事業の開始日は、退職してみないと確定しない部分があります。また、退職後には、健康保険、年金、税金、雇用保険などの手続きが発生します。ここでは具体的な中身には触れません。お住まいの窓口や専門家に確認してください。
退職の前後を問わず、順序が決まっていること
物件や設備の契約を伴う場合は、契約の前に相談します。土地や建物の取得は設備資金にあたる支出で、創業融資の対象になります。取得を前提に検討する場合は、物件を押さえる前に申込先へ相談してください。これは退職の前後に関係なく守りたい順序です。
仮の数字で並べる、退職日と融資実行の関係
ここからは仮の例です。実際の期間は審査や準備の状況で変わるため、この通りになるとは限りません。制度側の数字は、前述の約2か月(準備1か月、審査と実行1か月)だけを使います。事業計画づくりにかかる期間は人によって違うため、仮に1か月として置きます。
| パターン | 相談の始め方 | 退職日から実行までの空白(仮の例) |
|---|---|---|
| パターン1 | 退職の数か月前に相談を始め、計画づくりと準備を在職中に進める | 申込の時期を窓口と相談して決められる。空白の長さは進め方次第 |
| パターン2 | 退職と同じ時期に相談を始め、計画はすでにできている | 準備1か月と審査・実行1か月で、退職後に約2か月の空白が出うる |
| パターン3 | 退職してから計画づくりと相談を始める | 計画づくり1か月(仮)を加えて、退職後に約3か月の空白が出うる |
表の差は、考え方の違いを見るためのものです。パターン3が悪く、パターン1が良いと決めるものではありません。退職日を自分で動かせない人や、物件の契約を急ぐ必要がない人は、見え方が変わります。

💬 執筆者の小峰から一言
申込から実行までは、書類提出後おおむね3週間から1か月です。創業計画書や自己資金を確認できる資料、見積書などの準備を含めると、合計で2か月程度を見ておきます。内訳は準備に1か月、審査と実行に1か月です。今すぐ資金が必要という状況には、時間的に合いません。
収入がない期間は、家計の備えとして家族と決める
退職後に空白の期間が出ると、家計の収入が止まります。これは融資の申込内容とは別の、家計と家族の話です。ここでは、家計で何か月分を手元に残しておくかを考えます。
次の表は、月の支出を仮に25万円、30万円、35万円としたときの単純な掛け算です。
| 月の支出(仮の例) | 2か月分 | 6か月分 | 12か月分 |
|---|---|---|---|
| 25万円 | 50万円 | 150万円 | 300万円 |
| 30万円 | 60万円 | 180万円 | 360万円 |
| 35万円 | 70万円 | 210万円 | 420万円 |
たとえば貯金が約500万円、月の支出が30万円で6か月分を残すと決めた場合、家計の備えは180万円です。計算上、事業側に回せる額は残りの320万円になります。これも仮の例です。何か月分を残すかに、決まった正解はありません。家族の人数や、事業を始める時期によって変わるため、家族と話し合って決める項目です。
判断の分かれ目。自分に当てはめて確認する
次の軸を、自分の状況に当てはめてみてください。当てはまる数でどちらかを決めるものではありません。
- 退職日を、自分の都合で動かせるか。動かせるなら、相談の結果を見てから退職日を決める余地があります
- 物件や設備の契約を伴うか。伴う場合は、契約の前に相談する順序が先に決まります
- 自己資金が、面談の時点で口座に確認できる状態か。そうでなければ、その整理から始めます
- 事業を始めたい時期から、約2か月を逆算できるか。逆算すると、相談を始めたい時期が見えます
- 家計の備えの月数を、家族と合意できているか
退職前から相談を始めることに傾く人は、退職日を動かしにくい人や、物件の契約が絡む人です。一方で、計画がすでに固まっていて、事業の開始時期にも余裕がある人は、退職後に始める選択もあります。どちらを選んでも、準備が足りないまま急いで申込むのは避けたいところです。
日本政策金融公庫は個人信用情報機関に加盟していますが、審査に落ちたこと自体が信用情報に記録されることはありません。一方で、公庫内には審査に落ちた記録が残ります。そのため次の審査では、落ちたことを考慮に入れた形になるため、慎重に扱われる可能性があります。申込を急ぐより、相談から始める理由の一つです。
家族に説明する順番
家族には、次の順で話すと整理しやすくなります。
- 先に窓口で相談を受け、実際の所要期間を聞く
- 事業計画の骨子を伝える
- 家計の備えを何か月分にするかを決める
- 退職日を決める
- 申込の時期を決める
家族に見せるのは、この記事の仮の数字ではありません。窓口で聞いた最新の情報です。仮の数字は、考え方を共有するための材料にとどめてください。
窓口で確認する項目
相談の予約をするときに、次の項目を手元に用意しておくと話が進みます。
- 在職中でも相談できるか
- 相談から申込、実行までの所要期間の最新の目安
- 申込の時点で在職中か退職後かが、手続きや進め方に関わるか
- 事業を始めたい時期と、申込の時期の関係
- 面談の時点で用意しておく資料
- 物件や設備の契約の前に、どの段階で伝えればよいか
退職後の健康保険、年金、税金、雇用保険の手続きは、それぞれの窓口か専門家に確認してください。
まとめ。今週中に手を動かす3つのこと
- 事業を始めたい時期から約2か月を逆算して、相談を始めたい時期を書き出す
- 家族と、家計の備えを何か月分にするかを話し合う
- 上の確認項目をメモして、相談の予約を入れる
退職の前に始めるか後に始めるかは、この3つが決まると見えやすくなります。
【無料相談のご案内】
融資を受けるには何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























